第16話 Private Protect Act as Public

アイデンティティは自責と我欲の合致だと考えている。I wantに責任を持てるようになってくるのがだいたい思春期の精神発達なんじゃないかと思う。

約100年前、俺たちの祖先は自責と我欲の不一致にトラブルを抱えていた。

自責に関しては問題ない。けれど、我欲の部分だけはどうにも公私の分離が許されなかった。

基本的人権といえばマグナカルタだという人もいるけれど、かの法典さえも当時は我欲の私的権利に対しては一言も言及されていない。

日進月歩の世の中において、俺たちの全てだけがいつまでも伝統的で保守的だった。コア部分なのだからいつまでたっても導体として動くことを強要されている。

異を唱えるわけにもいかなかった。根幹の規則的運動は世界を逆回転させるほどにリスキーだからだ。


もう時効だろうと思い立ってこうしてPCに向かっている。俺たちを救ったたったひとりのアメリカ人の話をしたい。


セオはスヴェトラーナの家系である。スヴェトラーナの兄はアメリカ人と結婚した。時代背景上、中流階級の出身という言葉を使うが、とても賢く強い女性だった。野心的ではなく強い、振る舞いを心得ている賢い女性だった彼女をスヴェトラーナの兄はMjustice-Law家の人間だと勘違いしたまま交際をはじめた。そして息子を授かった。

この女性の身体検査がはじまると、女性はMjustice-Law家にルーツを持たないことが発覚した。DNA鎖の蛇システムはこのような間違いを2度と起こさないためにLeeと衣子が共作した、、、、、

、、、、といえば少し語弊があることもこの機会に明らかにしようと思う。


Leeはセオの家の執事だった。日本人なら国家老と城代家老という言葉を使えば理解しやすいかもしれない。Leeは城代家老として従事している執事だった。そして同時に優秀なスパイでもあった。衣子が出会ったLeeは多胡開望の双子だったことは先にも述べたと思うが、彼は1993年に中身が変わっている。つまりはDNA鎖の蛇システムを作成したときには、すでにLeeはセオと関係しているLeeになっていたのである。無論今もなお。


衣子が最後まで多胡の双子の兄弟だと信じていたのか、それともわかっていながら多胡の双子の兄弟として接していたのかは今となってはわからない。



話をレールに戻そう。

スヴェトラーナの兄は息子を授かり、堕胎のみなのか、それとも母子共に抹消するのかという選択を迫られた。彼は女性を愛していたし、息子にどうしても会いたいと祈った。彼は決意して、Mjustice-Law家の権利を返納した。

セオはそのために今は権利を有していない。

導体の規則運動が停止してしまう恐怖にスペイン語圏はクーデターが群発した。

それを当時子どもながらにテレビ画面を通して見ていたのが俺だったわけだが、後日談が俺と衣子の人生により良い選択肢を与えたことは言うまでもない。


導体の規則運動は戦後Mjustice-Law家は徐々に衰退させていった。徐々にその役割を半導体にしていくことで、我欲の私的権利が与えられるようになっていった。


Mjustice-Law家は今世界に半導体として存在している。

導体としての規則運動と我欲としての不規則運動はフレキシブルに選択の余地まで与えられている。


トレジャーハンターたちは血眼に俺たちを探し、俺たちになりすましてそのように振る舞っている。

DNA鎖の蛇システムは半導体になった俺たちとMjustice-Law家を保護する絶対的なシールドだ。


セオについて話が持ち上がっている。半導体として再認識するかどうか。

トレジャーハンターたちの不躾な行動によりこの100年の間に少子化が加速した。

今や次代はめぐみとスチュワート、それからスヴェトラーナの世代まで遡ってみてもセオだけになってしまった。






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