第12話 Reborn=Reform
8月5日にスカーニーをはじめ翠蘭、アーサー、ヴァージニア、ヴィクトー、ジョセフ、帝都、基実、恵、それからバロウにそれぞれの叙勲が行われたわけだが、それぞれの冠に対するシンボルがまだ未確定だった。9月まで残り5日、シンボルの差配者でもある元老院はまだかまだかと指示を待っている。
特に恵は初めての経験だからか、オーダーが遅い。元老院はアメリカのビル、フランスのシャルル、メキシコのジョン、南アフリカのアマンダ、イスラエルのアレックスに、時空旅人から復活を果たしたイギリスのエリザベス、そして監査役にはスカーニーの代務者として翠蘭が就いている。
8月15日の概要決定時には日本に定住している翠蘭やスカーニー、帝都、基実、恵はヴェールに包む意味でもシンボルを白人と黒人のみに依頼しようということになっていたのだが、なににせよ中心である恵が動かなければなにも動かない。
とはいえ、ビルは恵の忙しさを常に見ているから催促することも遠慮していたし、アマンダは祖国の女性の事件があるから恵との接触を遠慮していたし、エリザベスの復活の奇跡に立ち会っていたアレックスとジョンとシャルルはすっかり忘れていたというのが事実でもあった。
翠蘭は翠蘭で、「蛇の脱皮」を待たなければ自分が動くべきではないと考えていたし、それをスカーニーもよくわかっていたから、まずは蛇の脱皮に注力することにしていた、というのが日本に定住している面々の言い分だった。
BRONZE-FROzenが再編された直後の8月23日ごろ、中国の劉志漢がある東洋医学院に電話を入れた。
「ちょっと聞いてみてくれないかな」
女性は突然のことで慌てた。亜種白路かもしくは百舌鳥柄かと疑いつつ、女性にはイエスという他に選択肢は与えられていない。日本で暮らすというのはそういうことだと女性は経験から理解していた。
ほどなくして恵がやってきた。噂に聞くような女性ではないことから、東洋医学院の博士たちは電話自体が亜種白路からのものではないだろうかと半分以上確信したほどだった。
同時刻、百舌鳥柄の男性が東洋医学院を訪れたことから、電話の主が劉志漢であることを信じられた。
18:00
医学院に再度、劉志漢から電話がきて、惠のことを説明した。そして女性は躊躇いながら聞いた、「劉志漢、あなたは誰と共にここに電話をしているんですか?」
自分が殺されてもこの電話は録音してある。命懸けのことだった。
「ビルとシャルル、それからイワンだ。ありがとう、またお願いすると思う、よろしく」
女性は嬉しさのあまりその場で泣き崩れた。
BRONZE-FROzenのメンバーは中国の劉志漢、ロシアのイワン、ポルトガルのロレンツォ、イランのラムジ、インドのダミニ、そしてキューバ生まれブラジル国籍のジゼルだ。
「イワン、ビルに恵さんのシンボルのオーダーの様子がわかったことを伝えて欲しいんだけど。君から伝えたら、きっとビルは喜ぶ」
イワンが察して了解する。
地球がまるくなっていく。ボーダーラインを表向きに内側の掃除が進んでいく。
スカーニーはその報告のたびに顔が綻んでいく。
翠蘭はスカーニーの表情を喜び、恵はその翠蘭の表情に夫婦というものを学ぶ。
蛇の脱皮は完了した。
蛇は最後にこう言った
「めぐちゃん、お母さんがあなたに魔法をかけた意味わかった?亜種白路への恨みはお父さん以上にお母さんの方が強いってこと」
黒沼衣子は自分の体と共に亜種白路、KTC、百舌鳥柄を世界の裁きの場に引き摺り出したのだ。
私たちは黒沼衣子個人に対して敬意を表さねばならない。
組織でも家族でもなく、スカーニーや恵と共にではなく、黒沼衣子個人に対して。
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