第4話 Four Close Immunity

群青はいつも電動車椅子でやってくる。それが不自由でいやで仕方ないとあたしにいつ愚痴を言った。

「かわいそうに見えることはとても便利だ。けれど体の自由を奪われることの方が不便だ。そしてその不自由さを憐れまれることが何よりも不自由である」

群青に嘘はつけない。自分の感情に嘘をつくと彼はすぐに見破る。

「めぐちゃん、嘘はいけない。私に気を遣って嘘を言うと私のためにもならないし君のためにもならない。なんでも正直であるべきだよ。良いことも悪いことも。真心をもって話せば伝わらないことはない。そうやって信頼することはとても勇気がいることだけれど、それをしなければずっと君は子どものままで居続けることになる。それはとても不自由なことだと自由を獲得した時に気づくんだ。私たち講師は自由を知る先人として君に授業をしている」

群青の話はいちいち長い。論理的だから聞いているだけで理解するのは困難だ。

「ねえ、文章化してもらえないかしら?あなたの話は込み入っていて時々わからなくなるの」

群青は申し訳ないと笑った。彼はあたしが正直に伝えると合格をくれる。先生のくせがわかればテストの対策もたてやすい。


「さあ、今日は君が作った新しい免疫システムについて聞かせてくれないか?」

あたしは6月末に群青のテストに合格して2学に進学することができた。2学に進学すると自分でシステムを作ってそれを校閲してもらえる。時空旅人の科目がまさか一番早く2学に進めるとは思ってもいなかったからことの他嬉しかった。

「Four close Immunity、日本語で四閉免疫。亜種白路と百舌鳥柄とKTCの経済特区撤廃を目的としている。すでに3つの閉鎖免疫が確立されているけれど、世界中の合同体の閉鎖免疫を確立する必要を感じて四閉免疫とした」

「名前は英語にするの?それとも日本語」

「わかんない。あたしはそれぞれの国がそれぞれのやりたいようにやってほしくて経済特区の撤廃を決定したから、英語にするか日本語にするかは悩み中」

群青は考え続けて思考が偏らないように電動車椅子を少し動かして右回りをした。

「右回り?」

「時計回り」

「今度は左回り?」

「違う、反時計回り」

「いっしょじゃない!」

あたしが笑うと群青も笑った。

「伝わればいっか!」

「そうだね」

群青はあたしの提案書にサインをしてくれた。

「そうそう、ロイドゼラが喜ぶと思うから、アマンダには必ずロイドゼラを同席させるように伝えておきなさい」

「、、、、」

「なに?」

「あたし、最近ロイドゼラに似てきたって言われるの」

「それは私から彼女に伝えておくよ」

群青は朝焼けと共に時空旅人に戻っていく。

「まるで夜勤みたい」

群青やエリザベスといった時空旅人を見送ったころに基実くんと帝都が帰宅する。

最近は夜勤ばかりで嫌になる。

でも仕方ない、あと数ヶ月あたしも頑張らないと。


7月1日、Mjustice-Law家に新しい規則を付け加えた。あたしが当代になってはじめての作業だった。


「階級反転。シンプルにB.C(Before Christ)とA.D(Anno Domini)。B.Cに対する四閉免疫の活動開始と経済特区の撤廃を」



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