第19話 レッツダメチャレ!
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ゲームはやはり高ダメージ、オーバーキルを出してこそ快感を得られるというものだ。鋼蜥蜴で自信がついた美嗣は次は中ボスに挑みたくなった。相手は魔窟の主と呼ばれるグーヘルゲであった。早速、討伐に向かおうとしたが、カインが猛反対する。
「盾持ちもいねぇのに大蛇の討伐なんて無理だ」
「このパーティーなら大丈夫!グーヘルゲもいけるよ!」
「いけねーよ」
「いける!」
「いけない!」
しばらくこの応酬が続き、最終的にカインが折れた。というより美嗣が押し通した。彼女は取って置きの奥義を持っているからだ。鋼蜥蜴には使わなかった強奥義を使って、ダメージを計ってみる。
4人は西の森へやって来た。
その山の奥地に棲むグーヘルゲという大蛇の魔物に挑む。レベル60、体力42500、攻撃力1820、防御力980。鋼蜥蜴より硬度は低いが、地中に潜って姿を隠したり、粘液を出して領域を狭めたりする。攻撃もうねうね突進、回転尾っぽ、口からレーザー照射がある。攻撃パターンを覚えるまでは苦戦するが、読めてしまえば強キャラではなく、ダウンもあるので倒しやすい。
それに美嗣はグーヘルゲは何度も倒してきた。カインや他のキャラの素材でもあるので、苦戦しながら倒していた思い出がある。突進攻撃と尾っぽ攻撃が来て、その後は地面へ潜ってまう。3回顔を出すので都度美嗣のスキル攻撃をして、蓄積を溜める。顔を出したグーヘルゲに美嗣は奥義でバフをかける。
……
奥義 神に届く願い 出撃しているキャラの神力を合わせて、+20%をMC(メインキャラ)攻撃力に上乗せする。
……
カインの神力385、アリアナの神力325、レイの神力534510を足して、+20%を攻撃力に上乗せする。
つまり、攻撃力は+642264!
ふっははは!
君は誰の前に立っているのか分かるかね?圧倒的神力の前に塵芥となるがよい!カインは通常攻撃をするが、ダメージは美嗣が期待する数字は出ずにワンパンキルもできなかった。
「あれ、ダメが1416?ふつーじゃない?」
首を傾げる美嗣にレイは1つ知恵を授けた。
「美嗣、妾の神力を当てにしているならば、スキルを再確認した方がよいぞ」
美嗣は閲覧でレイのスキルを見返した。そして、スキルの最後の項目に『他キャラのスキル・奥義の参照に乗る時も数値は【0.00001%】を基準とする』と書いてあった。効果が多すぎて最後まで読んでいなかった。テキストすっ飛ばしはゲームではあるあるだ。
レイの神力534510の0.00001%ということは、神力5でダメが出ていたという事になる。計算し直したら+858くらいだった。それだとカインの攻撃力は1770止まりでダメも1400程度しかでない。
ちょっとガッカリしたが、美嗣のスキル・奥義、レイのスキルは強いバフであるというのには変わりない。
もう一度タイミングを計って攻撃を仕掛ける。美嗣の奥義、レイのスキル、カインの奥義を当てる。倍率102%×【攻撃力2124+神力462×加護力62.8%】練度は乗らなかったが16564のダメージが出た。
グーヘルゲの体力を半分削ったが、粘度のある液体を撒き散らされて、フィールドを狭められた。逃げる場所を断たれ、尾の攻撃を食らってカインと美嗣の体力が3分の1持っていかれた。
アリアナにカインを優先して回復させ、もう一度グーヘルゲが顔を出した時に風漸塊鵬をぶつける。4回の斬撃と最後の斬撃に練度が乗り、計23400のダメージが出た。グーヘルゲは倒れ、スタンパーティーは討伐に成功した。巨大な蛇が倒れる瞬間は、美嗣は受けた傷と痛みを忘れるくらいの興奮を与えた。
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「討伐ありがとうございます。こちらが報酬になります」
美嗣は協会の受付の者から金貨5枚、銀貨15枚、銅貨30枚を貰う。それを両替屋で全て銅貨に替えてもらい、家賃分を残して四人に分配する。カインとアリアナは賃金を受け取るが、レイは頑なに拒否した。物欲のない自分に金品など不要と答える。仕方なくレイの分の硬貨は美嗣が保管して、レイのために使う事にする。
元々自分の給料は推し(メンバー)のために使うんだけど。彼女のために新しい服を買うのもいいし、この前見たかわいい髪止めを買ってあげたい。
美嗣は買い物のついでに鍛冶屋に向かう。ちょくちょく顔を出しては、新しい武器が仕入れられていないか確認する。武器の入荷はなく、鉱石を換金してもらい外へ出た。カインのモチーフ武器である紺碧の剣が売られていないかと、ずっと探しているがどこにもない。モチーフ武器であり、カインの最適武器である武器は本来ならキャラのピックアップと共に来るのだが、どこでガチャれば手に入れられますか?
次に宝石屋に入る。研磨を頼んでおいた装備を預かり、新しく装備を渡し、5個を研磨し30個を研磨の材料とした。夕食の材料を買ってアリアナと料理をする。ベーコンときのこのキッシュを作り、コーンスープを煮込む。ブドウジュースで乾杯して夕食を楽しむ。
眠る前に装備を確認する。約束された勝利は装備するだけで攻撃力+20が付くから、カインに着けたかった。けど、オプションでいいのがなかなか出てこない。加護力・運・練度が出てくる確率は10%~15%と渋いので、厳選の終わりが見えないのである。装備と睨めっこしていたら、アリアナが呼び掛けてきた。
「ミツグさん、まだ寝ないのですか?」
「ううん、もう寝るよ」
美嗣はランプの灯を消して、ベッドへ向かう。すでにシーツをかけていたレイのいる寝具に潜り、カーテンの向こうにいるカインにおやすみを言う。暗くなった部屋を見回すと、レイとアリアナの寝顔、カーテン越しにカインの寝息が聞こえてきた。
推しに囲まれて寝れるなんて幸福だ。もっとみんなを強くするために頑張ろう!
そう考えながら、美嗣は目を閉じた。
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