イメチェンしよう
男子学生が居たドリンクコーナーを離れ、イートインコーナーで心を落ち着かせることにした。
「さっきの男の人たちは知り合い?」
「違うと思う…。私を推してくれてる"殿たち"は30代が多いから」
グループ内ではお客様のことを男性は"殿"、女性は"姫"と呼んでいる。
「大学生みたいだったもんね…。でも嵐矢さんとは仲良しだよね?メイちゃん」
「えぇ…そんなこと無いけど…」
「若い人と話せないわけじゃないんでしょ?」
「い、今はプライベートだし…。握手とかお願いされたら困るし…」
「でも嵐矢さんとは仲良しだよね、メイちゃん」
「えぇ!…そう?」
急に嵐矢くんの話題になってびっくりした。
「うん、妹とお兄ちゃんって感じがするよ?」
そか、妹か…ん!? 妹?私の方が年上なのに?
確かに最近からかわれてるな、とは思っていたけど…。
「初対面だと上手く話せないし…」
「これからもっと人気なアイドルになるんでしょ!ダメだよファン増えないよ?」
さやちゃんはややお説教気味に話を聞いてくれている。
「あの"明石☆さんまさん"だってサイン頼まれたら断らないんだって!メイちゃんも見習って!」
そんな大御所さんを手本にしろと言われても…。
私の方が年上なのに情けないよね…。
さやちゃんは明るい学級委員長みたいな雰囲気があって頼もしい…。
それに比べて私は、教室の隅の席で、独りでiPodでボカロ聴いてる地味なやつで…。
「さやちゃんはすごいね…。学生時代もみんなの人気だったでしょ?」
「わ、私?…」
あれ?急に黙り込んじゃった…、悪いこと言っちゃったかな…。
「今のメイちゃんが、高校生の時の私にそっくりで…、変えてあげなきゃって、ついお節句焼いてる、みたいな感じかな」
「え?…それってどういう…」
うっすら笑みを浮かべて椅子から立ち上がった。
「戻ろう。嵐矢さんと大家さんと合流しないとね!」
「…うん」
イートインコーナーを出てお惣菜コーナーに向かった。
「あぁ、さやちゃんめいちゃん何処に居たの?
たくろうならドリンクコーナー行ったけど?」
お惣菜コーナーにいた大家さんに会うことが出来た。買い物カゴにはトンカツやイカリングなどの揚げ物と缶ビールが3本入っていた。
「ごめんなさい、イートインコーナーでちょっと休憩してました。嵐矢さんと合流しましょ」
お惣菜コーナーからドリンクコーナーに向かう。
…私もさやちゃんや大家さんみたいに人前に堂々と出ていける性格に生まれたかったな…。
「人酔いでもした?さっき激混みだったもんねぇ~」
「ん~、そんな感じです。お客さんが減るまで待ってました」
さやちゃんと大家さんが並んで歩く3歩後ろを付いていく。
「ぁ、居た。おーいたくろう!」
大家さんが嵐矢くんに手を振る。
「ぁ、なんだ、みんな一緒に居たんですね」
「私たちもさっき合流したばっかだよ。会計しよう」
「そうですね…、ってビール増えてますけど?」
買い物カゴの中身の多さに冷や汗をかいた。
「大丈夫だ、心配すんな。この分は私が払うわよ。せっかくたくろうに作って貰うんだしね」
「…まぁ、それなら良いですけど…」
「あんたらの飲み物とかアイスの支払いは、あんたらでしなね」
「ぁ、白くま買わなきゃ!メイちゃんは?」
「私はパピコ!」
アイスのコーナーから商品を取り出し、嵐矢さんが持っているカゴに入れた。
「じゃぁ、会計しましょうか」
レジの列に並んで会計を済ませて、
アパートに戻ってきた。
下駄箱を確認すると、六倉さんは帰宅しているようだ。
「ぁ、のぼる帰ってきてるみたいね」
「そうですね」
「声かけてくるから、冷蔵庫に食材しまっておいて」
「「はーい」」
奏浜さんと恵衣さんが同時に返事をした。
大家さんはハイヒールからスリッパに履き替え102号室前に向かった。
「のぼる~、今日はたくろう特製のカツ丼だぞ~」
今必要な食材だけをテーブルに残し、飲み物やアイスは冷蔵庫にしまった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます