信夫

 中学の頃…俺は両親の仲が良いもんだと思ってた。親父もお袋も家にいる時は良い親だったからな。

 学校が早く終わった日に駅前に遊びに行った時にお袋の浮気現場を見ちまったんだ。当時持ってたのはガラケーだったけどカメラくらい付いてた。だから証拠を撮った。

 家に帰ってきたお袋に画像を見せてなんで浮気をしてたのか聞いたんだ…


 「何でもするからあの人には言わないで」


 俺が聞きたかった答えじゃない…でも、母親の必死な表情を見て俺の中で新しい…知らなかった感情が生まれた。

 他人を征服する悦び…とでも言っておくか。母親には黙っておく見返りとしてATMになってもらった。親父は俺に金をくれなかったからな…金があればこの悦びをもっと味わえる気がしたんだ…


 高校に入る直前に髪を染めた。親父にはメチャクチャ怒られたけどな…まあ、気にしてない。俺は女が欲しい。女は不良っぽい外見と態度…そして金に弱い。妊娠したら面倒だからピルも用意した。

 金はお袋に言えばいくらでも出す。お袋の浮気をネタに脅せばいいだけだ。

 準備は完璧だ。とはいえ、俺はまだ童貞…誰か練習するのにちょうど良い女がいないか探していたら同じ高校に藤本が通っていた。

 藤本の父親は親父の会社で働いている。…脅したらやれそうだな。アイツ…気が弱そうだし…


 ちょっと抵抗されたけど藤本を使って童貞は卒業できた。自信が付くまで藤本で練習しよう。親父のおかげで良い練習相手が見つかったぜ…

 それからは藤本を抱きまくったが…おかしい。この女…動画みたいにならない。泣きながらずっと耐えてる感じだな…不感症って奴か?チッ…面白くねぇな…他の女を探すか。


 それから何人かに声を掛けたが…なかなか上手くいかない。仕方ないから藤本でストレスを発散する。コイツが感じてなくても俺が気持ち良ければいいんだよ。暇な時間に使ってやるか。


 藤本の次の女が見つかるまで半年かかっちまったぜ。最初から金をチラつかせたらアッサリ釣れた。やっぱり世の中金だな。

 何回か遊んだけど…あんまり良くない。藤本のほうが遊べる。コイツはもう捨てよう。

 それからも地道に声を掛け続けていろんな女を食った。声を掛けた時は不機嫌でも金をチラつかせたら手の平を返す女もいたな。何人かはキープしてはある。


 藤本をラブホに呼び出したが…まだ少し時間がある。どこかで時間を潰そうと思ってラブホに向かう途中にあった喫茶店に入った。

 喫茶店では中原が働いていた。学校じゃあまり気にしてなかったけど…いい体してやがる。顔も良く見たらかなり好みだ。次はコイツを狙おう。新しい獲物を見つけて昂ぶった感情を藤本にぶつけて発散した。この女…マジで便利だわ。



 中原はどうしても欲しかった。最初から金をチラつかせると反応したから増額して押し切った。反抗的な女を金で征服する悦び…たまんねぇな。抱き具合も最高だったし…大当たりだぜ。

 中原も内心では金の為とか考えてるんだろうけどな…1度でも体を金で売ったら俺と縁を切っても買春したという事実は残る。普通の女がその事実に悩む姿を見るのも愉しい。いくら後悔しても消えない事実。よほど図太い神経の持ち主じゃなければずっと付き纏うんだ。

 …女なんて好きな相手以外でも簡単に股を開くんだよ。お袋がそうだった。親父とあんなに仲が良かったのに…裏で若い男とやってたんだからな…何が愛だ。くだらねぇ。


 俺は別に彼女が欲しいとは思っていない。作ってもどうせ裏切るからな。ただ女を抱きたいだけだ。だから関係を持っている女が彼氏を作っても気にしない。…そう思っていた。


 「彼氏ができたからさ…もうアンタとの関係を終わらせたいんだけど?」


 「ふ~ん。別にいいけど。最後に1回やらせろよ。倍…4万出すぜ?」


 「…4万…本当に最後だからね?」


 彼氏に悪いと思っていても金は欲しいらしい。その女はやってる最中も彼氏に謝っていた。彼氏に謝りながらも感じまくる女。むしろ今までより感じている気がする。

 よくわかんねぇけど…面白い。最後とは言ったが今後は4万払うと言ったらアッサリと承諾しやがった。…こんなもんだよな。



 大学に入ってから出費がかなり増えてきた。中原はやる回数が減っているから増額しても高校の頃と渡している金額はあまり変わらなかったりする。

 問題は他の女だな。まあ…金なんかお袋がいくらでも出すから気にしなくてもいいか。あ、ちゃんと節約はしてるぜ。藤本には形だけ渡せばいいわけだから千円しか渡してないしな。

 

 大学を出たら親父の会社に入る予定だ。社長の息子って立場を使っていろいろできそうだぜ…

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