素をさらけ出せ


「だってね…、メンバーの皆同じように投稿してるんだもん…。なのに何故か私だけフォロワー増えないし、いいね!少ないの!なんでぇ?…」

「同じグループだからって、皆同じようなキャラ作りすることないんじゃないですか?」

32人中13位っていうことはそれなりに人気なんじゃないのか?

「恵衣さんが今俺と話してる時のままステージに立って無いんですよね?」

「まぁ、グループ全体のバランスを考慮して、"ぶりっこメイメイ"でやってるけど」

自分でもぶりっこしてるのは自覚あったのか。

「次恵衣さんがステージに立つのはいつですか?」

「明後日の午後の部だけど…、なんでよ?」

「観に行きますよ。メイメイの活躍を見に」

「え~、…マジ?」

急に俺と距離を取って壁に貼り付く恵衣さん。

「奏浜さんと六倉さんとかも連れて行きましょうか?誘っておきますよ?」

「し…仕事とプライベートは分けたい派なんだけど…、マジで来る気?」

「チャーハン食う?チャーハン」

チャーハンの盛られた皿を恵衣さんの顔の前で円を描いて泳がせてみる。

「は!…うぅ…」

なんか小動物みたいな反応…、

かわい―んんっ!(咳払い)

「どうぞ、食べてください」

「え?いいの?」

「またキッチン降りて作りますよ。練習もあるんでしょ?」

俺は立ち上がり玄関に向かう。

恵衣さんにちょっかい掛けれたし、アイドル活動のことも聞けたから、良しとしよう。

「まぁ…ね」

「食べ終わったらシンクに置いといてくださいね」

「あ、ありがとう」

恵衣さんにニコッと笑いかけ、恵衣さんの部屋のドアを閉めた。

「奏浜さんと六倉さんにも話してみないとな…」

と独り言をしゃべりながら廊下を歩こうとした時、恵衣さんの部屋の中から「はぁ…うま…」と声が聞こえてきた。

「それは良かった。お粗末さまでした」

階段を降りキッチンへ向かった。


*****


自分の分のチャーハンを作り、自分の部屋で小説を読みながら食べ、片付けも終わった夕方。

16時30分。

「今日はカツ丼食いたい気分♡」

「じゃぁ大家さん材料買ってきてくださいよ?」

「え~ダルい」

「だったら今日はそうめんですね」

今日の夕食を何にするかで大家さんと言い合っていると…。

材料も無いのにカツ丼が食べたいなんて、わがままな大家さんですね。

買い置きしていたそうめんと冷凍餃子しかないけど、十分じゃない?


「ただいまぁ」

ただいまの声と共にドサッっとダイニングテーブルに物が置かれた音がした。

振り返るとテーブルの上には奏浜さんの体型を隠すほどの大きな"くまのプ☆さん"のぬいぐるみが置かれていた。

「でか!どうしたんですかこれ?」

「色違いプ☆さんか…」

俺も大家さんも呆気にとられる。

「えへへ~、UFOキャッチャーでGETしてきたの!600円で取れたの!スゴくない?でかくない?可愛くない?」

600円ということは3回のプレイで取れたのかな?


他にも"ADDICT♡ON"の紙袋とMERCU♡YD♡O"のロゴの袋を持った奏浜さんはご満悦なご様子で、友達とのショッピングを楽しんできたようだ。「すごいですねぇ!これも部屋に飾るんですか?」

「もちろんでしょ!部屋に置いてくるね!」

奏浜さんはキッチンを出て自分の部屋に戻って行った。

「ぬいぐるみってめっちゃホコリ吸うのよ?運気下がるし…」

俺の耳元で大家さんが小声でつぶやいた。

「そうなんですか?」

「まぁ、さやなちゃんが良いなら止めないけどさぁ、せっかく気分良く帰ってきたのに水を差しちゃ悪いでしょ?」

「まぁ…そうですね」

女の子らしくて良いと思うけどなぁ。


「はぁ~お腹空いたぁ、嵐矢くんご飯まだぁ?」

恵衣さんから2階から降りてきた。

まったく、大家さんも恵衣さんも…。

俺はお母さんか!

「あぁ、メイちゃん。明後日のライブ、私も観に行くから宜しくね」

大家さんが恵衣さんに言う。

「えぇ!!…っ―」

大家さんの言葉にハッと目を見開いて驚いたあと、舌打ちをして俺を睨む恵衣さん。

ピューピューと口笛を吹いて目を合わせないようにする。
























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