第13話 聖女をゲットしよう!


 2


 目覚めても憂鬱な気分は消えない。

 今日も自分ができる仕事を見付けるか、所属するパーティーを決められなければ、お金を稼げない。教会の礼装を着て杖を持つ。教会から不当に追い出されてからも身に付けている衣服だが、もう修道女として生きていく事はない。『冒険者』としての生き方に早く適応しなければならない。


 そう決心を固めて冒険者協会に向かう。1階の受付カウンターに着くと、治癒の依頼か必要な物資の調達がないか聞いてみる。治癒の依頼はないがルワール村で紅紫こうし石が足りないという依頼があったが、取ってこられるような素材ではなかった。彼女は丁寧にお礼して事務所を後にする。


 外に出ると賑やかな街並みと活気のある人達が目に飛び込む。陰鬱な自分には皆が眩しく見えるが、己だけが不幸だと感じるのは烏滸おこがましい事だ。魔物のせいで帰る家を無くし、家族を失った者もいるのだ。仕事がないことを恨むのは違うであろう。


 近くのカフェに入るが食べ物を買えるだけのお金がないので、注文をせずに外の席へ座る。もう全てを諦めてしまおうかと考え始める。回復師としての役割も果たせないなら、この身を売るしかないのかと投げ出そうとした時だった。向かいの席に誰かが座る。


「そこのお嬢さん!」


 アリアナは顔を上げた。目の前には茶髪の女性が溌剌とした笑顔を自分に向けていた。


「私と組まないか?」

「へ?」

「冒険者に登録しているでしょ!なら、私のパーティーに入らない?」


 突然の勧誘に驚くアリアナ。登録したばかりで協会の仕組みには疎く、パーティーへの加入ができていなかった。だが、誘ってもらえるなら願ってもいない事だ。


「わ、私でいいんですか?」

「うん!ヒーラーが欲しかったからね!リストに名前があってすっ飛んで来ちゃった!」

「ありがとうございます!是非仲間に入れてください」


 アリアナの声が弾む。暗く塞ぎ込んでいた気持ちが晴れやかになったが、美嗣の次の言葉で急降下する。


「じゃあ!まず初めに~、服を脱いでくれる?」

「ふぇ?」


 勘違いしないでほしいが、装備を外して基礎能力を見たいだけである。



アリアナのイラスト

⬇⬇⬇

https://kakuyomu.jp/users/ki_kurage/news/16817330657675871393

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る