ドロドロなやつ?


「…臭い…臭すぎる」

真夏日の様に蒸し暑い真夜中。

203号室の湿田さんの部屋から匂う異臭に意識が行き目を覚ます。

時計の時間を見ると23時12分。

まだ全然夜は長い…、どうしよう…。

湿田さんは今の時間はバイトらしいけど…。

早く掃除手伝わないと俺の身が持たん…。

201号室の人はよく平気だな…。

また挨拶してないけど…。

散歩でもしよう…、外の空気をいっぱい肺に取り込んでおこう。

俺はあまり物音を立てないように玄関のドアを開け階段を下り、下駄箱でスリッパからスニーカーに履き替える。

向かいの本屋も閉まっていて、夜道を照らすのは電信柱の街灯だけ。

アパートの道路向かいにはコンビニがあった。

コンビニの入り口脇には公衆電話のボックスが設置されていた。

今どき珍しい、東北の地元でもあまり見掛けないくらいだ。

その公衆電話ボックスの中に男性が入って誰かと通話中のようだ。

声が外に漏れている。


「なぁ頼むよ~あけみ~、俺別れたくないよ~」

"あなたには何度もやり直すチャンスは与えたつもりだけど…、全然浮気癖が直らないわね…"

「りさちゃんとはもう連絡取らないから…、頼む…。あけみが一番だから…な?」

"また違う子の名前出てきたけど!りさって誰だよ!何人女居んだクソやろう!"

「ぁ……あけみが―」

"黙れカス!さよなら!"


…まさかドラマみたいな会話が本当に間近で繰り広げられていて、思わず立ち聞きしてしまった…。

通話が終了したのか男は項垂れていた。

男性は公衆電話ボックスから出て「はぁ…」っとため息をつき、道路向かいのアパートにとぼとぼ歩いていく。


佐山 帝造(さやま たいぞう) 33歳

コーポ•ペルーシュ201号室の住人。

真面目そうには見えるけど…なんか闇しか感じない。オーラが…。


って同じアパートかーい!

と思いながら俺はコンビニに入り、リプ☆ンのレモンティーとレジ横の肉まんを買うことにした。

せっかくだからイートインコーナーで食べよう。








  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る