雅明 高校2年
春休み。俺の部屋に遊びにきていた弥生と結ばれた。なんかもう凄かった。弥生が可愛くてたまらない。もう離れたくないでござる。
「弥生~」
「雅明君は甘えん坊だね…」
弥生のボールに顔を埋める。これ凄い。弥生も優しく抱きしめてくれるし…これはダメになる。でも…ダメになってもいいかな…
新学期。今日から俺達も2年生だ。なんか転校生がくるらしいですよ?
転校生は男だそうだけど…あまり興味が無いな。いい奴だったら友達になろうとは思うけど…
HRの時に担任が男の転校生を連れてきた。金髪。ピアス。適当に着ている制服。気怠げな表情。…間違いない。チャラ男だ。
「今日からクラスメイトになる茶柱君だ」
「ど~も。茶柱 英男です。前の学校ではチャラ男って呼ばれてました。よろしくお願いしま~す」
ちゃばしら ひでお…略してチャラ男。ふむ。名は体を表すらしい。
「…お友達にはなれないかな」
「雅明君が苦手なタイプだね…」
弥生と小声で話し合う。弥生もああいうタイプは苦手だと思うけどね…俺達はチャラ男とはなるべく関わらないようにした。
俺はいつも通り見学…とはいかなかった。新しく就任したバレー部のコーチに見学を禁止され追い出されてしまったからだ。
頭の中でコーチの殺害計画を立てかけたが…弥生の迷惑になる事はしたくない。俺は見学を諦め、図書室とかで時間を潰す事にした。弥生は部活が終わった時に連絡をくれるから…一緒に帰るのは続けたけどね。
夏休み前、弥生と一緒にデートの計画を立てた。電話で決めてもいいけど…部活の見学ができなくなってから一緒にいる時間が減ったからね。できるだけ一緒にいる時間…恋人としての時間を作りたかったんだ。
夏休み。弥生と立てた計画はだいたいプールと海で埋まっている。部屋で見る弥生の体もむしゃぶりつきなくなるくらい好きだけど…水着はまた違う良さがある。普段はあまり見せてくれない恥ずかしそうな表情とかね。
「眼福であります…」
「ありがとう。でも、恥ずかしいから…早くプールに入ろうよ…」
弥生の性格的にこういう場所をあまり好まないのは知っている。それでも俺は…水着姿の弥生が見たかったんだ…
夏休み明けからバレー部が忙しくなったとかで弥生と一緒に帰れなくなった。
「雅明君…ごめんね。終わる時間がわからないから先に帰ってて欲しいな…」
「…わかった。無理はするなよ」
弥生はかなり疲れているみたいだ。心配だけど…我が儘は言えない。体調を崩したりしなければいいんだけど…
なんとなく遠回りをしながら家に帰る。家の近所にあるファミレスの前でクラスメイトのチャラ男が女子と歩いているのを見かけた。関わらないようにしていたけど…チャラ男はやはりチャラ男だったようだ。隣にいる女子はセフレって奴なのかな?
…まあ、俺には関係ないか。恋愛は個人の自由だし…
俺はのんびりと家に帰った。
冬。最近は弥生との時間がほとんどとれない。休み時間とかは話をするけど、とても疲れているかんじだ。部活はそんなに大変なのだろうか…
「弥生…本当に大丈夫か?」
「うん…大丈夫だよ。心配かけてごめんね…」
俺がどれだけ心配しても…弥生は大丈夫としか言ってくれない。部活がそんなに大変なのかと思って見学に行くと…
「見学は禁止だって言っただろうが!」
「ごめんなさい!」
ゴリラみたいなコーチに見つかって追い出されてしまった。…少しだけ見学できたけど、弥生の雰囲気が少しおかしかった気がする。コーチ、厳しそうだもんな…
結局、見学するのは諦めた。あまりしつこいと弥生が怒られるかもしれないから…
3月。もうすぐ冬休みだけど、弥生は相変わらずだった。一緒にはいるけど、会話も減った。本当に…大丈夫かな…
昼休みにチャラ男に話しかけられた。コイツと話をするなんて初めてだ。何の用事だろうか?屋上までついてこいとか…
屋上はまだ寒いからか人が全くいなかった。来月くらいには暖かくなって昼をここで食べる生徒も来るようになると思う。
チャラ男は自分のスマホを操作して俺に動画を見せてきた。そこに映っているのは…
「これ、お前の彼女じゃね?」
チャラ男の言う通り…弥生だった。弥生が他の男に抱かれている動画…弥生じゃないと思いたかったけど、腕には俺がクリスマスに贈ったブレスレットを付けている…
なんで…弥生が…
「…この動画…お前にやるよ。連絡先を教えてくれ」
チャラ男の真意が全く読めない。俺にこの動画を渡す理由はなんだ?自分が寝取ったとでも自慢したいのか?
…この動画は必要だ。弥生に見せて問いただす為に…
「…わかった」
俺はチャラ男に連絡先を教えると動画が添付されたメールが届いた。知らないアドレス…チャラ男のアドレスだ。動画を確認するとさっきの動画で間違いなかった。
「…ありがとう」
礼を言うのが正しいかはわからない。チャラ男は何も話さなかったから…俺は弥生に会う為に自分のクラスに戻った。
クラスに戻ると弥生は俺の席で弁当を食べていた。俺と目が合うと穏やかに微笑んでくれたが…やはり疲れは隠せていない。
席に戻ってパンを囓る。いつもの光景…昨日までは…弥生が知らない男に抱かれているなんて思いもしなかったから…楽しかったのにな…
「弥生…少しいいか?」
「うん」
弥生を連れて屋上へ向かう。昼休みはもうあまり残っていないが…最悪、次の授業はサボろう。
「弥生…これは何かな?」
チャラ男からもらった動画を弥生に見せる。弥生は動画を見た瞬間に真っ青になっていた。
「なんで…」
「俺が知りたいよ…なんで…こんな…」
弥生は涙を流して屋上から出て行った。…なんでだよ…なんで説明してくれないんだよ…
クラスに戻るのも億劫で…俺はそのまま屋上にいた。午後の授業はサボったよ。
気付けば放課後を知らせるチャイムが鳴っていた。…クラスに戻るのが嫌だったので手ぶらで帰る。どんな顔で弥生に会えばいいかわからなかったから…
帰り道…いつもの道なのにやたらと長く感じる。…いや、俺の歩くペースが遅いのか。歩いてはいるが…足に力が入らない。学校を出てほとんど進んでいないじゃないか…
そんな無意味な事を考えながら歩いていると背中に突然鈍い痛みを感じた。
「!?」
全く予想していなかった激痛を感じ、その場に蹲ってしまう。なんだ?背後…?
背後を見ると紙袋を頭に被った男がバットを振りかぶっていた。ヤバい!
とっさに動いて避けたけど、その一撃では攻撃が終わらなかった。続いてくる攻撃をただ受けるしかない。頭を庇う腕や狙いやすい足を狙っての執拗なまでの攻撃。
頭を庇う腕から力は抜け、ガードが甘くなった側頭部にいい一撃を食らってしまう。俺はそのまま地面に倒れこんでしまった。
男は俺の制服のポケットからスマホを取り出すとバットでめちゃくちゃに壊し始める。原型を留めないほど破壊されたスマホ。カードももう使えそうにないな…
スマホを完全に破壊し終わった後、男は再び俺に攻撃しようとバットを振りかぶった。その時…
「おい!何してんだ!」
聞いた事がある声…男はその声を聞いて逃げ出していった。
「俺はアイツを追う。千代田は救急車を呼んでくれ!」
「わかった!平野!しっかりしなさい!」
声の主は男を追ったみたいだ。心配してくれる女の子の声もよく聞こえなくなって…俺は意識を失った。
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