第59話 いきなり、ラスボス!?
◼
金貨100枚貯まりました~!
大変だった~。3ヶ月質素倹約して、パーティー用の貯蓄が満足いく金額になったので、カインから財布を返してもらえた。
美嗣個人の貯金も貯まったので、早速買い物をしよう!李州へ向かい、前に立ち寄った宝飾店に入る。
「どうどう?」
「とっても綺麗ですね」
「えへへ!やっぱ李州といえば
緑のピアスに満足した美嗣は次の目的地へ向かう。それは蓬国のダンジョン『地塊の庭』に挑戦すること。実はダンジョン周回もカインに禁止されていた美嗣。
装備の獲得なんて大した金にならない趣味の範囲。この度解禁されて装備厳選ができるようになった。
李州を更に北上して、川を渡り、山岳の入り口まで来た。『地塊の庭』に入り、
美嗣が蓬国に来たときに最初に襲われた魔物。岩モチーフの魔物なので防御力は高く、シールド持ちなので削るのに時間がかかる。だが、丸まって体当たりしてきた時に盾で防ぐと逆にダメージを食らうのだ。
盾キャラがいない場合は避けて、目を回している時に叩けば案外簡単に倒せる。美嗣はパーティーに盾キャラがいないので、回避しかできない。シールダーを仲間にしたいのだが、やっぱ推しパで組みたいから、不利な編成でも我慢する。
「神力を与えよう」
「みんなの神力を、あなたに!」
「風刃よ!切り裂け!」
3体の玉塊を上手いこと誘導して、カインの奥義を当てることができた。計45200ダメージが入る。モンスターがいなくなり、宝箱を開ける。
悠久の夢、不老の実、緑園の光が手に入った。外に出てステータスを確認すると、3つともオプションがいいものだった。
「おお!蓬国初ダンジョンでいいの出た~!」
これも金緑石のお陰だと喜んだ瞬間、美嗣達の体は宙に浮く。けたたましい轟音と共に地面に叩き付けられ、上下に揺れる地面に耐える。今まで体感した中で一番大きな地震だった。数秒間揺れは続き、ようやく収まった。
「みんな大丈夫?」
「はい、大丈夫です」
「まだ少し揺れてるな」
カインの察知通り揺れは止んでおらず、規則的なリズムを刻み、だんだんと近づいてきている。揺れる木々の間から現れたのは巨大な山羊であった。
正確には体の下半分は山羊、尾は蛇、上半分は人の半身に右手に宝剣、左手にに
「とととっ、と、
おいおいおいおいおいっ!
いきなりラスボスは洒落にならんてっ!プレイヤーの心折りに来とるんか!
強大な妖魔に気圧され唖然とする美嗣達。李州に来た時の地響きは全て
「どうするんだ!ミツグ!」
「どうするってぇ、にぃげるんだよぉぉ!」
パロでもギャグでもなくて、ガチだ!
逃亡一択!こいつはダウンとる事も今のパーティーでは無理ゲー、いや死にゲーだもの!四人で全力疾走する。まだ
だが、饕餮の一本の腕が持っていた
地鳴りが一歩一歩と近付き、前肢に踏みつけられそうになった時、盾を持った兵士がシールドを張る。
「
岩のシールドが衝撃波を防ぎ、更に四人やって来て防護壁を作る。茶と緑の鎧は州師李軍の証。李州を護る兵士達だ。堅固な壁を作った後、一人の州師が檄を持って
「大樹は倒れぬ!」
地面から樹木が生え、饕餮を怯ませ足止めする。その間に美嗣達は州師に支えられながら、撤退することができた。李軍の兵舎まで戻り傷の手当てをする。
「あなた達が北の秘境に向かったと聞いて、呼び戻しに参ったのです。
美嗣達は李軍の人達に何度もお礼を言った。彼らが機転を利かせて様子を見に来てくれなければ、美嗣達はジ・エンドであった。『地塊の庭』の周辺は
手当てが済んで戻ろうとした時、アリアナが緑の石を拾う。
「ミツグさん、石が取れてしまっています!」
「ふぇ!うそぉ!」
それは買ったばかりの金緑石の耳飾り。幸運のお守りが壊れた事で運気の暴落を実感し、愕然とする。
「おや、飾りが壊れてしまったのですか?」
甲冑を着た武人が話し掛けてきた。灰色かかった茶髪と顎髭。青緑色の瞳。柔和な笑顔が人を朗らかな気持ちにさせる。
「連結の輪が外れてしまっただけでしょう。すぐに直せますよ」
彼は兵士に工具を持ってこさせ、新しいリングで繋いで溶着した。彼は元通りになった耳飾りを美嗣へ返す。
「ありがとうございます!」
「いえ、金緑石は李王様を象徴する石ですから、きっとあなた達を護ってくれます。
"天は我らと共にあり"……」
そう言って微笑む彼の右耳にも金緑石の耳飾りが揺れていた。州師に送られて美嗣達は李州を後にする。
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