共同生活
とりあえず自分の部屋に戻り、鼻水でずるずるの鼻をかむ。
「第一印象最悪だろうなぁ…」
部屋の中には洗面台もないから。
1階のシャワールームに顔を洗いに行く。
ずびび~とついでに鼻の中に溜まった鼻水を出し切って洗面台に流す。
あと歯磨き、うがいもする。
「っはぁ…だいぶスッキリした」
洗面所を出て自分の部屋に戻ろうとした時、
「ぁ、さっきの男の人だ」
玄関の下駄箱にスニーカーを入れていたのは
先ほど本屋で出会った女性だった。
「ぁ、さっきはどうも、俺は嵐矢沢労っていいます」
顔を洗ってスッキリしたから、今は顔を見せても平気だ。
「ぁ、私は奏浜彩也菜です、よろしくね」
「よろしく」
ほんわかした雰囲気で話しやすそうな可愛らしい女性だ。
すると微かに臭ってくる生ごみのような臭い。
「ん?…なんか臭い…」
2階に上る階段の方を見て言う。
「ぁ、やっぱり臭いでしょぉ?203号室の湿田さんの部屋からだよ。大家さんがいつも怒ってるの"掃除しなさい"って」
鼻が詰まっていたからか、今まで分からなかった臭いを感じ気分が悪くなりそうだ…。
「見に行ってみる?」
「え?一緒に?」
「私も一緒に行ってあげる」
そういって奏浜さんと一緒に2階に上がる。
2階に上がると更に臭いが強烈になる。
「やっぱり臭いねぇ…」
「俺、花粉症鼻詰まってたから、今まで分かんなかった…、マジかょ…」
てか、この子も興味津々な様子で物怖じしないんだな。
203号室のドアをコンコンとノックする。
「湿田さん、居ますか?」
しばらくして、ガサゴソという音がしたあとドアが開いた。
「くっ…」
思わず口を手で覆った。
ドアが開くとゴミのパンパンに詰まったゴミ袋がゴロッと廊下に転がった。
「もう、湿田さん、いい加減お掃除してくださいよぉ、嵐矢さんも困ってますよ」
「…あらや?」
寝起きだったのか、ぬぼ~とした顔で俺を見る、ぼさぼさの金髪ボブヘアーの…女性だった。
「嵐矢沢労です。3日前に202号室に引っ越してきました。よろしくお願いします」
「湿田です…、よろしく」
小さくうなずいて挨拶をした。
湿田 恵衣(しった めい)25歳。
某地下アイドル。アイドル活動だけの収入では生活が厳しいため、他にもバイトを2つ掛け持ちしている。
だから、掃除する暇があったら…正直寝たい…でしょ、普通そうでしょ?…寝かしてよ…。
玄関にもパンプスやらハイヒールやらゴミ袋やら食べかけのコンビニ弁当やらで部屋中がぐちゃぐちゃしている…。
「掃除…手伝いましょうか?」
「ぇ…ごめん…夜勤明けで眠いから…あとにして……」
バタン、とドアが閉まった。
「しょうがないですね、私もその時は一緒にお掃除手伝いますから、呼んでください」
「そっか、ありがとう」
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