真  同窓会

 幸司は同窓会。美咲さんの事は心配だけど…永井さんがいるから大丈夫だろう。

 私は永井さんのアパートで生まれたばかりの紅葉ちゃんを抱かせてもらっている。可愛い。やっぱり私も子供が欲しい。


 「紅葉ちゃん…可愛いね~」


 「私の子供だからね」


 確かになんとなく環に似てる気がする。将来は美人になるのは間違いなさそう。


 「真達はまだ結婚しないの?」


 「う~ん。結婚式の資金だけならもうすぐなんだけど…」


 「…結婚してすぐに子供が欲しいから蓄えておきたいってところ?」


 「うん。幸司の収入だけでも生活の維持は余裕でできるけど蓄えが無いと不安だからね」


 「早くしてよね。できれば男の子で」


 「簡単に揺らいじゃうからやめてよ…」


 紅葉ちゃんを抱きながらだと本当に欲しくなるから困る。


 「永井さんも溺愛してそうだよね」


 「ええ…凄いわよ。毎日キスしてるわ」


 気持ちはわかる。私も自分の子供だったら一日中ほっぺにキスしてそう。


 紅葉ちゃんを抱きながらデレデレしていたら幸司から電話があった。もう終わったのかもしれない。


 電話から聞こえてくる幸司の声…強がっていつも通りみたいに振る舞っているけど…泣いているように聞こえた。アパートで待っていると伝えて電話を切った。


 「環…ごめん。今日はもう帰るね」


 「幸司君に何かあったの?」


 「うん。早く帰って幸司を出迎えてあげなきゃ…」


 「わかったわ。また来てね」


 「うん。また来るね」


 私はすぐにアパートに帰った。外は寒い。部屋の暖房も入れておかなきゃ。幸司はきっと身も心も凍えているから。

 

 幸司は帰ってくると私に抱き付いて泣き始めた。幸司を慈しむ気持ちと幸司を傷つけた者への憎悪が私の胸をグチャグチャにする。

 私と知り合う前に付けられた傷…5年以上かけても癒えない傷が幸司を泣かせている。私にできる事は幸司を支えてあげる事だけだ。こんな状態になっても私を求めてくれる幸司が愛しくてたまらない。

 過去の傷なんて気にならなくなるくらい私を求めて欲しい。

 美咲さんの事なんか忘れて私の事だけを見て欲しい。

 私の事だけを考えて…私だけを愛して欲しい。

 思いっきり泣いて。思うままに求めて。私でいっぱいになって。いつもの幸司も大好きだけど…私に泣きながら縋ってくる弱い幸司も大好きだよ…




 その日から2年後に私達は結婚した。お父さんへの手紙を読み上げる時…あれって本当に泣いちゃうんだね。しゃくり上げながら最後まで読み上げたけど…伝わったかわからない。お父さん達も泣いてたから…

 式の途中で紅葉ちゃんに笑顔でおめでとうって言われた時に私の中の我慢が限界に達してしまった…初夜は凄く頑張りました。


 結婚して半年。やっと…やっと妊娠できた。環が言っていた事は正しかった。男は泣きながら止めてって言っててもまだ頑張れる。幸司が泣くまで毎晩励んだ成果だ。

 産休をとって日に日に大きくなっていく気がするお腹を撫でながら愛する夫の帰宅を待つ。妊娠してからは私の両親や幸司の御両親も頻繁に遊びに来るようになった。たまに私の妹や永井さん一家も来てくれる。


 最初はただ…幸司に必要とされたいだけだった。きっと普通の恋人みたいに付き合えていなかったと思う。

 それでも幸司は私を愛してくれた。私も幸司を愛した。幸司と付き合い始めてから凄く満たされていた。

 今は優しい人達に囲まれて充実した日々を過ごしている。きっと、誰が見ても私達は幸せに見えるだろう。


 今日も愛する夫が帰ってきた。何時ものように笑顔で出迎える。


 「お帰りなさい」


 お互いに支えあっている私達だから…この先もずっと寄り添っていけると思う。

 だからきっと…この幸せはずっと続いていくだろう。支えあっていく限り…

 


 

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