第21話 推し愛は無償のもの!


 3


 今日は休息日である。

 冒険者に平日・休日は関係ないが、休息日に依頼は受けず、個々で自由に過ごす日と決めている。休みの日に美嗣は何をしているのかといえば、家事と掃除である。1週間で溜まった衣服をたらいで洗っていく。アリアナやレイの下着をニヤつきながら洗い、最後にカインの服を手に取る。シャツを顔を埋めて臭いを堪能する。


 これが彼フレグランスかぁ~!前に神領キャラの香水が出たけど、カインは金木犀の匂いだったな~。でも、こっちが本当のカインの匂いだもんね!美嗣はシャツの香りをしばらくスハスハした後、石鹸で洗い出した。


 干し竿に衣類を掛けて、たらいを元の場所に戻し、裏手から中に戻るとカインの声が聞こえた。他に人声も聞こえてきて、誰かと話しているようだった。


「精が出るなぁ、カイン。昨日も南の村で小鬼を倒して来たんだろ?」


 美嗣は調理場からこっそりダイニングルームを覗く。カインの対面に男が二人座って酒をあおっていた。カインはお酒ではなく、ジュースを飲んでいる。同じ冒険者でハウスの住人らしく、胸に下げたランクは銀であった。


「最近、ノってるじゃねーかよ!前は一匹狼で誰とも組まなかったのによ~」

「そりゃ~、あんな美女達と組んでりゃ精力が出てくるよな~!夜の方もお盛んかぁ~、ヒッヒヒッ!」


 酔っぱらい二人に絡まれながら、カインは適当にあしらった。その後も『シスターのでかい胸を揉みたい』だの『冷たい視線の少女を分からせてやりたい』だの下劣な事を吐いていた。


 てめぇら、私のアリアナとレイちゃんを卑猥な目で見てんじゃねぇ!目ん玉くり抜くぞ!聞くに耐えない猥談に美嗣が憤っていると、男達は図々しい頼み事をカインにしてきた。


「てかよ~、俺達もお前のパーティーに入れてくれよ!男女比は平等にしないとなぁ~」

「おっ!いいね~!俺、でか乳聖女もーらい!」

「俺は氷の女王様~!お前にはあの茶髪の女をやるよ~」


 茶髪の女って私の事?


「ああ、あの女はお前にゾッコンだな。もうヤったのかぁ~?頼めば何でもしてくれそうだしなぁ~!」


 うわぁ、私って端から見たらカイン好きがバレバレなのか。だとしても尻軽女扱いは腹立つな。


「止してくれ!俺はミツグをそういう目で見たことは1度もないし、恋愛対象になんてならねぇよ」


 カインのバッサリ切り捨てた言葉に美嗣は少し動揺する。そりゃ推し活は一方的な愛だから見返りなんて求めてないし、カインと恋人になりたいなんて考えた事もない。けれど、完全に脈なしなのも少し堪える。


「それにパーティーの頭はミツグだ。仲間に入りたいのなら彼女に直接話してくれ」


 カインは瓶の中のジュースを飲み干して、銅貨2枚置いて席を立った。奢るからと席に着いたが、彼らに貸しを作るのも嫌なので代金はきっちりと払ったのだ。美嗣は男達が去る音を確認した後で美嗣も調理場を出た。

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