紗奈 前編

 高校に入ってすぐ…お父さんの会社の社長の息子…佐伯君から関係を迫られた。

 佐伯君は中学までは普通だったのに高校に入ってから髪を染めて耳にピアスを付けていた。高校デビューって奴だと思う。


 「藤本…親父さんをクビにされたくなきゃやらせろよ」


 「…え?」


 「お前の親父、ウチの会社で働いてるんだろう?クビになったら困るよな?」


 高校に入りたての子供には会社の仕組みなんてわからない。後になって考えたら普通にあり得ない事だったと思う。会社はそう簡単に社員を解雇する事ができないから。

 でも…その時の私には佐伯君の言葉に従う以外の選択肢がなかった…不良みたいな見た目になった佐伯君も怖かったし…

 放課後…佐伯君にラブホに連れて行かれた。ここって制服で入れるの?学校に連絡されたりするんじゃ…


 「話はつけてある。行くぞ」


 「……」


 ここはとても怖いところだ…ここで私は…佐伯君としちゃうんだ…初めては好きな人とって思ってたのに…

 佐伯君は部屋に入るなり私に襲いかかってきた。制服を無理矢理脱がされて…強引に私の中に入ってくる。痛みしかない。


 「痛い!やめて!」


 「うるせぇな!女は黙って感じてりゃいいんだよ!」


 佐伯君はとにかく乱暴だった。感じろと言われても激しい痛みしか感じない。あまりの痛みに抵抗する気力はすぐになくなってしまった…


 「ようやく素直になったか…」


 乱暴に体を揺さぶられ続ける。なんでこんな事に…誰か…助けて…


 「そろそろ出すぜ」


 「…いや…」


 嫌がる私を押さえつけ…佐伯君は私の中に何度も出した。


 「女ってすげぇな…最高だぜ…」


 「う…ひっく…」


 「あ、忘れてた。これ飲んどけ」


 佐伯君は私の体の上に何かの薬を置いた。


 「ピルって奴だ。飲んどけば妊娠しないらしいぜ…後はこれな」


 更にお金を渡してきた。1万円…


 「お前は俺に買われたんだよ。つまり、合意って訳だ」


 訳がわからない。何度もやめてって言ったのに…お金を渡されただけで合意だなんて…


 「これで俺も童貞卒業…また頼むぜ」


 また?またこんな酷い事をされちゃうの?もう嫌だよ…私はこんな事したくない…



 それから…佐伯君は毎日のように私を抱いた。最初の1ヶ月は本当に辛かった。寝る時に自分の体から佐伯君の臭いがしてくる気がして…夜中に何度もシャワーを浴びた…


 半年もする頃には慣れてしまった。気持ち良くなんてない。ただ…そういう時間なだけ。終わったらシャワーを浴びればいいだけだ。


 1年経った。私は高校2年になっている。最近は呼び出される回数が減った。きっと他の女の子を抱いているのだろう。佐伯君に抱かれる回数が減った事により自分の時間…友人と過ごす時間が増えた。


 更に1年経った。私は高校3年。この頃には月に2回くらいしか呼ばれなくなった。それでもピルを飲む事は止められない。いつ呼び出されるかわからないから…

 最近、体の大きな男の子…川上君と付き合い出した。佐伯君との関係は絶対に話せない。…なんで私は普通に恋愛をする事すら許されないのだろう。川上君と付き合い出した事で…佐伯君との行為への嫌悪感を思い出した。


 また…佐伯君に呼び出されてしまった。川上君と付き合い出してから初めてだ。もう慣れたと思ってたのに…今日は嫌で仕方ない…


 「わ…私…川上君と付き合い始めたので…」


 「…へぇ…俺と浮気しにきたって事か」


 「…違います。もうこんな事は…やめて下さい…」


 佐伯君は何も言わずに私をベッドに押し倒してきた。そしていつものように…乱暴される。


 「いや!やめて下さい!」


 「いいねぇ。最近のお前は反応がほとんど無くてつまらなかったけどよ…今の嫌がる演技は最高だぜ」


 「演技なんかじゃ…本当に嫌なんです!」


 「嫌だと?親父がクビになってもいいのか?」


 「つ…通報しますよ!」


 「いいぜ。通報してみろよ。お前は俺からいくら受け取った?それで被害者になれると思ってんのかよ?」


 「貴方からのお金は使ってません!すぐに返します!」


 「ハッ…受け取ってる時点で手遅れだって言ってんだよ。今更返したところで受け取った事実は変わらない」


 「…受け取ってなんか…」


 「お前は自分の体を自分の意思で俺に売ったんだ」


 「違います!貴方が…無理矢理…」


 「どうやって無理矢理だって証明するんだ?お前が金を受け取った時点で合意として成立する。1度や2度なら無理矢理で通せたかもしれない…お前は俺から何回金を受け取った?」


 「…だって…お金をホテルに置いてく訳には…」


 「置いてけば良かったんだよ」


 「それなら…私がお金を受け取った事も証明できないじゃないですか!」


 「いや。今のやり取りは録音してるから証明できる」


 「…え?」


 「俺に都合の悪いところは編集するけどな。呼び出した時のお前の反応がいつもと違ってたからよ…警戒しておいて良かったぜ」


 「そんな…」


 「…俺に逆らおうなんて生意気になったな。まあ、反応が無いよりマシか…」


 「う…うぅ…」


 私はもうこの男から逃げる事はできないのだろう。全てが手遅れなんだ…

 私は佐伯君と会う時は考える事を止めた。以前のように…そういう時間だと思えばいいだけだ…佐伯君との行為なんて通学のバスで体を揺られているようなもの…そう考えればいい…



 大学は川上君と同じ大学に通っている。佐伯君は違う大学…呼び出されるから関係ないけど…。最近は行為後に佐伯君が渡してくるお金が千円になっている。きっと…これが私の価値なんだろう。…どうでもいいけど…


 川上君と一緒にいる時だけは本当の自分でいられる気がする。川上君の事を考えるなら別れたほうがいいとは思っているけど…私は川上君の事が大好きだった。大きい体だけど優しくて…真っ直ぐな性格の川上君。言葉遣いはちょっと乱暴だけどね。

 川上君と付き合っている事が佐伯君にとって刺激になってしまっているのかもしれない。いつも川上君より自分のほうが上手いとか気持ち良くさせてやるとか…気持ち悪い。死ねばいいのに。


 川上君は行為の時も私の事を気遣ってくれる。私の体はちょっと小さいから…体の大きな川上君とは30cm以上の身長差がある。だから川上君は私を壊れ物みたいに優しく扱ってくれる。そんなに優しくしなくても大丈夫だよ…私はとっくに壊れちゃってるから…川上君に抱かれても…佐伯君に抱かれても…何も感じないもの…


 大学時代の思い出は川上君との楽しい思い出ばかりだ。川上君と一緒にいられるならそれだけでいい。そう…それだけでいいの…

 

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