真 社会人
幸司の地元に住む事になった。私は幸司の御両親となら同居してもよかったんだけど…幸司は実家に住む事…近付く事すら嫌がった。実家の隣が元カノの実家だからって。…それは仕方ない。車で数分の場所に住むのも御両親の事を考えてかなり譲歩したのだと思う。
働き始めた頃は大変だったけど…最近は落ち着いてきた。私のほうが帰るのが遅いからいつも幸司がお帰りって出迎えてくれる。
今は結婚式の資金を貯めている。2人で式を挙げて両親を安心させてあげたい。私と幸司の最初の目標だ。…子供が欲しいけど、結婚するまで我慢する。
永井さんが奥さんの環さんを連れて遊びに来た。環さんはゆったりした服を着ているけど、妊娠しているのがわかる。
環さんは少し話しただけでとても話しやすい人だとわかった。環って呼ぼう。
幸司の元カノの美咲さんについての話。私は経緯は聞いたけど詳しくは知らない。美咲さんは地元にいるそうだ。今までは関わる事は無いと思っていたから気にしていなかったけど…美咲さんの事を知らなきゃいけない。
2人が帰る時に環と連絡先を交換した。
今度、永井さんに聞きに行こう。美咲さんについての詳しい話を…
幸司が休日出勤している時に永井さんのアパートに遊びに行った。幸司にはちゃんと環に会いに行くと伝えてある。環経由で永井さんに美咲さんの事を教えて欲しいとお願いしたらあっさりと承諾してくれた。
永井さんと環と私。お土産に持ってきたお菓子を広げながら話をした。
「真さんは加納の何が知りたいのかな?」
「私が知っているのは美咲さんが幸司の幼なじみで…高校の時に恋人だった幸司を裏切ったって事だけなんです。幸司を傷つけると思ったので詳しく聞いてないので…」
「私のほうが真より詳しいのかもね」
「そうだな。藤本の事もあるから環のほうが近い位置にいるだろう」
「藤本?」
「幸司から加納を奪った男だよ。…環を無理やり襲おうとした男でもある」
「…自分勝手な最低な男よ。顔が良いから女は自分に惚れるって勘違いしてたわね」
「詳しく…教えて下さい。幸司の事で蚊帳の外なんて嫌です」
「ああ。わかった」
美咲さんは高校3年の夏休みに藤本と関係を持ち、夏休み明けに教室で幸司を捨てたそうだ。幸司はその時から酷い状態になってしまったって…大学で会ったのは10月くらい。1年以上もあんな状態だったのね…
永井さんと環は藤本と同じ大学だった。環は藤本にしつこく言い寄られていたそうだ。
「藤本は大学の中でも何人もセフレを作ってたわ。私は地元の子から悪評は聞いてたから騙されずに済んだけどね」
「藤本って人は美咲さんの事もセフレ扱いだったんですか?」
「環がセフレを何人も作っているような男なんか嫌いって藤本に言ったら…藤本は女を全て切ったらしい。加納も含めてね…」
「その後に約束通り女は全て切ったから俺と付き合えって言われたの。そんな約束してないから。セフレを何人も作ってる男と付き合うとか無理って意味で言ったのよ。セフレを切ったからって何も変わらないでしょ?」
「…なんとなく…私の元カレと似てるかもしれない」
「真…幸司君を手放しちゃダメよ?」
「うん。絶対に離れないよ」
「まあ…目論見が外れた藤本は激昂して環を襲おうとしたんだが…」
「危ないところを明弘が助けてくれたの。格好良かった…惚れたわ」
「永井さん…ヒーローですね」
「藤本が怪しい動きをしてるって聞いてね。切られたセフレの事も聞いてたから何かやるかもって警戒してたんだ。環を助けられたのは偶然だけどね」
「藤本は婦女暴行未遂で退学。被害届も出したから捕まったみたいだけど…もう出てきてるわね」
「はあ…怖いですね」
「藤本は敵が多いから…どこかで見かけたら情報は入ってくるよ。地元にはいるみたいだけど大人しくしているみたいだ」
「次に捕まったら再犯だからね。下手に動けないだけじゃないかしら?」
「写真とかあったら見せて欲しいです。環が危ないかもしれないなら私も協力します」
「ああ。後で環に送ってもらうよ。さて、かなり話は逸れたけど加納の話だったね」
「はい。藤本の話も聞けて良かったですけど…美咲さんの事も知りたいです」
「加納は藤本に切られてから…幸司と連絡をとろうとしていたみたいなんだ。高校の時の知り合いから連絡先を教えて欲しいと言われたって聞いた」
「…復縁狙いですか?」
「おそらくね。俺の独断で知り合い連中には絶対に教えるなとお願いしてある」
「ありがとうございます」
「大学を出た後は地元を離れていたみたいだけど…最近になって帰ってきているのがわかった。加納の友人からの情報だから間違いない」
「永井さんの人脈って凄いですね…永井さんと幸司は長い付き合いなんですか?」
「俺は高校に入学した時に友人が誰もいなくてね。最初の友人になってくれたのが幸司だったんだよ」
「なるほど…」
「真さん。加納は多分…まだ幸司の事を諦めていないと思うんだ。もし幸司がまたあの女に傷つけられたら…支えてあげてほしい」
「…もちろんです。幸司を支えるのは私の望みですから」
「真。元カノなんかに負けないでね」
永井さんに話を聞きにきて良かった。…永井さんが女だったら美咲さんより強力なライバルだったかもしれない。
アパートに帰って幸司の帰宅を待った。今日は思いっきり甘えたい気分だから。美咲さんの事は気になるけど…何かあったらすぐにわかる。その時まで気にしないでおこう。
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