第12話 メリル:バンス王都警備隊・副長 

数日後に冒険者ギルドへ顔を出したら、

「あつ、ケンジさん、あの黒猫捜索の件ですが、依頼主様から依頼の取り下げがありました、まだ、見つけていませんよね〜」

って、あのときの受付嬢が言ってきたので、

「はい、苦労してます」

「でしょうね〜 依頼取り下げということで、依頼者様からは慰謝料ということで、金貨1枚、渡されていますので、これは、ケンジさんがお受け取りください」

まあ、くれると言うならもらっておきますが・・・

「はい、なにもできずにすみません!でした」

「いえいえ・・・こちらこそ!・・・」って、金貨1枚、またもらえた。


まあ、今日は、まだ残っている依頼でも受けようか、どうせまた無理難題?少額報酬? 塩漬け依頼だろうな・・・


「なあ、あんた! 依頼を探してるのか?」 声をかけられたよ・・・

まあ、どうせ、こんなのは、胡散臭い連中だろ?って思って振り返れば・・・あれ? 美人さんだな。しかも、冒険者じゃないな・・・制服を着てる。

「はい、何かおもしろいものが無いか?と思ってね・・・」

「ははは、面白い仕事か!〜 あんたのほうが面白いな! ああ、気を悪くしないでくれ!すまん。 私は、王都警備隊のメリルというものだ」

って、騎士さんの証明なのかな、肩の房飾りを指差してポンポンしているけど・・・

そんな、僕が知るわけないでしょう! 鑑定!

*メリル: バンス王都警備隊副長・エンゲ地区隊長 レベル150


「ああ、つまりだ・・・その腰の鞄はだろ? この地区のダンジョン調査にあたっての荷物運びができる冒険者を探しているのだ」

「はい、よく解りましたね・・・」

「そりゃあ、だって、あんたは、他に何も持っていないじゃないか?それに、私はを持っていてな、あんたのレベルが見えたからな・・・

そのレベルで、荷物無しなら、その鞄を疑いたくもなるってものさ」

「ああ、そうですか? まあ、いいですけどね」

確か今僕の偽装レベルは200ほどだっけ? もう、適当で・・・忘れていたけど・・・

「僕は、Cランク冒険者ですよ?」

「なんだ、そんなカードのランクを鵜呑みにするよりは、私の勘を信じるけどな」

「はい、まあ、話を聞かせてもらえますか? 僕はケンジと言います」

「ああ、私はメリルだ、よろしく! ケンジ!」


とまあ、少し強引に誘われて、メリルが借りたギルドの個室で詳しい話を聞かせてもらうことになった。


この街の北の山中に、まだ未公開のダンジョンらしきものがあるらしい。

一応こういう場合は、王家が調査をした後、地元の冒険者ギルドに管理を引き渡すという仕組みらしい。冒険者ギルドから発見?の情報があって、現在は街の衛兵達が入口の警備にあたっているが、それを引き継ぎ、中を調べるというものらしい。必要なら、魔物の間引きなども行うと・・・

それで、僕に期待される仕事は、隊員の荷物、特に食料の運搬と保管がメインということだ。

まあ、「面白そうだから良いですよ〜」って返事をしておいた。

「早速で悪いが、明日にでも出発したいので、早朝5:00に、街の西門近くにある警備隊詰め所まで来て欲しい・・・そうそう、一応確認だが・・・その鞄の容量は?」  小声で答える・・・

「はい、容量は大で時間停止ですよ・・・これは秘密で!お願いします」

「了解だ! あっ、そうそう、一応、メンバーは私を含めて総勢で5人となる、全員女性だから・・・あんたを含めて6人のチームだ・・・」

おやおや、なかなかの桃色世界ですか〜 

「なんだ? 嬉しくはなさそうだな? 女性ばかりだぞ〜」

「ええ、まあ、お手柔らかに!」

「ははは、大丈夫だ、みんな訓練バカ共だからな! はははは〜」


翌朝は早起きして、4:30には、警備隊詰め所まで転移!で移動してきた。

「おはようございます、ケンジです!」

さっそくメリルさんが現れて、部屋に案内された。そこには、まあ、これを全部収納しろってことだろう荷物の山。

警備隊の大型テントが二つ、椅子が10脚、医療用のベッドが2台、携帯医療具が2箱(まあ、薬箱みたいなもの)、ポーション各種各20本(魔力回復、解呪、治癒)、個人テントと寝袋が各5、予備の剣、弓矢、槍などが各10、後は私物か? 名前の書かれた大きな袋が5袋、・・・まあ、サササ〜って回収して収納に収めた。

その様子をみていたメリルさんが、

「あんた〜 凄いな、今ので全部収まったのか?」

「はい、大丈夫ですよ〜」

「出してみますか? 確認します?」

「イヤ・・・あ、そうか、私の袋を出してくれるか?」

はいはい、メリルって書かれた袋を取り出す。

「ああ、分かった! 不思議なものだな〜 その鞄のどこにこれが入っていたんだろう?・・・」

まあ、用事もなさそうなので、そのまま再度収納しておいた。


あとは、食料だな・・・

台所の保管庫から、言われたものをどんどん、収納していく、この作業もまあ

流れ作業みたいなもので、片っ端から収納して完了。

「驚いた! 私の目が正しかった!ってことだろ?」

はい、そうでしょうよ・・・

「ところで、ケンジは、馬には?」

「まあ、乗れますけど? 馬車ではないのですか?」

「そうだ! 馬のほうが早く行けるのだが、向こうでの世話とかを考えて、馬の数を減らして、馬車にした。私は馬で行くが、メンバーは馬車に乗る。その際に、馬車を引く馬を任せても良いか?」

「またまた、急な依頼ですね〜 良いですけど? どの馬ですか? 挨拶でもしておきましょうか・・・」

案内されたのは馬小屋。僕の馬を指定されたので、近寄っていって、(念話)してみた。

(こんにちは、僕はケンジ、わかりますか?)

「ブルブル、ヒヒヒ〜ン・・・」

(うん? 駄目なのか?・・・)

(駄目じゃないわよ、貴方が私に乗るのね?)

(はい、よろしくお願いしたいので、挨拶にきました)

(うん? 良いわよ、仕事だから・・・)

なので、ヒール!と、クリーン、身体強化!をかけてあげた。

(まあ、貴方、魔法使いなの?)

(はい、ケンジです。何かあれば言ってください!)

(分かったわ・・・あの子達ったら駄目なのよね〜 私達のことなんて考えてくれないからね〜 私はコマコよ!)

(そうなんですか・・・まあ、大変でしょうが、よろしくお願いしますね)

って、収納から、水と人参を出して口に運んであげた。

「ヒヒ〜〜ン、ブルブル・・・(ありがと)・・・」


「ケンジ、あんたって奴は、馬にも好かれるんだなぁ〜 そいつ、結構、人見知りするやつなんだ・・・なあ、コマコ?」

「ブルブル・・・」


メンバーが集まって来たので、紹介された。

ウラル、剣士 茶髪

カロン、剣士 金髪

エムラ、弓矢 茶髪

ナナミ、魔道士、黒髪

ロラン、回復士、金髪

「最後に、ケンジです、荷物運びをさせていただきます、よろしく!」


本当にその鞄に私達の荷物まで入っているのか?

まあ、面倒!なので、順番に出してあげた。

「ああ、すまない! 別に疑ったわけではないのだが・・・」

(って、あきらかに僕のことを、怪しい目で見てましたよ?みなさん!)

と、「ヒヒ〜ン、ブルブル・・・」ってコマコが寄ってきて、メンバーを睨みつけている。

「なんだ〜? コマコはケンジのファンになったのか?〜 ケンジ、凄いなお前!」

はいはい、なんとでも、おっしゃってくだいな・・・

「その風格! あんたほんとうにCランク冒険者なの?」

「はい! Cランク冒険者です」って、Cカードを見せてやった。


まあ、ソレ以上はゴタゴタも無く、メンバーを乗せた馬車を僕が操って進む。メリルは、付いてきてくれ!と前を進んでいくから、まあ、楽ちんだ。

コマコも、まだまだ元気いっぱいだしな。まあ、ついでに、再度、回復!をかけてあげたよ。

「ヒヒ〜ン、ブルブル・・」って返してくれた。



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