第4話 見つけた
システムの変更は幾度も行われた。多胡さんの中にはもう吐き出すものは何も残っていないはずだ。
DNA鎖の蛇システムの設計図は多胡の腹にある。
そんな予言めいた話を信じきった亜種白路の幹部は多胡を囲うためにさまざまな装飾を施した。社長、官僚、著名人、その中でも最も煌びやかな衣装は衣子の夫という立場だったかもしれない。
正良さんはそれをどうして黙認していたのか?というよりも、衣子さんが亡くなったことを正良さんはどうして淡々と受け止め、息子に卓なんて名前をつけたのか?
基実はこの問題については口を閉ざすばかりで埒が明かない。
Leeが多胡さんだったとしても、Leeにシステムの設計図を教えてもらえるわけがないことはよくわかっていた。
エルザ・ヨウはLeeを遠ざけていたし、多胡さんと一緒にいるところなんて見たこともなかったから、何かあることだけは感じられていた。
ーー恵は最近蛇システムに囚われている。彼女はあのままにしておけばいつか蛇に腹を喰われて死んでしまう。
スカーニーの機嫌が日毎に悪くなっていった。
椿くんと玲くんが亜種白路の人間であることはよく知られた話だった。だから多胡さんにとってきっと弟のような存在なんだと俺は思っていた。
6月15日、午前4時緊急速報が流れた。
「多胡開望、何者かに刺され心肺停止、犯人は逃走中」
ひんやりした水の中で蛇がうごめいてい流。多胡の腹から這い出たその蛇がなぜ水をひんやりしていると感じたのか、、、俺は気持ち悪くなった。
基実はその日も夜勤だった。恵が蛇システムに囚われていれば基実はただその恵の指示に従い続ける。マゾヒストを自認する恵を疑いたくなる日々が続いていた。
6月18日、午前3時。基実が珍しくうちを訪ねてきた。恵の家ではなく、俺専用の官邸に訪ねてきたのは俺が官邸を与えられて以来はじめてのことだった。
「帝都、蛇見た?」
唐突な言い方に俺は15日の温度を感じた。
「俺は見てない、感じた。ひんやりしたんだ」
「どこにいた?」
「水の中。基実は?」
「水の中から光を見てた」
互いに察した俺たちは明け方5時に恵の官邸を訪ねた。30を過ぎた男が怖くて手をつないでようやく恵の寝室のドアまでたどり着いたことを世の中は笑うだろう。でもこれは俺たちしかわからない恐怖だ。
「めぐみさん?」
一度寝返りをうって俺たちを見つけると少し微笑んで両手を伸ばした。
ほんの少し見えた血溜まりに俺たちは興奮と恐怖と忍耐を強要された。
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