大怪我をした男
雅明 高校1年
俺の名前は平野 雅明。高校1年。高校に入ってからなんとなくこう思うようになった…
彼女が欲しい
その願望は日に日に強くなっていく…しかし、困った事に相手がいない。クラスに可愛い子はいっぱいいるけど…特定の誰かと付き合いたいと思った事が無い。困った。
仕方ないので相手を探す為に校内をブラつく事にした。出会いを求めているのであります。
放課後に水泳部を覗…見学に行ったり、陸上部の揺れるおっぱいを見学していたが…俺の求める未来の彼女はいないようだ。
体育館の近くを通ると体育館の中から女子の声が聞こえてきた。…バスケ部とかか?ドリブルしてる女子とか…つい胸のボールを凝視しちゃうよね?しない?
中を覗いてみるとバスケ部じゃなかった。…バレー部。あれはあれで破壊力が凄いな。スパイクの時とかめっちゃ胸を強調してます。あれヤバい。
そんなバレー部の中に顔見知りを見かけた。同じクラスの北村 弥生。身長高いもんな~。バレー部っぽい気がする。教室ではなんとなく静かというか…大人しい女子なんだけどな。コートの中の北村は別人のように凛々しかった。気が付けば俺は北村の事をずっと見学していた。
それからも何度かバレー部の見学に行って北村の事をずっと見ていた。他のバレー部員から変な目で見られているけど…そういう目で見られるのは慣れてるから気にしてない。
多分…俺は北村に惹かれているのだと思う。クラスでは見られない北村の凛々しい表情。よく通る声。胸のボール。北村の全てが魅力的に感じるのはきっと…
1学期の時はずっと北村の事を見学していた。夏休みに入る直前くらいには北村と会話をするくらいの仲になっていたが…他のバレー部員からは変質者みたいな目で見られている。もうすぐ夏休み。部活に入っていない俺は学校にくる理由が無い。というか、きたら多分、追い出される。帰宅部が夏休み中に学校をウロウロしてたら怪しいもんね。
夏休み中は北村成分が足りなさすぎて暴走していた。頭の中はもう北村の事でいっぱいだ。雑誌の水着姿のグラビアアイドルとか見ても北村の顔に脳内変換されてしまう。北村のボールでドリブルしてぇ。
そんな感じでずっと悶々としていた。宿題は既に終わっている。溢れ出るリビドーを勉強で発散…出来なかったけど、煩わしかったからさっさと終わらせた。
夏休み明け…クラスで北村の顔を見た時に俺は告白する事を決意した。夏休みの間、ずっとお預けされてたんだ…もう我慢できない…。俺は北村を屋上に呼び出した。
「夏休み前から好きでした!俺と付き合って下さい!」
「…え?」
「バレーをしている時の北村の凛々しい表情に惚れた。クラスで見る落ち着いた雰囲気に惹かれた。お願いします!」
「…うん。私で良いなら…宜しくお願いします」
「よっしゃー!」
今なら飛ぶ事すら可能な気がする。試しに飛んでみようかとフェンスをよじ登ろうとしたら北村に止められた。
「平野君!何してるの!?」
「…ごめん。嬉しすぎて…つい…」
怒られてしまった。深呼吸して少し落ち着こう。すーっ…はーっ…無理だな。落ち着かない。
「え、え~っと…北村さんの事…名前で呼んでいいかな?」
「…うん。私も雅明君って呼ぶね」
この日から俺と弥生は晴れて恋人になった。
平日は部活があるから弥生との時間はあまりとれない。休み時間は弥生とずっと話をしているけどその程度じゃ全く足りませんから。仕方ないのでずっと見学している。弥生の事ばかり見てたら怪しいかな…と思って体育館の隅っこで教科書を読んだりしている。
「平野…邪魔なんだけど…」
「俺の事は空気だと思ってくれ」
相変わらず弥生以外のバレー部からは変な目で見られている。でも…部活が終わった時に…
「雅明君。お待たせ」
この一言で他の女子からどう思われても構わないってくらい幸せな気分になれる。ベタ惚れっすわ。
そんな感じでずっと弥生と一緒にいると徐々に周りの視線が変わっていった気がする。
「平野。また弥生を見に来たの?」
「イエス。むしろ弥生しか見えない」
「はいはい。程々にしときなさいよ。アンタが来ると弥生が張り切りすぎちゃうんだから」
程々ってなんだろう。まだ手しか繋いでませんけど?バレーのせいでゴツゴツしてるとか弥生は言ってたけど…凄く良かったです。たまらん。ずっと握ってたくなるくらい好きだ。
今日も弥生は胸のボールを弾ませながら動き回っている。あれはいい物だ。見飽きる事が無い。許されるなら撮影して一日中見ていたい。バインバイン。
「雅明君。お待たせ」
ちょっと考え事をしている間に弥生は帰り支度を終えたようだ。学校を出て2人になると自然な感じで手を繋いでくれる。この瞬間が堪らなく好きだ…
冬。冬休みに入った。世間ではクリスマスという日らしい。父さん達にゲームソフトを強請る日だな。今日は弥生とデートだ。恋人ならクリスマスに会わなきゃいけない。会わないと浮気されるってエロ本に書いてあったからね。
デートか…そろそろ次の段階に進むべきじゃないだろうか。いや、手を繋ぐだけであんなに幸せな気分になる事を考えると…キスはまだ早いか?むむむ…
「雅明君。どうしたの?」
「何でもござらぬ」
俺は待ち合わせ場所の1時間前に来ていたはずだが…時計を見るとまだ40分ある。
「早すぎたかなって思ってたけど…雅明君がもういたから驚いちゃった」
「待つのは好きなんだ」
妄想が捗るので。さて、デートに行こう。といっても本屋に寄ったり喫茶店に寄ったりしてから弥生を家に送るだけ。映画とかも考えたけど…今日は人が多そうだったからやめた。
まずは本屋から…2人でいろんな本を見る。弥生はラノベとかが好きらしい。俺は漫画と写真集。グラビアとかじゃないよ。犬とか猫の写真集。ウチは動物を飼えないからこういうので我慢している。
「雅明君。買いたい本はあった?」
「この猫のあざとさがたまらない」
不思議そうな顔をして小首を傾げている。これは金になるぜ…俺が買うからな。積み上げてある写真集の2冊目をとる。1冊目は見本だからね。
弥生もラノベを10冊くらい抱えていた。
「大漁だね」
「新刊が溜まってて…休みだから読めるかなって」
ちょっと恥ずかしそうな顔も可愛い。こんな可愛い顔されたらキスとか絶対無理。神々しすぎて溶けちゃう…
2人で会計を済ませて喫茶店へ。女の子に10冊の本を持たせたまま移動するとか心苦しいので頼み込んで持たせてもらった。
喫茶店で買ったばかりの写真集を2人で見ながらまったりとした時間を過ごす。
「可愛いね~。ウチにコーギーならいるけど猫もいいなぁ」
「なん…だと…?」
コーギーだと?あのなんかちっちゃい利発そうでありながらもなんかぬけてそうな感じが愛らしいワンコですか?
「ウチの中で飼ってるんだけど…今度、見に来る?」
「是非」
ヤバい。コーギーは好きなほうだったけど…弥生が飼ってるってだけで好きな犬ランキングのトップになるわ…
猫の写真集を見ながら犬の話をしまくった。弥生の飼ってるコーギー…めちゃくちゃ楽しみだ。
ほくほくしたところでもう夕方になっていたので弥生を家まで送る。俺の家からは徒歩で40分くらいかかるけど…歩いていける距離だ。もっと離れた場所から電車やバスで学校に来てる奴もいるからな~
弥生の家の近くに着く頃にはもう真っ暗になっていた。…プレゼントを渡さなきゃ。
「弥生。メリークリスマス」
「ありがとう。私からもメリークリスマス」
お互いのプレゼントを交換した。…中身が気になって仕方ない。
「開けていいかな?」
「うん。私も開けるね」
弥生からのプレゼントは…マフラーだった。マフラーか。巻いた事無いな。
「どうやって巻くの?」
「巻いてあげる」
弥生にマフラーを渡す。首に巻くから…距離が近いのはわかってたけど、これは心臓に悪い。目の前に弥生の顔がある。
弥生はマフラーを巻き終えたのに離れてくれなかった。俺の顔をジッと見て…顔を更に近付けてくる。これは…そういう事なのか?
俺と弥生はクリスマスに初めてのキスをした。凄かった。頭の中が真っ白になった。俺の体の全ての神経が唇に集まったかのように錯覚するくらい…弥生とのキスは気持ち良かった。
「………」
「…何か言って欲しいかも…」
「生きてて良かった…」
「それは言い過ぎだよ…でも、私も凄く嬉しかったよ」
女は性格と顔と胸だけだと思っていたが…唇も大事なんですね。新しい世界が開けた気がする。
俺が送ったのはシルバーのブレスレット。そんなに目立つデザインじゃないから…弥生も付けてくれるかと思ったんだ。
弥生の腕に付けてあげた。冬の厚着の時じゃほとんど目立たないけど…弥生はとても喜んでくれたよ。
弥生の家の前でちょっとだけお喋りして帰った。名残惜しいけど…良いクリスマスだったな。
初詣も弥生と一緒に行った。去年の俺は…カップ麺の年越しそばを食べて、友人達と合格祈願に来ていたな。まさか1年後にはこんなにリア充になれるとは思ってなかった。
今年の願い事なんか決まっている。
弥生と一緒に楽しく過ごせますように…
おみくじを引いたら2人とも末吉だった。去年は大吉だったな。きっと弥生との出会いで運が尽きたんだろう。
「雅明君。今年もよろしくお願いします」
「こちらこそ。今年もよろしくお願いします」
いつものように弥生を家まで送り、家にお邪魔させてもらった。弥生のお父さんはちょっと怖かったけど、お母さんは優しそうな人だった。
コーギーは気付いたら俺のすぐ傍にいた。…俺の知ってるコーギーじゃない。体が丸太みたいなんですけど…ムチムチじゃないパツパツしてる。
撫でてやるとお腹を見せてきたが…丸太みたいだからコロコロと左右に動いてた。なんだろう。なんか違うけどめちゃくちゃ可愛い。…コーギーってこんな感じなの?写真でしか見た事ないからわからない。
「コータはお散歩が好きだけど…あまり歩けないの。よく食べるから健康だとは思うんだけどね…」
「これは最早新種かもしれない…可愛い」
弥生と2人でコータを撫でまくった。至福の一時でござった…
今日は早めに帰る。元旦だからね。家族の時間も大切にして欲しい。ウチの親は多分、まだ寝てる。居間がめちゃくちゃ酒臭かったからな…
「雅明君。また遊びに来なさい」
「弥生の事、よろしくね」
「はい。また来ます。ありがとうございました」
玄関まで見送ってくれた弥生の両親にお礼を言って帰路についた。…今年は良い年になりそうだな。
冬はのんびりと過ごした。いつものように弥生の部活を見学している。運動部は凄いよね。こんなに寒いのに動き回っておられる。
…ずっと見ていた俺にはわかる。弥生のボールが少し大きくなっている事が。バインバイン。
俺の優れた観察眼によれば弥生のボールはバレー部の中でもトップクラス。俺の彼女のスペック凄い。
「相変わらず熱心だね」
「24時間見ていたい」
「アンタ…弥生一筋だと知らない相手にそれ言ったら追い出されてるよ…」
「ごめんなさい。追い出さないで下さい」
「まあ、私はいいけどね。弥生も明るくなったし…」
そうなのだろうか?付き合ってからはよく笑ってくれていた気がするけど…
「平野の馬鹿が移ったのかもね」
「それは困る」
「冗談よ。アンタ達、お似合いだからさ…仲良くやりなよ」
「ああ。頑張る」
バレー部の同級生…名前は覚えていないけど、いい奴っぽいな。
その日もいつも通り弥生と一緒に帰った。来年度から新しいコーチが来るそうだ。ウチのバレー部はなかなかの強さらしい。
来年度か…クラス替えは無いから弥生とはまた同じクラスだ。2年になっても弥生と楽しく過ごせたらいいな。
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