第22話 フィアンセ
セオの話では2001年にはすでに結婚の話が出ていたらしかった。
「そしたら、それはできませんって断られたんだ。でも俺は諦められなくてすぐに直接スカーニーに会いにいった。いい人だった」
「ああ、そうですか、、、あたしは15歳で人質村にいて膵臓炎で死にかけてましたけどね、、、」
15歳の春、あたしは急性膵炎を突如発症した。あたしはもちろんお酒は飲まないし、肝脂肪のような生活習慣病を患うような年齢でもなかったから、どう考えても急性膵炎になるはずがなかったのだ。
「あの頃から貧困ビジネスのパイオニアは存在していたから」
冷静な基実くんがPCかれ目を離さずに言った。そういえばあの頃から基実くんはあたしを好きでいてくれていたんだなあと思い出す。当時のあたしは帝都が好きで帝都以外見えなくて、すべての中心が帝都だったから、基実くんのような素敵な男の子があたしを知っていたなんて想像もしていなかった。
クラスも違ったからあたしの存在なんて知らないと思っていたくらいだ。
「あたしは殺されかけたってこと?」
「実際に俺が会ったスカーニーは快く引き受けてくれた。娘が年頃になったら一度会ってあげてくださいって。君が倒れたのはいつ?」
「3月だったと思う」
「3月。それから2ヶ月入院して、めぐみさん修学旅行行けなかったじゃん」
亜露村での日々が懐かしい。烏鷺棋の処分により今はもう亜露村の生き残りはあたしと帝都と基実くんだけになってしまった。
「ああ、だとしたら、その通りだ。君は殺されかけたんだろうな」
「勘弁してほしいよ、もうほんと、、、」
15歳で暗殺未遂にあっていたと考えるだけで足がすくむ。あたしはその頃何も知らなかったし、人質村で養父母に大切に育ててもらっていたのだから。もちろん養父母が養父母だなんて思ってもいない。
亜種白路たちは自分達の血をあたしに入れたかった。つまりはMjustice-Law家の血がこれ以上濃くなり、自分達が入る隙を奪われることを回避したかったらしいのだ。
「君を待っていたのは帝都や基実だけじゃないんだよ」
重い話をさらっと素敵な笑顔であたしに突きつけてくる。セオはそういうところもあたしと似ている。
屈折22年、基実くんや帝都と待機年月は同等だ。
「ちなみに群青は君が洗礼を受けた年からが公式スタートだけれど、君の話は俺から聞いているからね。つまりはみんな同じくらい君を見てきているってことだよ」
セオと群青は良い。同じ痛みを持っている。同じ痛みはあたしたちだけでしか分け合うことができない。今のところ、あたしが唯一安全を確保できて自分に戻れる場所、それが群青とセオの隣なのかもしれない。
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