新一 前編

 大学時代…俺が1番輝いていた頃だと思う。飲みサーで知り合った冬華はちょっと口説いたらすぐに堕ちた。あまりにチョロすぎて逆に不安だったけど…なんか他の男に対しては鉄壁のガードを見せてる。…なるほど。俺にベタ惚れらしい。

 他の女と派手にやると冬華にバレそうだったから地味っぽい女を口説いてセフレにしていた。冬華もそうだったが…ちょっと真面目な顔をして何回か口説いたらすぐにやらせてくれる。適当に話を聞いてやるだけでいつでもやれる女をキープできるなら楽なもんだぜ。


 大学時代はいろんな女を食いまくった。本命は冬華くらいかな。マジで便利な女。浮気とか疑ってないから動きやすい。セフレとは遊びだから浮気じゃねぇし。付き合えとか結婚しろとか言ってくる面倒な女は全部切ったな。関係を口外したら風評被害で訴えるって脅したらあっさり別れてくれたし…

 本当は幸子の事も狙ってたんだが…武蔵とすぐに付き合いはじめちまったからな…手が出せない。無理にやったら冬華にバレそうだから様子見だな。



 社会人になってしばらくして冬華と結婚した。俺の両親が疑ってきたけど…失礼な話だ。本当に本命だっての。裏でセフレとやってても疑いすらしない女なんて最高だろ?

 冬華は毎週外泊してもあっさりと許可してくれる。毎週飲み会がある会社なんてあるのか?本当に飲み会がある時なんて半年に1回くらいだぞ?まあ…信じてくれるならそれでいい。そのほうが皆で幸せなれるからな。

 同じ会社の女の同僚と関係を持ち続けていたが…そろそろ面倒になってきた。冬華と別れろとか言ってくるしよ…そろそろ違う女を探さなきゃな。


 そんな事を考えていたある日。武蔵が半年間出張に行くとか行ってきた。俺と冬華に幸子を頼むってよ。

 …武蔵に直接頼まれたんじゃ仕方ねぇよな?幸子が寂しくないように…ちゃんと相手してやるよ。いや~…まさか武蔵に寝取られ趣味があるとはな~…なんてな。帰ってくるまでに堕とせばいいだけだろ?そうすりゃ皆が幸せになれる。


 武蔵が出張に行って1ヶ月ちょっと。1回だけ帰ってきたみたいだけどよ…そのせいで幸子は以前より寂しがってるみたいだ。そろそろ俺が慰めてやんなきゃな。女の同僚も結婚を前提とした男と付き合い始めたとかで最近はやらせてくれなくなったしよ…

 休日に幸子に様子を見にきたって言ったらあっさり家に上げてくれた。これはもうやりたくて我慢できないって意味だろう。人妻っていいよな~。武蔵ならそんなに怖くねぇし…冬華と同じで馬鹿だからバレねぇだろ。

 なんか武蔵がいなくて寂しいとか言ってやがる。…仕方ねぇな。武蔵の代わりに満足させてやるか。本当は嫌なんだけどな~。仕方なくだぜ?感謝しろよ?

 俺が押し倒すと幸子は抵抗したが…体は正直だった。めちゃくちゃ感じてやがる。可哀想に…武蔵じゃ満足できなかったんだな。俺はいろんな女とやってきたからよ…自慢のテクで満足させてやるぜ。

 幸子いいわ。抵抗しながらも感じる女とか…ハマっちまった。…とは言え、まだ素直にはなってないみたいだな。油断すると仕返しされそうだ。少し慎重に堕とすとしよう。


 それからは当日に呼び出すようなやり方で幸子と関係を持った。事前にいつ会うとか約束しても逃げられそうだしな。いきなり家に行くと嫌がられたけど…それがまたそそる。

 回数を重ねると抵抗しなくなってきてつまらなかったけど…俺のテクに堕ちちまったんだろ。武蔵なんかじゃ満足できない体にしちまったか…上手くてゴメンな。


 武蔵が出張に行って3ヶ月目。明日は武蔵が帰ってくるらしい。幸子が武蔵としてガッカリすると可哀想だから今日は満足させてやらなきゃな。俺って優しすぎるぜ。


 「明日は武蔵が帰ってくるんだろ?明日はしなくてもいいように満足させてやるよ」


 「…武蔵にしてもらうから…いい…」


 「はぁ?武蔵じゃ満足できないだろうが。俺用の体になってんだからよ」


 素直になれば気持ち良くしてやるのによ…幸子には俺に対する感謝が足りない。


 「武蔵のほうが気持ちいい」


 「…あ?そんな事言うんだ。ふ~ん。今日は帰れると思うなよ。一晩中やってやるよ」


 素でイラッとしたから全力でわからせてやった。2時間くらい頑張ったぜ。こんだけやったら流石にわかんだろ。一晩中?そんなの普通に無理だろ。


 

 翌朝…電話がかかってきたので反射的に出てしまった。冬華かと思ったんだよ…何回か早朝に言い訳をした事があるからな。

 電話は武蔵からだった。俺の隣では幸子が寝ている。…ヤベぇ…バレたのか?


 『幸子が家にいないんだが…何か知らないか?』


 バレてないのか?…脅かしやがって…武蔵は馬鹿だから適当に誤魔化せば大丈夫だろ。


 「…いや。知らな」


 「朝からうるさい」


 この馬鹿!なんで喋ってんだよ!黙って寝とけよ!


 『…おい。どういう事だ?』


 「な、何がだ?」


 …いや、武蔵は馬鹿だ。まだバレてないかもしれない。冬華の声とか言っておけば…


 『なんで幸子の声が聞こえたんだ?一緒にいるのか?』


 誤魔化すのは無理だな。逃げよう。俺は仕事に行かなきゃいけない。平日だからな。


 「いや、知らない。悪いけど俺はもう支度しなきゃ…もう切るな」


 電話を切った後…隣で微睡んでいる幸子に無性に腹が立ってしまった。


 「おい!馬鹿!さっさと起きろ!」


 「…何よ…?」


 「武蔵にバレた…」


 「…バレたって…」


 「電話中にお前が話しかけるからだろうが!」


 武蔵なんか適当な事を言っておけば誤魔化せたんだ。幸子が話しかけてこなければ…


 「…ねえ…本当にバレたの?…冗談だよね?」


 「マジだって!クソが!」


 冬華にバレる事だけは避けなければ…冬華は頭が切れる。幸子と浮気した事がバレたら…今までの事も全てバレちまうかもしれない。ヤバい…ヤバいヤバい!

 …冬華は電話に出なかった。そろそろ起きてる時間…寝坊はしないと思う。…武蔵か。幸子に電話がかかってきてないって事は冬華に電話をしたんだろう…もう…誤魔化せないか…


 「…帰る」


 「…仕事?」


 「今日は…休む」


 「……」


 何も言わない幸子を置いてラブホから出た。帰る…とは言ったが帰りたくない。冬華から電話があったけど…出る事ができなかった。

 

 会社に休む事を伝えた後…コンビニで酒を買って一気に飲み干した。無理矢理にでも気分を切り替えなきゃ…打開策が浮かばない。1本じゃ足りなかったので更に2本買って一気に飲み干した。

 気付いたら公園のベンチで寝てた。…昨日は寝不足だったからな。仕方ない。もう夕方か…どうすっかな…冬華が寝る時間まで時間を潰そうかな…メール?


 皆で話し合いましょう


 ……帰りたくねぇな。

 だいたいさ…武蔵が全部悪いと思うんだよね。俺は。アイツが出張に行かなければ俺は幸子を抱かなくて済んだ訳じゃん?

 幸子を抱かなければ今までの関係は維持できてた訳ですよ。つまり…武蔵が原因だと思います。

 幸子も幸子だ。武蔵じゃ満足できなかったからって俺を誘惑するとかビッチすぎだろ?あ~…可哀想な俺。優しさにつけ込まれて抱いちゃうとか…あれだな。美人局って奴だ。詐欺じゃん。

 冬華はあれだろ。最近あまり抱いてやってないから拗ねてたんだ。幸子がしつこく俺を誘うからよ~。やっぱり俺には冬華だけだな。よし。帰って抱いてやるか。そうすりゃ機嫌も良くなるだろ。俺は愛妻家だからね。

 完璧な考えがまとまった事を祝してもう1本。これ飲んだら帰ろう。



 なんかよくわからねぇけど冬華は俺の話を聞いてくれなかった。訳わかんねぇ。結婚してやったんだから黙って俺の言う事を聞いておけばいいのによ…親父にまでバラしやがって…ああ、クソ…イライラするぜ…


 女の同僚に電話をした。


 「…何?」


 「今から行く」


 「は?アンタ…今日欠勤してたでしょ?体調が悪いんじゃないの?」


 「うるせぇな。とにかく行くから」


 「ちょ」


 女なんてやれば喜ぶ癖にゴチャゴチャうるせぇんだよ。黙ってやらせりゃいいのに余計な事ばっかり言いやがって…

 まあ、最近は幸子の相手ばかりしてたから拗ねてるだけだろう。

 

 同僚は生意気にも俺を追い返そうとしたから強引に黙らせた。


 「彼氏が出来たって言ったじゃない!」


 「そんなん知るか。その彼氏にバラされたくなけりゃ黙ってやらせろ」


 「最低…」


 全く…女ってのはどうして形に拘るのかね…結婚してようがなんだろうが気持ち良ければそれでいいじゃねぇかよ…面倒くせぇな…

 

 




 

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