第13話 客観的構成要件要素の充足

Mjustice-Law家の当主はさまざまな存在に喩えられる。

「影武者というとなんだかねえ、、、」


百姓一揆に殿御自ら御出陣なさるなんて古今東西どこの歴史を見てもありえない。


この表現が一番しっくりくるかもしれない。

完全なるトップダウンという意味が強いが、それともまた微妙に異なる。

Mjustice-Law家の当主の気持ちを代弁できる者がそれぞれの役割を担うことは法律に準じることと同じだと考えればこれもまた理解しやすい例えかもしれない。


象徴とか影武者とか抽象的な言葉で表現するよりも、具体的な役職で表現する方が的確だが、その的確な表現をすることにより組織犯罪を産み出してしまう可能性がある。


なんともややこしい存在なのがMjustice-Law家だ。


次代のめぐみはさらにややこしい存在である。

生まれたばかりの彼女はすぐに人質にとられてしまった。亜露村において彼女が何者なのかは村人やクラスメイトたちは当時誰も何も知らなかった。もちろんめぐみ自身も。

めぐみは生来争いを嫌う。面倒だと思うのだ。

恋愛のなんやかんやは最も面倒であるから白旗をあげて退陣表明してまで不参加を試みるし、友達同士のグループ形成にも一定の距離を置く。それが災いして亜露村ではいじめやヘイトクライムの対象になっていた。

特に帝都と基実が絡んでいることに当時のめぐみは鈍感すぎて気づいていなかったことも同級生の神経を逆撫でしていたらしい。

自信になるような自覚がなぜか欠如している女性だからさらにややこしい存在だとも言える。

スカーニーが迎えにきて自分が何者であるかを自覚してからも「その病」は再燃を定期的に、時に不定期に繰り返し立場を見誤る。


基実と帝都はそんなめぐみの頓服薬であり特効薬だった。

ふたりはめぐみについてこう語る。

「お嬢さんではないし、一兵卒よりもよほど動く。だから士官クラス、俺たちみたいなフィアンセ候補者に対しては誰よりも厳しく当たり散らす」

「そう!当たり散らす!!お前さすがだな。サンドバックみたいなものですよ」



何者であるかの自覚と不安を行ったり来たりしている。自分の考えを主張できるようになったのは何者かである自覚が少しだけ芽生えたから。もともとは面倒を嫌うから主張するほど労力を使おうとは考えない。そういう意味では帝都に似ているし、そういう意味では基実と行動パターンは同じだった。


「人のためにしか生きられないから人が絡む面倒ごとには積極的に飛び込むよね」

「そう。自分のために飛び込むことってあったっけ?」

「たぶん一度もない」

利他的だと評価されるとめぐみは下を向く。自分を大切にしなさいと養母に泣かれた時と同じ心の仕組みだ。亜露村の遺伝子配列は百舌鳥柄や亜種白路の正当配列である。


それぞれの立場を自覚しない者に対しての叱責はめぐみ自身が自分が何者であるかという役割に徹しての言動である。


ややこしい彼女の心の仕組みを亜種白路と亜露村、それから百舌鳥柄やKTC系の遺伝子配列では理解できないことが検証結果から明らかになった。DNA鎖の蛇システムはここでも役に立った。


解雇理由は生物学の観点から、遺伝子分野レベルの側面からも立証された。8月25日のことだった。








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