第2話 リーク
とにかく20歳をすぎないといけない。20歳を過ぎれば男女共に成長は一段落する。成長過程では何も正しい情報が得られない。わかっている。けれど、私の人生が持ち堪えられるかどうか。私とLeeはその勝負のために毎晩会議を重ねた。
私の体の賞味期限の改善も含めて正良さんと過ごす時間は次第に減っていった。
帰宅後は疲れ果てて寝てしまう。起きた時にはすでに正良さんは仕事に行ってしまっている。
私たちは夫婦ではなく同志として暮らしていた、Leeはそのことについてずっと私を責めていた。
「衣子がよくても俺は良くない。俺は衣子の夫じゃないし、恋人も韓国に残して来ている。誤解されると俺が迷惑なんだ」
「そんなことわかってるわよ!誰が見たってわかるじゃないの!なんであえてそんなこと言われなきゃいけないのよ!!」
卓が20歳を迎えるのはあと10年後。それまでに私の体の賞味期限が切れないとも限らない。
ーーいつ死んでもおかしくない。
契約書の文言が私自身を脅迫し続けていた。
正良さんよりも、恵よりも、そして卓よりも私は私の賞味期限がいつ来るのかを恐れていた。
成人式後の1度目の血液検査を死恋DNAを調べる通過儀礼としたのは卓が生まれた翌年だった。二人の間にふたつの0がある。いい年号だとLeeと喜びあった。
ああ、、そうだ、、正良さんとはお祝いをしていない。
何かが襲ってくると私は裸足で外に飛び出してはLeeに電話を繰り返すようになっていた。
「純血の家庭教師がお前を殺しに行くだろう」
いつ死んでもおかしくないと明記された契約書の裏側にはこのような注釈が添えられていた。亜種白路は多胡開望と私を婚約させることにより、元老院の秘書職に就任した。
死恋DNA検査システムはプレリリースされる前に誰かにリークされた。誰が情報を盗んだのかはわからない。
犯人が明確にならない限り私はLeeを信じるしかなかった。彼しか私は信じられなくなっていた。
正良さんごめんなさい。娘と息子のためだったの。本当に。それだけは信じてほしい。
「このシステムは公的なものではない。DNA鎖の蛇システムは我々との共同開発ということで内密にしておきますよ。DNAはふたつの鎖から成り立っている。わかりやすくていいじゃないですか」
2011年、正良さんはすべてが終わった後に全てを壊そうとした。
私がこの世から先に地球へと向かうため、肉体を離れたその直後だった。
正良さん、私を信じてくれてありがとう。寂しい思いをさせてごめんなさい。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。