究極の選択

 流れるプールに移動した僕たちは、ニコイチならぬヨンコイチの状態で歩いていた。


「あれなに? 撮影?」


「女3に男1ってラノベのハーレムかよ。羨ましいぞ」


「すげえ、美女美女美女のサンドイッチ、これもう美女イッチじゃん」



 素直な感想からテンションの高いツッコミのようなものまで様々な声が聞こえる。


 けれども、紫乃たちの耳には届いていないらしい。なんでなんだ……。


 そんなこともありつつ、足先からプールに浸かる。


 冷たいのと気持ち良さが同時に襲ってくるけれども、一気に肩まで入った。


「きもちい……」


「暑かったので心が洗われるようですね」


「な、ながされるよー! you様、掴んで!」


 流れるプールに押し出されそうな未海。


 朱音は真顔で入って、静かに流されていった。


「朱音!?」


「抗えない。さよなら、みんな」


 小柄すぎるが故に力がないのだろう。流石に放置はできないので、僕も身を任せると、みんなも続いて行く。


 当然、楽しくて笑い合いながら。

 

 それから数十分楽しんだのち、ウォータースライダーに乗ろうとなった。

 ただ、人数制限がある。


「2人でペアを組むらしいですね。youさん、私とでいいですか?」


「you様、あたしと組もうー」


 案の定、いや、なぜか紫乃と未海が喧嘩してしまう。口を挟む暇がなく困っていると、朱音が耳元でぼそっと呟いてきた。


「雄二、私と組もう。行こう」


 再び腕を掴まれると、朱音の胸がむにゅっと当たった。紫乃や未海ほどの大きさではないものの、マシュマロのような柔らかさをしている。


 何て破壊力だ……。


 しかしそれに気付いた二人が引き留めて、結局引き戻された。


 誰が僕とペアを組むのかと主張が始まる。


「youさん、私ですよね?」


「あたしだよね? you様」


「雄二、ボクだよね?」


 水着姿で見つめてくるが、どうやって選んだらいいのかわからない。


 でもここは……。


「ええと……じゃあ、」


 ◇


「こちらの浮き輪に乗って、少々お待ちくださーい!」


 明るい定員さんの指示に従って、浮き輪に座る。


「ほら、手を貸すよ」


「ありがとうございます。youさん!」


 豊満な胸をたゆんっとさせながら、紫乃が僕の後ろに座った。


 そして僕たちはスライダーに飲み込まれていく。


「す、すごいね!?」


「はう、これは凄いです!!」


 目まぐるしく移り変わる景色よりも、背中に感じる紫乃の胸が、僕の意識を持っていっていた。


 ……こういうところは甘いよなあ……。


 最後に大きなプールにダイブすると、2人でずぶぬれになって笑う。

 

 紫乃の笑顔は、いつもより綺麗だ。


「ふふふ、楽しかったですね」


「ああ、結構早かったね」


 そして近くで待っていた未海が、駆け寄って来る。


「じゃあ次はあたしの番です!」


「ああ、行こうか未海」


 結局、僕は全員と個別で滑ることなった。


 さすがにそこまでしなくても……と思ったが、これがたった一つの解答だったのだ。


 ちなみに全員、なぜかぎゅっと抱き着いてくるので、別の意味で心臓が持ちそうになかった。


「雄二、次は私」


「ああ、行こうか朱音」


 ただ友達とこうやって遊んだことがほとんどないので、もの凄く楽しかった。


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