集合写真は爆弾と一緒? 

「お待たせ、持ってきたよ」


 オボンの上には、オムライス、ラーメン、ハンバーグ、ポテトフライといったご飯が並んでいた。


「ありがとうございます! 取り分けますね」


 紫乃たちはそれをテーブルの上に並べていく。


 流れるプールやスライダーを楽しんだ僕たちのお腹はペコペコとなり、隣接している水着のまま入場可能なフードコートに来ていた。


「美味しそうー! あたし、こういうところで食べるの初めて」


「ボクも、ほら雄二、おいで」


 嬉しそうに笑みを浮かべる未海と、隣に座ってと椅子を叩く朱音。


 というか、3人とも水着姿のままなのが目のやり所に困ってしまう。


「ありがとう。みんな寒くない? 大丈夫?」


「寒くないですよ。でも、youさんの立場からすると困っちゃいますか?」


「そういうわけじゃないけど……」


「you様、あたしは触ってもらっても大丈夫だよ?」


「雄二、ボクも平気」


 なぜか自分の胸をぽんぽんし始める二人。うん、絶対触れないから。


 軽くスルーに近いような形で苦笑いをして、いただきますと皆で手を合わせた。


 僕はラーメンだったが、胃にするする入るほど疲れていたんだなあとすぐに実感した。


「みんなでこうやって遊んでいると、凄く楽しいですね。私、この四人が大好きです」


 途中、紫乃が何気なく言った一言が嬉しかった。未海も、朱音も、それを聞いて笑顔だった。

 

 ◇


「楽しかった。皆、ありがとう」


 帰り際、朱音がぺこりと頭を下げた。いつもは本ばかり読んでいるので、こうやって遊ぶことはほとんどなかったという。


「あたしも楽しかったなあ。次がこの四人で旅行とかいっちゃう?」


「いいですね、さっそく計画を立てましょう! 来週くらいですか?」


「さすがに早すぎるでしょ……。でも、ほんと楽しかった。――あ、そうだ」


 僕は皆を呼び集めて、近づいてきてもらった。


「どうしましたか?」


「紫乃はここで、未海はここ、で朱音はこのあたりで僕はここかな」


「雄二?」


「どうせだったら、記念写真を撮りたいと思ってね」


 すぐに遊びたいと思っているけれど、もうすぐテストがはじまる。遊べなくなったとき、思い出すために撮ろうと思った。


「あ、だったら――紫乃、朱音」


 すると未海が少し待ってと、二人の耳元で何かを囁いた。僕はわけもわからず首を傾げていると、二人が笑みを浮かべる。


「なに話して――」

「さあ、撮りましょう! youさん、お願いします!」


 訊ねようとしたが言葉を遮られてしまい、そのままタイマーをセットする。


「撮るよー? 3・2・1――えっ!?」


「「「んっ……ちゅっ」」」


 すると3人が、僕のほっぺにキスをした。それも同時に。


 パシャッと撮影音が鳴り終わった瞬間、あまりの驚きにしどろもどろになってしまう。


「な、な、な、な、な、なんでみんな!?」


「ふふふ、見せてください。わ、凄い、ハーレムですね、youさん!」


「どんな感じ? あ、これはやばいやつだねー」


「雄二、モテモテ」


 そこには、余裕顔を決め込んでいるけれど、美女3人にキスをされている僕が写っていた。


「……消そう」


「え、駄目ですよ!?」「そうだよ、何を言っているの!?」「雄二、ボクも怒る」


「誰かに見られたらまずいよ。特に妹に……」


 嬉しさ恥ずかしさもありつつ、里奈にばれたらどうしようと身震いした。


 けれども、結局削除することはできず、僕の知らないところで画像は共有。


 なんだか、爆弾を握られた形みたいになってしまった。


 ただまあ、本当に楽しかったのは事実だ。


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