第38話 アリアナ攻略完了


 神父とギレム卿は騎士団に連れていかれた。美嗣が撮った写真を提出するまでもなく、今回の件とシスター長の証言で彼らの悪事は暴露された。今まで証言出来なかったのは被害を受けたシスター達が白い目で見られるのを怖れたからだ。だが、こんな大事件が起こったのに黙っている事は出来なかった。


 教会の西側にある薔薇園にシスター長のイリスは立っていた。この庭だけは彼女がずっと手入れしていたから、美しい花が咲いている。青い薔薇は神の祝福。自分にはもう、神の加護を受ける事も神を崇める事も赦されない。アリアナはイリスに声をかける。


「私はシスターを辞める事にしました。何人かの者も辞職をする予定です」

「誰もいなくなるのですか?」

「数人は残りますが、新たな神父とシスター長が選ばれるまでは大聖堂は閉鎖となりました」


 アリアナは申し訳なくて謝罪したが、イリスの方が深く懺悔した。アリアナやシスター達を守らなかった事に。


「もっと早くこうしていれば、良かった。貴女が祈りの塔から逃げ出した時に目が覚めていたのに、私は行動できなかった。僅かに残っていた威光を失いたくなかったから……。

でも、全て終わりました。

教会への信用は失墜しましたが、不浄が蔓延るくらいなら、全てなくなった方がいいでしょう」


 イリスは最後に大聖堂を見上げた。聖母に対する罪悪感だけが心に残っていたが、自分には贖罪すら叶わない。イリスは一本の杖をアリアナに渡す。


【聖光の導き レベル90 攻撃力452 体力55.6% スキルを当てた時、治癒力+20%。奥義を使ったとき体力+20%、10秒継続】


「貴方に託します。信仰のためではなく、この国の人々のために使って下さい」


 イリスから武器を受け取り、アリアナは彼女を見送った。近くで様子を見ていた美嗣は、閲覧でアリアナのステータスを確認する。


……

1凸 体力+25%。奥義を使った時、体力が80%以上ならチーム全員を+30%回復できる。

……


「よし!聖光の導き、ゲットー。それに1凸いただきました~!」


 美嗣は喜びながらアリアナに抱き付く。体を密着させ、そのまま柔らかい胸を堪能し気色の悪い声を出していると、アリアナも美嗣を抱きしめてきた。


「ミツグさん……、私、ミツグさんの一番じゃなくてもいいです」


 美嗣は顔を上げてアリアナと目線を合わせた。


「これからの人生は聖母アニエル様ではなく、あなたに捧げます。ですから、私の事もちゃんと見てくださいね」


 なに、なにこれ?告白された?

 アリアナって意外と重い女?

 見つめてくる目がガチなのにビビりながら、気圧される美嗣。アリアナは恍惚の表情を浮かべ、美嗣にキスをした。呆気に取られている美嗣をアリアナは自分の胸に抱く。


 ふえぇぇぇ!これは完全に百合ルートっ!すごくときめいちゃったぁ!純情な乙女のような気持ちになった美嗣。邪心はなくなり、アリアナへの推し愛でいっぱいになった。



 教会からお暇しようとしたが、レイの姿が見えなかった。美嗣は聖堂の方を覗いてみると、聖母像の下にいるレイを見付けた。祈っている訳ではなく、ただ見上げてるレイに話しかけた。


「お祈りしていたの?」

「妾は偶像を拝まぬ。妾が祈りを捧げるのは『神』のみである」

「聖母アニエルも神様じゃないの?」


 言い伝えによれば彼女が地上に降り立ち、神力を与えた事で人々は力を得て、ローブ王国が誕生した。彼女は神の使いであると共に信仰すべき神でもある。


「神とは平等と博愛の象徴である。故に一種族のみに恩恵を与える存在は『神』ではなく『偶像』と呼ぶ。だが、人には『偶像』が必要だ。そうでなければ支柱を失ってしまう」

「どういう意味?」

「解らずともよい。老齢の戯言だと思え」


 レイちゃんって実年齢いくつなんだろう?閲覧では誕生日は見れても年齢は書いていない。ファンタジーではエルフは長命な一族だから、もしかして100歳?、200歳?、まさか!1000歳とか!いい!私合法ロリとかロリBBAとかも好物です。


 そんな事を考えながら、聖母アニエル像を一緒に見上げる。俯く石像の目尻から涙が滴るように見えたが、気のせいだったと思うことにした。

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