第40話 行きたい国


「ううっ、写真機……どこにもなかったよ~」


 夕食のガレットを食べながら、落ち込む美嗣。部屋中探して、ハウスの中も捜索したが見つからなかった。この前神父の悪事を暴くために使った時には持っていたのに。写真機はローブ王国では手に入らない。


 あれはバラル帝国で作られた機械で、帝国か蓬国でしか入手できない希少品だ。ゲームの中の主人公はたまたまバラル帝国の技師に会っていて譲り受けたものだった。


「ううっ、今すぐバラル帝国か蓬国に行きたい……」

「どっちも遠いな。昔仕事で蓬国へ行ったことがあるが、丸5日かかったぞ。バラル帝国ならその倍以上だ」

「そんなに遠いのかぁ~」


 ゲーム内ならワープで一瞬なのにと考えながら、紛失した写真機を尚更惜しく思う。話題は蓬国の事になった。国から出たことないアリアナはカインの話に聞き入った。


「なんていうか、広大な国だったな。俺は桃州の蓮雲れんゆんって街に行ったんだが、商人で賑わっていたし、奥に見える桃王山と飛天山が圧巻だった」

「いいな!私も見てみたい!その内みんなで行こうよ!」

「蓬国に行ってもいいんですか?」

「冒険者なんだから!冒険しないと!私、他にも行きたい場所ある!スチームパンクのバラル帝国!ケモ耳楽園のスーガ連合国!バイオパニックのスヴャーシ共和国!」

「スヴャーシは無理じゃないか?今だに暴動が収まっていないんだろう?」

「ダメかな~?あとは、シャローム神聖国!」

「シャローム?」

「どこだ?東の果ての国か?」


 カインとアリアナは首を傾げた。もしや、シャローム神聖国って実在しない国?


「聞いたことない?空に浮かぶエルフの国」

「さあ、初耳だ」

「もしかして、お伽話に出てくる国ではないですか?空の果てに魂が還る場所があるそうです。その国では争いもいがみ合いもなく、皆『平和シャローム』に暮らしているそうです」


 美嗣はアリアナの話に驚いた。紹介PVには『シャローム神聖国』はあったのに、この世界の人はその名前すら知らず、空想の国と思っている。それとも、すでに滅んでいる国?不思議に思っていると、レイが急に立ち上がった。


「妾はもう休む」

「え?ああ、お休み。レイちゃん」

「おやすみなさい」


 レイが寝室に行ってしまったので、美嗣達も食事を終わりにした。寝る前にもう一度鞄の中を確認したが、やはり写真機はなかった。



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