森の本屋と、海の本屋

編端みどり

私は海! 私は森!

あなたは、森と海どちらが好きですか?


たまに聞かれる事のある質問は、キャンプが良いか海水浴が良いかを問われる事が多い。


しかし、今回は違う意味に使われている。

本好きな女子高生二名は、放課後過ごす場所で揉めていた。


「海の本屋さんが良いよ! お魚が綺麗なんだから!」


「絶対森だよ! ツリーハウスのハンモックで本を読む至福の時間を知らないの⁈」


海の本屋と、森の本屋。


海中に造られた美しい本屋と、木の洞の中にある美しい本屋。

この町は、本が好きな人多い。そのため本屋の需要も高く、多くのコンセプト本屋が作られた。


購入した本や、試し読みのできる本をゆっくりと読めるスペースが用意してあるのだ。

談笑できるところや、静かにしないといけないところ、子連れや赤ん坊連れでも歓迎するところ……。飲食が可能なところもある。町の人々はお気に入りの本屋を見つけ、互いに教えあうことも多い。


その中でも二大人気を誇るのが、森の本屋と海の本屋だ。

経営者は兄弟で、海の本屋の経営者が兄、森の本屋の経営者が弟だ。


互いに商品を共有しているので品ぞろえは同じ。過ごしやすさを比較するしかない。


「だって、海の本屋さんはすぐ近くにサメが来るじゃん! 怖いよ!」


「森だって熊が来るでしょ! 怖いよ!」


自然の中に作られた本屋は、自然界の厳しさを体感する場所でもある。

海の本屋のすぐそばにサメが来た事もある。森の本屋に、熊が現れた事もある。


「「大丈夫だよ! 店主さんがすぐに助けてくれるもの!」」


だけど、どちらの本屋も安全だ。

本屋までの道は整備されており、野生動物か近寄らないように様々な対策が取られている。


野生動物が近寄ることもあるが、対処方法を分かっている店員が穏便に追い返している。

だから人々は安心して本屋に足を運ぶ。


「じゃあ、今日は海の本屋さんね!」


「明日は森の本屋さんに行こうよ!」


この町は、多くの本屋がひしめきあっている。

お気に入りの本を手に取って、至福の時間を過ごしてみてはいかがだろうか。

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