第19話 To belong gossip as mosquito

亜種白路からの直接リクルートルートがあることを週末、あたしはスチュワートから教えてもらった。

久しぶりに会うスチュワートは相変わらず飄々としていて、でもセオの話をすると一瞬だけどイラついた表情をした。少しだけ苦手意識が取れたことはすごく良いことだったと思う。


「ねえ、スチュワートはセオが嫌いなの?」

「ふつう。基実に帝都が嫌い?って聞いたら同じように答えると思うけど。どうして?」

「スチュワートはかなり気楽にやってるのにセオはいつも大変そうで。なんか変なのいるの、いつもデート邪魔される」

毛布の中で小さな声で話していると暑くなってきて、少しだけ毛布を出ようと思ったけれど、スチュワートはしっかりとあたしの左腕を掴んでいた。

「スチュワートと同じエリアにいるのは亜種白路からの直接リクルートで、Throen所属じゃないんだよ。直接リクルートされた彼らは今行き場を失っている。給料も未払い。俺やセオに交渉しようと蚊になっちゃったんだよ。ぶーんぶーんって」

あたしを揶揄って羽音の真似をわざと耳元で囁く。

「うるさい、そういうことやってるからあたしはスチュワートよりもセオが好きなのよ」

スチュワートの絶望した顔が可愛い。あたしがにっこり笑うとスチュワートは嬉しそうにあたしを後ろから抱いて話を続けた。

「ゴシップについては誰から教えてもらったの?」

「セオよ」

「そりゃそうか。そのゴシップにはカマキリと蚊、それからイナゴとアリがいて、」

「それは何かの隠語?」

「まあそう考えてくれたら良い。カマキリは純粋に相手を好きになったことからのジェラシー、ミーガン・ラクーンなんてこの類」

「それ、スチュワートが言う?」

「もちろん。それで、蚊はただの興味本位、イナゴは利益目的の組織の一員、アリは亜種白路の幹部候補になり得る有能な思想の持ち主。つまりはMjustice-Law家が何者であるかということを宗教的に曲解して教えてまるごと信じる人たちのこと」

「じゃあ、あの人はどこからリクルートされたの?」

「亜種白路の友達とかそういう感じじゃない?ヨハネス・エリヤ=栗生や天村暁子やミーガン・ラクーンみたいに留学していた亜種白路は多い。そういう人たちに直接リクルートされたから、俺たちよりもエリアの給与は別格なんだ」

「ふーん。でもエリアは昼の家が経営権を持っているんでしょう?じゃあ亜種白路のものじゃないじゃん」

「夜の家がどうしてこんなに長い間スパイとしてこの国で頑張ったと思ってるの?何十年もヒールを演じてきた意味をメグはもう少し理解すべきだ」

厳しいことを言う時、スチュワートの腕は少しだけ筋肉が硬くなる。あたしが傷つかないように自分で自分の手綱を引くように。

「あたし、スカーニーにお願いしてみる。そしたらセオの家も復権できるじゃない」

「ねえ、めぐ?君はどうしてセオにそんなに肩入れするの?俺たちは同じ立場なんだよ?」

スチュワートは時々こんなふうに仕事モードの声色をする。かすかにトーンが年寄りみたいにしわがれるのだ。

「同じ立場なのに事実が伝わっていない蚊たちからどんな扱いを受けているかセオに聞いてみるといいわ。少なくともあたしが見たセオは蚊に同じステータスとして理解されていなかった」


ふたつの鎖は混じり合いながら4本になっていく。ハーフのハーフはクオーター。

ハーフとハーフの掛け合わせも同じこと。

時代の流れは事実を忘れ去らせるには具合が酔いが、事実を知るには不確かなことが多くなっていく。

すべての人が知る必要がないけれど、と前置きをつけながら。





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