大文字伝子が行く111
クライングフリーマン
大文字伝子が行く111
======== この物語はあくまでもフィクションです =========
============== 主な登場人物 ================
大文字伝子・・・主人公。翻訳家。DDリーダー。EITOではアンバサダーまたは行動隊長と呼ばれている。。
大文字学・・・伝子の、大学翻訳部の3年後輩。伝子の婿養子。小説家。EITOのアナザー・インテリジェンスと呼ばれている。
斉藤理事官・・・EITO創設者で、司令官。
一ノ瀬(橘)なぎさ一等陸佐・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。
久保田(渡辺)あつこ警視・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。
愛宕(白藤)みちる警部補・・・ある事件をきっかけにEITOに参加。伝子を「おねえさま」と呼んでいる。
草薙あきら・・・警察庁情報課からのEITO出向。民間登用。ホワイトハッカー。
渡伸也一曹・・・陸自からのEITO出向。
青山たかし警部補・・・元丸髷署生活安全課所属。退職した後、EITO採用。
増田はるか3等海尉・・・海自からのEITO出向。
金森和子1等空曹・・・空自からのEITO出向。
早乙女愛警部補・・・警視庁白バイ隊からのEITO出向。
大町恵美子1等陸曹・・・陸自からのEITO出向。
田坂ちえみ1等陸曹・・・陸自からのEITO出向。
馬越友理奈2等空曹・・・空自からのEITO出向。
安藤詩3等海曹・・・海自からのEITO出向。
浜田なお3等空曹・・・空自からのEITO出向。
日向さやか1等陸佐・・・陸自からのEITO出向。
飯星満里奈・・・元陸自看護官。
稲森花純1等海曹・・・海自からの出向。
新町あかり巡査・・・みちるの後輩。丸髷署からのEITO出向。
結城たまき警部・・・警視庁捜査一課からのEITO出向。
物部一朗太・・・伝子の大学翻訳部同輩。当時、副部長。
物部(逢坂)栞・・・一朗太の妻。伝子と同輩。
南原龍之介・・・伝子の高校のコーラス部の後輩。高校の国語教師。
愛宕寛治・・・伝子の中学の書道部の後輩。丸髷警察署の生活安全課刑事。階級は巡査。後に警部補。後に警部。妻はEITO出向の、みちる。
南原蘭・・・南原の妹。
南原(大田原)文子・・・南原の押しかけ婚約者だったが、結婚。
福本英二・・・伝子の大学の翻訳部の後輩。高遠学と同学年。大学は中退して演劇の道に進む。
福本祥子・・・福本が「かつていた」劇団の仲間で、福本の妻。
服部源一郎・・・南原と同様、伝子の高校のコーラス部後輩。
中山ひかる・・・愛宕の元お隣さん。受験勉強の為、一人暮らしをしている。母親は宝石店を営んでいる。
夏目房之助警視正・・・市場リサーチの会社を経営。EITOの準隊員として参加している。
==EITOとは、Emergency Information Against Terrorism Organizationを指す==
午前11時。伝子のマンション。
EITO用のPCが起動している。
「まさか、新しい枝の名前だけでなく、木の名前まで教えてくれるとはな。」と、理事官は言った。
「ダークレインボーということは幹が7つという意味かも知れませんね。」と、高遠が言った。
「そして、4番目の枝が闇頭巾か。変な名前だな。」と、伝子が言った。
「とにかく、本部の修復には時間がかかる。不便だろうが、秘密基地を拠点にしてくれ。新町はどうしてる?」「秘密基地で、彼女なりに懸命に教えています。あ、そうだ。理事官。早乙女さんは?」「辞めると言って聞かない。久保田君も困ってね。本人の希望もあって、当面交番勤務だ。田坂の例もある。気長に待とう。3人の子持ちで危険な任務に不安があっても不思議では無い。時間が解決するさ。」
「警視が自宅を開放してくれて、トレーニングに行く隊員も多いそうです。」と、高遠は、二人に割り込んで言った。
「了解した。今日はこのくらいにしておこう。」PCのディスプレイの画面は消えた。
チャイムが鳴り、高遠が出ると、藤井が入って来た。「高遠さん。大文字さん。おいなりさん、食べる?」
「いつも済みません。この間のエプロン、どうでした?みちるの見立てだから、派手だけど。」
「ばっち、グーよ。」「バッチ、グーですか。」
3人は笑った。
午後3時。
伝子は翻訳の原稿を、高遠は小説の原稿を書いていた。
あつこから伝子のスマホに電話があった。
「おねえさま。弓道場も作ったわ。田坂さんと安藤さんが練習出来るように。」「そうか。それは頼もしいな。」「どこかで、ホバーバイクの練習出来ないかしら?」「それは、男子の仕事だろ?」「今はね。理事官が量産したいって言ってたじゃない。我々も使えるようにしたいのよ。」あつこの隣にいた、なぎさが言った。
「理事官に言っとくよ。早乙女さんが、辞めたそうだ。正確には交番勤務だから、警察からの出向を止めるんだ。」と、伝子が言うと、「まだ、あのこと気にしていたのね。残念だわ。」と、あつこが言った。
午後3時半。また、伝子のスマホが鳴った。
出てみると、依田だった。
「先輩。高遠。よく眠れましたか?」伝子はスピーカーをオンにした。
「急に運転手頼んで悪かったな、ヨーダ。」と、伝子は言った。
「慣れてますよ。しかし、高遠。不思議なんだが、急襲してくるだろう拠点をどうやって割り出したんだ?」
「割り出してないよ。ヨーダ達には感謝している。敵も焦っていたが、こちらは、もっと焦っていた。最終決戦の前にダメージを与えるだろうと思っていた。早朝仕掛けてくるだろうとは思ったが、場所が分からない。そこで、拠点を設定した。テレビ局、国会議事堂、防衛省、東京駅、東京スカイツリー、港、空港。東京駅以外の大きな駅の渋谷、新宿、池袋、品川、上野。みんな外れたよ。東京タワーもね。ああ。レインボーブリッジも候補だった。約2名体制で配置して、足りない分は、警察や陸自、中津興信所や高峰さんの警備会社まで頼んだ。うまく行ったのはラッキーだったが、外れも多かった。ヨーダ達の担当の場所には敵は現れなかった。最終決戦が富士山なんて想定外だよ。」と、高遠は説明した。
「へえ。そうだったんだ。」「後で池上先生に教えて貰ったが、テラーサンタのガンはかなり進んでいたらしい。で、義理の母親も、いつ迄面倒見られるか分からないから、焦っていたんだ。伝子さんに対面した時、覚悟を決めたらしい。吹き矢が刺さらなくても彼は長生き出来ない状態だった。」
「当面は、襲って来ないかな?」「ああ。当面はな。」「じゃあな。」
電話は切れた。
すると、また電話がかかってきた。物部だった。伝子はスピーカーをオンにした。
「お疲れ。よく眠れたか、大文字、高遠。」
「ああ。帰宅してから、たっぷり『子作り』したよ。」「そんな冗談言うようになったか。お腹の子供は順調なのか?」「まだ、膨れてないぞ。そう言えば、祥子は今月末が予定日だったな。栞はどうなんだ?」「まだ、兆候はないよ。じゃあな。」
また電話がかかってきた。「千客万来だな。」と言って、伝子はスピーカーをオンにした。
「大文字くぅん。ラスボス、やっつけたの?疲れた時はレモンティーよ。」「ありがとうございます。もうすぐ原稿出来ますから、送っておきますよ。」「それ聞いて安心したわ。敵の次の幹部から連絡は?」「まだ。矢継ぎ早じゃあ、本当に体がもたないですよ。」
「・・・じゃあね。」電話は切れた。「何なんだ、今の『間』は。」「さあね。」
また、電話がかかってきた。伝子はため息をつきながら、スピーカーをオンにした。
「大文字さん、大変だよ。次の敵がIntergramで、予告してきたよ。今、送るね。」
ひかるだった。
電話は切れた。伝子はスマホのメールを見た。URLをクリックすると、リンク画面が現れた。
《やあ、初めまして。闇頭巾ちゃんだよ。EITOの諸君。3日猶予をあげるよ。頑張ってー。》
「3日?今日は3月1日だから、3月4日まで、ってことか?」「違うよ、伝子。今日は3月2日。3月5日までのイベントで、3月5日に何かやらかすってことだね。シンプルに考えると。」
「3月5日。イベントなんてあるかなあ。」
「これかなあ。そんなに大きいとは言えないが、『せたがや梅祭り』なら3月5日までだ。人が大勢集まる。MAITOって、予約出来るんだっけ?」
3月5日。世田谷区立羽根木公園。午前10時。
梅は満開に咲いていた。福本、服部夫妻、物部夫妻、南原夫妻、高峰は見物客に交じって、異常がないかチェックしていた。
「副部長。あれを。」と、福本が指さす方に、何故か『ファイヤーダンス』の準備をしている集団がいた。よく見ると、ファイヤーダンスでもなさそうだ。忍者の格好をしている。
物部に合図されて、高峰が近づいた。「あのう。警備員の者ですが、このアトラクションの許可は取ってありますか?」物部は長波ホイッスルを吹いた。
長波ホイッスルとは、EITOが開発した犬笛の様な笛で、で緊急信号を送ることが出来る。
集団の一人が大声で何か叫んだ。那珂国語のようだった。集団の一人が、火の燃えている木から小さな木に移し、近くの梅の木にその火を移そうとした。
「止めろ!」咄嗟に福本が止めようとしたが、その男は火の付いた木を前に出し、けん制した。
その時、ブーメランが飛んできて、種火と、その男の木の火は消えた。
集団は四散した。火の付いた木を持って。
バトルスティックを持った伝子が現れ、「避難誘導を!」と叫んだ。
公園の各地でエマージェンシーガールズと忍者の闘いが始まった。各地に散らばった物部達だが、避難誘導は、人々がパニックになっている為、思うように進まなかった。
伝子が倒した男は、駆けつけた愛宕に任せて、伝子は走った。
伝子達エマージェンシーガールズは、各地で2対1の形で忍者を倒した。銃を持っていないが、刀を持っている者もいた。
しかし、バトルスティックで簡単に倒せた。バトルスティックの先端には、痺れ薬が塗ってある。そして、スイッチを入れることで微弱な電流を流せる。今回の闘いではシューターはあまり使わなかった。シューターとは、うろこ形の手裏剣で、先端に痺れ薬が塗ってある。
40分。敵はあっけなく倒され、愛宕達警官隊は犯人達を逮捕連行していった。
公園の外れ、野球場にパネルバンが駐車してあった。引っ越し屋のものだった。忍者集団は、このバンから『出撃』したものと判断された。
午後1時。EITO秘密基地。
帰還した伝子にEITOのシェルター本部から連絡が入った。
「大文字君。バイトだったよ、忍者は。ネットで募集していた。闇サイトではない。エキストラ募集で、みんなどこかで撮影機器が回っていると思い込んでいた。勿論、もう閉じられている。前金5000円が渡され、午前10時になったら、公園に現れ、火の付いた木を持って走れ、と。火は点けなくても、後で合成出来るから、と。そういう指示があったらしい。公園の隣の野球場で、撮影スタッフらしい男達に説明され、指示に従った。まさか本物のエマージェンシーガールズだとは思えないから、彼女達もエキストラだと思い込んでいたらしい。」
「人騒がせが目的ですか。」と伝子が言うと、「動員数を確認したのかも知れないね。」と、理事官の横で夏目が言った。
「僕もそう思います。」と、高遠がマルチディスプレイの隅で言った。
「エマージェンシーガールズの人数かあ。」
「前哨戦か。」伝子は黙り込んだ。「那珂国語で叫んだのは、台詞か。」
「とにかく、被害者が出なくて良かった。エキストラは事情を聞いて開放するしかない。皆は解散していい。」
画面は消えた。
「おねえさま。知恵の回る相手かも知れないということですか。」と、なぎさが言った。
「観光客に交じって撮影したかも知れない。こちらも南原がある程度撮影はしているが、映像に敵の仲間がいるかどうかは分からない。」と、伝子は呟いた。
「まあ、こちらも3分の2の戦力だったから、痛み分けね。」と、あつこは言った。
「みんな、帰っていいぞ!」と伝子は叫んだ。
その声は秘密基地に、反響した。
―完―
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