第8話 先祖累代ノ墓

百舌鳥は早贄をする。鳥が宗教的儀式をするのか?と現実主義の俺はその学術を軽蔑していたが、百舌鳥柄遺伝子とのつながりを考える上では理論上とても合理的なことだと思った。


早贄は収穫感謝であるし、自の狩猟能力をメスに見せつける繁殖行動でもある。

自分の強さを誇示することで影響力を強めていった百舌鳥柄が亜種白路たちと近しい関係でありながらそれ以上の立場にはなれない見えない障壁を抱えていることは客観的に見れば哀れで同情すべき点だ。

俺たちが憐れむと百舌鳥柄は攻撃的に俺たちを早贄にしようとする。しかし亜種白路が蔑むとただじっと我慢して越冬を試みる。

宗教にかぶれているのではなく、宗教によって成り上がろうとしている様をめざとく見つけたのはいったい誰だったのだろうか。


百舌鳥柄は三閉免疫の早贄を主な狩猟場としていた。不全に陥れたのもまた百舌鳥柄主体のKTCであって、スカーニーがなぜ黙認していたかという謎はいまだにあるものの、亜種白路からの蔑みを考えれば当然だと理解できる。

Sub White Loadを創設する過程で牧森麻弓は自分の父親が三閉免疫だったことを隠したいと思ったのかもしれない。百舌鳥柄のなかには亜種白路のハーフも多く、仲間内ではあだ名で呼び合っていてもその親が絡むような大切な集会にはいつも招待されない。

「親父の知り合いが多すぎるんだよ」とか「ああいう退屈なのは本当は行くべきじゃないんだ」とかいろんな言い訳を風の噂でも聞く。牧森麻弓はそんな時どう思ったのだろうか?

ZyaylaはMe-Lizalyを敬愛していた。旧右炉でありながら、亜種白路と対等に渡り合っていたし、それどころか時々は一泡吹かせるような大一番を決めることもあったからだ。

「私が父のことをパパって呼んだらスカーレットが一瞬だけどぷぷって笑ったのよ」

Zyaylaにもそんな思い出があった。少なくとも三閉免疫であれば多かれ少なかれ悔しい思い出を持っている。


「パパが見せてくれた世界はほんとうに素晴らしいものばかりだった。人種も宗教も環境も異なる多様な人々が干渉し合わず共存しているの。どうしてこんな天国みたいな場所が世界中にあるんだろうって悲しくなってしまうくらいにどの国も素晴らしかったの」

妾と噂された秘書のこともあった。だからMe-Lizalyは牧森麻弓をどこへいくにも帯同させた。

「お前に世界を見せてやる」

旅行のつもりで帯同した日々の中で麻弓は父親と同じものに魅せられていった。

「ことばだったら女の私でも男性と同等に渡り合える。パパが亜種白路と対等に渡り合っているように」


百舌鳥はスズメ目、スズメ亜目のモズ科に属している。今のところ末裔はモズ種。

三代前はスズメだったことを俺は百舌鳥を調べる中で知った。

どんな親でも末は博士か大臣かと願って慈しんで子どもを育てるが、親の出た大学以上の学力でなければ満足はできない。


白路を歩むことを負荷だというのなら、無理にその道を歩むことはなかったんじゃないか。Me-Lizalyと正宗さんは似てる。

「トンビが鷹なんか産むわけねえだろう」

正宗さんの死に際の涙を俺は知っている。きっとMe-Lizalyだって牧森麻弓に対して同じ涙を流したんじゃないだろうか。


烏鷺棋の第二シーズンに入っためぐと、Mjustice-Law家とIOSの活動を本格化する締結を公表・宣言したスカーニー。

トンビが鷹を産むことはありえない。鷹の子は鷹だと思い知らされる。






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