第4話 ものは試し
◼
美嗣は見所のない森林を歩いていたが、またも数メートル先に変な物を見付けた。黒色の幹に赤い蕾が数個芽生えている。
『
植物ではなく、植物型のモンスターだ。近付くと花が開いて、炎の玉を飛ばしてきたり、枝が伸びて体当たりしてきたりする。育成素材としてどこにでもいる初級モンスターだ。
折角だから倒してみようと剣をとる美嗣。白亜の記憶の性能を思い出そうとする。
【白亜の記憶 レベル90 攻撃力565、防御力435、攻撃を当てると蓄積率+15%、スキルを当てると10秒間攻撃力+15%】
スキルを回しやすくして、攻撃力も上がる無難な武器。最初は攻撃を当てて、スキル➡攻撃➡スキルでゲージがMAXになったら、奥義を使うという流れで仕掛けよう。
美嗣は烈火花に歩み寄ると、魔物は花を咲かせて威嚇し始めた。最初の攻撃は当てたが花の体当たりを食らう。
ゲーム内なら【防御】と【回避】が出来るのに、実際に戦ってみると反応なんて出来ない。スキルを撃とうとしたが、火の玉の連続攻撃を食らう。
「熱っ!あつっ熱いぃ!」
美嗣は川へ逃げ込んだ。先程から【-68】とか【-138】とかが見えているが、何の数字だろう。そのまま川を渡って反対岸に逃げた美嗣。好きなゲームの夢を見ているのに良いことがない。
熱さと痛みでフラフラと歩いていると、足が地面にくっつき動けなくなった。下を見ると黒い水溜まりが点在しており、立ち止まっていた美嗣はいきなり上へ引っ張られた。
首や右肩を縛り上げられ、呼吸が苦しくなる。見上げると木の幹に黒い粘着物がおり、光る眼をこちらに向けていた。
『
キリキリと締め付けられる中で美嗣はこれが夢でない事を認識した。そもそも夢は体験した事しか見ることが出来ない。美嗣には火傷するような熱さに襲われた事も、失禁しそうなほど絞首された事もない。
本当に夢ではないのなら、このままだと死ぬのだろうか?死が頭に過った時、青白い光が視界に入った。
「風よ!」
辻風のような光が頭上を掠め、檀蝋の本体を切り裂いた。美嗣は地上に下ろされ、息を吸うが意識は朦朧としていた。霞む視界の中で防具を纏った男性が近づき、声を掛ける姿が見えた。
「おい、生きているか!おい!」
あれ~、ゆ~たんの声だ。やっぱいい声だな~。低音ボイスなのに青少年の声が似合うんだよな~。ああ、イケボを聞きながら死ねるなら本望かな~。
そんな事を考えながら、美嗣は意識を失った。
美嗣のイラスト
⬇⬇⬇
https://kakuyomu.jp/users/ki_kurage/news/16817330657570282476
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます