第21話 特異的遺伝子配列の秘密

本家と分家という考え方がある。

腐っても鯛という日本のことわざと似ていると言えば、少し語弊があるかもしれないが、

Libelawの家とCosavaywの家は分家であり、腐っていたとしてもJurywknowの家の指示は絶対だった。


Mjustice-Law家が創設されたのは19世紀だが、話はもう少しだけ遡る。

エドワードとアレキサンダー、マリコとスヴェトラーナは年に一度開催される「会議」でのみ接触を許されていた。それぞれの統治権を侵害しないために、それぞれの父親なり祖父たちが取り決めた条約であるから仕方のないことだったが、とりわけ仲が良かった4人の若者は年に一回しか会えないことを残念がっていた。

しかしある年の会議のInvitation Cardに「会議後の接触もスヴェトラーナとアレキサンダーだけは許可します」と書かれていた。


当日の会議で内容が公表されることはないことに疑問を持ったエドワードはアレキサンダーの隣の席に運良く座れたために、会議中に話をすることができた。

「どういうこと?なぜ君とスヴェトラーナだけは会えるの?」

「革命を起こしてもらえることになった。俺たちは王として死ねる。人間になれるんだ」

少し遅れてきたスヴェトラーナがマリコの隣に座った。アレキサンダーとエドワードよりも3段後ろの席だった。

「マリコ、よく聞いて。私とアレキサンダーは計画をたてた。あなたとエドワードといつでも会えるように、父に頼んだんだ。君の力が必要なんだ」


会議はマリコの家が主催することが通例だった。本家という役割は永遠に変わることがない、生まれながらの奴隷という表現が相応しい。世界一の権力者の人生は世界一窮屈であり、世界一自分本位に生きることができない。マリコの兄弟は昨年、ついに全滅した。マリコは両肩に重責がのしかかっていくことを感じていたが、その重荷を取り去ってくれる人間がこの地上にいないこともよく理解していた。


Mjustice-Law家は複合存を有して生まれる。DNA鎖の蛇システムはめぐみを見つけるための技術であったが思わぬ副産物をも発生させた。

「実際エドワードとマリコの子がハインリッヒだったわけではない。アレキサンダーとスヴェトラーナの娘がグレースだったわけではない。複合存とはMjustice-Law家独特の感覚でありDNA配列だ。他に類を見ないからこそMjustice-Law家として確認が取れる。人種的DNAは彼らの中には存在しない。ではいったい人種差別とは何だったのか?」


人種差別とは亜種白路のような一般支配階級者同士がMjustice-Law家を見つけるために焚き付けたゴシップである。一般市民階級はMjustice-Law家には絶対に到達できない。その仕組みをうまく利用していたのだ。


多くの人種差別者を見下ろして、Mjustice-Law家は嘆き悲しむ。悲しみが最も深いのはいつでもJurywknow家だということをLibelaw家とCosavayw家だけは知っていた。複合存の彼らは兄弟であり夫婦であり恋人であり家族だ。人種的DNAが存在しない配列に由来するように。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る