第20話 騎士団は理想的なパーティー


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 美嗣達は協会の依頼で南の村に来ていた。薔薇ばら園が有名な場所で、一面青の地面が拡がる。その畑を荒らすように金剛蜂こんごうばちが群がっていた。巨大な蜂に怯え、羽音に鳥肌をたてながら討伐し終わる。


 美嗣は気分を変えるために薔薇を撮っていると、向こうから人影が近付いてきた。甲冑を着た3人の姿が確認でき、5メートルまで接近すると彼らが騎士団だと判明する。銀と青の配色が入った甲冑に、胸の辺りには青い薔薇が描かれている。聖光騎士のシンボルであり、神の祝福を表すマークである。カインは彼らの姿を見て、眉を吊り上げた。


「何しに来たんだ?騎士様」


 嫌みと悪意を含んだ言葉を投げ掛ける。先頭にいた赤髪の男は無表情なまま、何も返さない。彼は聖光騎士団・団長のガエル。


 大剣武器のアタッカー。加護は炎。1年前に最年少で団長に就任し、騎士団内部に新しい風を呼んでいる改革者だ。

 その後ろにいるのが副団長のクロエ。金髪ポニテの美女。盾武器のサポーター。加護は氷。

 その隣にいるのが偵察隊長のアーシェ。黒髪ボブにカチューシャ。弓武器のサポーター。加護は風。騎士団の最高戦力3人と鉢合わせした。


 ゲームストーリー上でも騎士団とはここで顔合わせしており、ガエルの最初の印象は『両手に花』『ハーレムパーティー』『どっちが本妻?』などと、美女二人と登場したことを弄られていた。副団長のクロエが前へ出て挨拶をする。


「冒険者の依頼で来たのなら、すぐに王都へ戻るといい。ここは危険だ」

「金剛蜂ならもう退治しましたが……」


 アリアナが話している途中で獣の咆哮が聞こえる。それは低い弦楽器の音のようで、姿を見ずとも何の魔物かは想像できた。爬虫類の姿に皮膜ひまくの羽。ヴィーヴィルだ。森の奥から2体こちらに向かって来ていた。


「あれは私達が対処します。あなた達は避難してください」


 竜は他のモンスターよりも体力も攻撃力も高い。レベル60、体力52500、攻撃力1870、防御力980。戦闘中は低空飛行をして爪や尾で攻撃して、エネルギーが溜まると火の玉を吐いて落としてきたり、火の吐息を噴射してくる。中級モンスターに冷静な面持ちで対峙する騎士達。ガエルは赤い刀身の大剣を抜いた。


……

ガエル レベル60

所属 聖光騎士団

誕生日 8月25日

恩恵レベル 2凸

加護  炎

……

武器  竜殺しの剣 レベル90

礼装  闘いの鼓舞 レベル90

装備  月夜の銀章 約束された勝利 月夜の誓い

……

体力  10602

攻撃力 2160

防御力 454

神力  547

加護力 62.1%

耐性力 42.2%

蓄積率 85.5%

練度  112.8%

運   70.1%

……

通常攻撃 レベル6

スキル  炎剣 レベル6

奥義   烈火炎王 レベル6

……


 防御力無視のゴリゴリのアタッカーに仕上がっている。恐らく礼装も防御力を補填する物ではなく、攻撃力アップの物を着けている。防御力が低いと攻撃力の高い敵に一撃必殺されるのだが、それを無効にできるのが副団長クロエの力である。


……

クロエ レベル56

所属  聖光騎士団

誕生日 10月10日

恩恵レベル 1凸

加護  氷

……

武器  氷柱の剣 レベル90

礼装  地の鳴動 レベル90

装備  黎明の鐘 黎明の杯 原初の輪

……

体力  8260

攻撃力 658

防御力 2584

神力  455

加護力 54.2%

耐性力 42.9%

蓄積率 158.5%

練度  21.8%

運   16.8%

……

通常攻撃 レベル1

スキル  屈せぬ想い レベル6

奥義   堅氷の意志 レベル6

……


 防御力がそのままシールド強度に繋がるキャラであり、スキルを使うと12秒間の無敵状態と相手の防御力-15%。奥義で回復もしてくれる万能シールダーだ。最後のアーシェはサブアタッカーである。


……

アーシェ  レベル50

所属    聖光騎士団

誕生日   5月2日

恩恵レベル 無凸

加護    風

……

武器  花環弓 レベル90

礼装  星雲の命 レベル90

装備  原初の輪 原初の芽 原初の羽根

……

体力  7582

攻撃力 1258

防御力 608

神力  470

加護力 38.5%

耐性力 24.8%

蓄積率 32.5%

練度  105.2%

運   65.2%

……

通常攻撃 レベル6

スキル  集積抹殺 レベル3

奥義   風繭 レベル6

……


 弓での追撃とバフを配ってくれるサポーター。奥義で風の塊を3つ生み出してくれ、それに攻撃を加えると塊が破裂してダメージを与える。さらに、この風の塊は当てる加護によって追加の効果を得られるのだ。


 この騎士団パーティーは運営が提示する理想パである。火力の高いアタッカーのガエルとシールダー兼ヒーラーであるクロエ。バフ能力と追撃が可能であるアーシェ。バランスがよく集団戦も単体戦も戦えるパーティーだ。その強さと連携の良さに驚きつつ、美嗣は3人の装備も閲覧した。


 この世界の人は装備に無頓着な者がほとんどだ。武器や礼装は鍛錬して仕上げるのに、装備は着けていない人が多い上に、宝石店で研磨できる事を知らない人もいるくらいだ。


 3人の装備は全てレベル20で、なんなら美嗣が持っている装備よりいいのが揃っている。あの『約束された勝利』超ほしい!


 騎士達の仕上がった強さと連携に見蕩れる美嗣達。竜は最後の一体となり、アーシェの風繭ふうけんにガエルのスキルが当たり、炎の柱が風の塊と反応して、+10%加算されたダメージが竜を絶命される。


 血を撒き散らしながら薔薇の地面へ倒れ、青い花吹雪が舞った。ガエルは剣を納め被害がないか確認する。美嗣達の他にもいつくか人影があり、ガエル達を凝視していた。


 だが、その眼差しには羨望も感謝もない。感じ取れるのは不信と怒りだった。ガエルは蔑視を気にすることもなく、他の騎士達の所へいこうとした。美嗣達の側を通ろうとした時、カインがガエルに声をかける。


「相変わらず、騎士団は嫌われているな」

「……罵られようが嫌われようが構わない。俺は騎士として戦うだけだ」


 ガエルはそう告げて団員に竜の後処理を指示していた。美嗣はカインの顔を覗き込んで訊ねる。


「カインは騎士がきらい?」


 美嗣の問いにカインは答えなかった。カインが騎士団を忌む理由は知っているのだが、今は何も言わないでおく。


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