第3話 解放の鍵
XiaoがMjustice-Law家の創設時に作った元老院の取り決めの冒頭文に祖母・鞠子と母・グレースについてこう書いている。
「エンペラーの祖母、鞠子は土だった。この土がなければ我が家の繁栄は約束されなかったであろう。また母・グレースがいなければこの地球は私の命を奪っていただろう」
ロマノフ王朝と英国王室とルイ王朝と天皇家と。
エンペラーの冠はロマノフと天皇家に、キングの冠は英国王室とルイ王朝に。
Mjustice-Law家の創設以前より各国の王室には格式の古さから序列が与えられていた。古いほどに格式は高くなり、ステータスはイコール信用の高さを意味していた。ステータスは信用であり、決して潤沢な資産を意味していたわけではない、19世紀以前までは。いや、厳密に言えばMjustice-Law家が創設されるまでは。
Senested-Xiaoの父方の祖母はエンペラーの冠を持つ鞠子、祖父はキングの冠を持つエドワードだった。母方の祖母はエンペラーの冠を持つスヴェトラーナで祖父はキングの冠を持つアレキサンダーだった。
Xiaoが記した元老院の取り決めは序文と3つの書簡、称号の継承原則、それから4つの立法と黙示録の10この成文法から成り立っている。
このうち序文にはスヴェトラーナとアレキサンダー、エドワードそして鞠子が何者であったかが記されている。冒頭文の続きは鞠子の配偶者であるエドワードについて簡潔に書かれ、その後スヴェトラーナとアレキサンダーについて言及されている。
「エドワードは水であった。スヴェトラーナがアレキサンダーを選んだ理由は彼女が風でアレキサンダーが火であったからであろう。無論鞠子が土であるから鞠子はアレキサンダーではなくエドワードを選んだことに納得がいく」
Xiaoの両親についてはより詳しく書かれていた。
「父・ハインリッヒは鞠子とエドワードの間に生まれた。水と土が分かれて我々は海を見つけた。母・グレースはスヴェトラーナとアレキサンダーの間に生まれた。火と風が分かれてそこに大地を見出したのだ。海と大地の間に生まれた私に人々は空を見出すことを期待していたらしい。ただし女であれば。男であればその規則性が壊れてしまうから世界中は私が女で生まれることのみを祈り続けていたそうだ。しかし私は残念ながら男だった」
数行の悲観した両親のやり取りが記載されている。読むに堪えない汚い言葉はXiaoが成長した後もどこか神経過敏になった理由ではないかと推察している。
「私が生まれてから9日目、グリニッジに戸籍登録に向かう母・グレースは自らが大地であったことを思い出したという。この大地に繋がれる奴隷の私を解放してくれるのは同性の娘ではなく息子であると気づいた母はすぐさま家に帰って父・ハインリッヒに私の出自について説明をした。私が生まれて10日目に戸籍登録された理由はここにあるらしかった。祖父母が作ったこの地球は、孫の私の代で責務を終えたということだったらしい」
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