美咲 学生時代
私には幼なじみがいる。物心ついた時から一緒にいた隣の家の神山 幸司。ぶっきらぼうだけど優しいコージはいつも私を助けてくれた。
高校1年の時にコージから告白された時は運命だと思った。私も告白しようと思っていたから…
それから高校3年になるまでは仲良くやっていたと思う。高校の受験の時からずっとコージに勉強を見てもらっているから人並みの成績は維持できていた。コージがいないと赤点だらけだったと思う…
高校3年になってからは大学受験の為に勉強漬けの日々だった。勉強が大事なのはわかるけどさ…もうちょっと手加減して欲しい。私だってコージと同じ大学に行きたいとは思うんだけど…勉強は嫌いなのよ…
夏休み前にコージに内緒で友人達とカラオケに行った。たまにはストレス発散しないと
爆発しちゃうからね…
カラオケには隣のクラスの男子も参加していた。確か…藤本君だったかな?いつも女の子と一緒にいる人。確かに格好いいとは思う。
「加納さん。歌上手いね。俺と一緒に歌わない?」
そう言って歌を選ぶ。少し古い歌だけど…誰でも聴いたことがある歌だ。多分、誰でも歌える曲を選んだんだろうな。
藤本君と一緒に歌を歌った。デュエットなんかした事なかったな。コージは歌を歌うのが好きじゃないからカラオケは一緒に来たことが無いし…思いっきり歌えたから楽しかったな。
「加納さん。今度またカラオケに行こうよ」
「うん。いいよ」
藤本君とまた遊びに行く約束をした。その日は連絡先を交換して解散した。
家に帰ってコージからのメールを確認する。…いつもいつも勉強の事ばっかり。私だって頑張ってるのに…
私はコージみたいに頭が良くないんだから仕方ないじゃない…
誰かに愚痴を聞いて欲しかった。でも…クラスの友達に言ったらコージにまで伝わっちゃうかもしれないから避けたい。
藤本君なら聞いてくれそうだな…
そう思って藤本君に連絡した。時間は遅かったけど…藤本君は電話で私の愚痴に付き合ってくれた。電話を切る時に…2人で会う事を約束した。
学校が終わって藤本君と待ち合わせをしている。コージに見つかると何を言われちゃうかわからないから。…いけない事をしているみたいでワクワクした。
その日は遅くまで藤本君と遊んだ。コージとまったく違うタイプの男の人。コージの事は大好きだけど…グイグイと引っ張ってくれる藤本君の事も好きになってしまった。
夏休みに入った。学校が休みなのに勉強漬けの毎日とか…考えるだけで嫌になる。…こういう時は藤本君と遊んで気晴らしするのが一番だよね。電話で誘うと藤本君はすぐに会いたいと言ってくれた。
最近は、藤本君も私の事を好きだと言ってくれる。言われる度に私の中の天秤が藤本君に傾いていくのがわかる。コージは好きだとか可愛いとか言ってくれないから…
夏休みに入ってコージと勉強をしていない。勉強が嫌いなのが一番の理由だけど…コージに会うのが怖かった。藤本君に惹かれ始めているとバレてしまいそうで…
藤本君にその事を話すと
「…俺に乗り換えたら?」
「乗り換える?」
「神山と別れてさ…俺の女になってくれよ」
「藤本君の女…」
「ああ。俺なら美咲の嫌がる事なんかさせたりしない。神山は美咲の事なんか何とも思ってないから勉強ばかりさせようとしてるんだって」
そう…なのかな?コージは私の事をもう何とも思ってないの?
「…俺のほうが美咲の事が好きだと思うぜ。美咲も俺といるほうが楽しいだろう?」
「…うん。藤本君といるのは凄く楽しい」
私は藤本君と遊んでいるほうが楽しい。コージと勉強ばかりするのは嫌だ…
「藤本君の…女になる…」
「神山とは別れるんだな?」
「…うん。コージとは別れる」
「美咲、今日からお前は俺の女だ」
「…うん」
…これでいいんだ。私は勉強から逃げたい。コージと会いたくない。…だから藤本君の女になって…楽しい事ばかりしていたほうが幸せなんだ…
夏休みはもう半分終わっていた…
藤本君に誘われるがまま毎日のように遊んだ。日中はカラオケやプール…夜はホテル…コージとしたセックスのほうが気持ち良かったけど…藤本君のセックスも気持ち良かった。
夏休みが終わる頃には藤本君への愛情しか残っていなかった。彼は最高だ。楽しいし…コージはあまりしてくれなかったセックスも毎日のようにしてくれる。抱いてくれている時に何度も可愛いとか好きだとか言ってくれる。
…コージは言ってくれなかった。藤本君が言うように私の事なんかどうでもいいんだ…
夏休み明け…自分のクラスで遊びに来た藤本君と話しているとコージに話しかけられた。まだ別れてなかったから丁度いい…別れよう。
「コージ。私と別れて。私、藤本君と付き合うから」
「…は?」
「は?じゃねぇよ。夏の間に美咲は俺の女になったんだよ。わかったら2度と近寄るなよ」
藤本君は皆の前で私との関係を言ってくれた。嬉しくてニヤけちゃいそう…
「おい…待てよ…」
「コージ。ウザいから消えてくれない?」
私の事なんか何とも思ってないくせに…そんな顔しないでよ…
コージは永井君に連れられて教室を出て行った。コージを連れて行く時に永井君が私の事を凄い目で睨んできたけど…なんであんな目で見られなきゃいけないのよ…
コージと永井君は昼になっても教室に帰ってこなかった。クラスメイト達の視線が痛い…なんなのよ…
私は藤本君のクラスに逃げた。あんなクラスになんていたくない。どうして私は藤本君のクラスじゃなかったんだろう…
その日の帰り際に見たコージの顔は…今までに見た事が無いくらい酷い顔をしていた…
流石に心配になって声をかけようとしたけど…永井君やコージの友人達に睨まれて近付く事すらできなかった…
それからの高校生活は辛かった。勉強漬けの毎日なんか可愛く感じるくらいに…
クラスではコージの姿が嫌でも目に入ってくる。コージはまるで人が変わってしまったみたいだった。ずっと勉強しかしていない。永井君達が話しかけないと誰とも話そうとしなかった。そんなコージを見たくなくて休み時間はいつも隣のクラスに逃げていた。
…私が悪いのだろうか…?あの日からおじさんやおばさんも私を避けるようになった。お母さんにも…コージの家とは関わらないように言われた。
大学は近くの大学を受けた。夏からの学力の低下が酷くてここしか入れなかったからだ。お父さん達は何も言わなかった。
藤本君…晃は近いけど違う大学に通っている。永井君とかが通う大学。それなりの学力がないと入れない大学だ。
晃とは大学に入ってから会う機会が減った。たまに思い出したように呼び出されるけど…そんな時はホテルで体を求められるだけだ。あの頃のように遊びに行く事もなくなってしまった…
大学2年のある日…晃から別れを告げられた。
「本気で惚れた女が出来たんだが…その女はセフレとか嫌いなタイプなんだよ。だからお前はもういらない」
「いらないって…」
「え~っと…誰だっけ?…ああ。神山とまた付き合えばいいじゃん。応援してやるよ」
「そんな事…できる訳ないでしょう!」
「あ~。やっぱ無理だよな?まあ、お前は可愛いから男なんかすぐに見つかるだろ?」
「……なんでそんなに簡単に…」
「お前だって神山を捨てて俺に簡単に乗り換えただろう?」
…この最低な男は…あの時の私だった…
「…わかった。もう私に関わらないで」
「ああ。お前の体は好きだったけど…飽きてきたからな。もう誘わねぇよ」
本当に最低…こんな奴と同じ事をした私も…本当に最低だ…
ただ大学に通うだけの日々。家に帰るとコージの家が見える。…隣だもん。忘れられる訳が無い。晃と縁を切ってから…コージの事を考える時間が増えた。
コージと連絡をとりたくて高校のクラスメイト達に連絡してみたけど…誰も教えてくれなかった。
…永井君なら知ってるだろうけど…私は彼から恨まれている。教えてはくれないだろう…手詰まりだった。
大学生活はコージの事だけを考えて過ごした。自分の愚かな行いを後悔しながら…
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