意外な犯人

「誰が犯人だと思う?」


 昼休み、ひと気のない中庭に、紫乃、未海、朱音と集まっていた。


「わからないですね。ただ、行き過ぎたリスナーはいるので、youさんのファンだという可能性もあります」


「あたしも知らないけど、もしかしたら学校の人って可能性はない?」


「ありえる。学生なら盗撮も簡単」


 なるほど……。一人では浮かばなかった発想が、次々と出てくる。


 同じ学生なら僕=youをすぐに一致したと不思議ではない。となると、やはり実写配信は失敗だったのかもしれない。


 変わりたいと思って美容室に行ったことで、テンションがあがりすぎたのかも……。


「youさんは悪くないので、あまり落ち込まないでくださいね。悪いのは、盗撮をしてアップロードした犯人です」


「でも、僕がリアルと結び付けなければ……それに紫乃たちにも迷惑がかかって……」


 その時、未海が僕の頭をデコピンした。その表情には、少し怒りが見える。


「いたっ!?」


「迷惑だなんて思ってないよ。もしかしたら、あたし達のリスナーの可能性もあるんだから」


「すぐ画像は消えたし、出回ってはないから大丈夫」


 3人とも、僕を心配してくれている。フォロワーやネットの立場で言うと僕なんか全然大したことないのに……。


「考えても仕方がないか。でも、当分は実写配信だけやめておくよ。ありがとうね、紫乃、未海、朱音」


「残念ですけど、そのほうがいいですね。ほら、これを食べて元気出してくださいっ」


 紫乃が駆け寄って僕の腕を掴む。鞄からお弁当箱を取り出すと、サンドイッチがいくつも入っていた。

 おそらく、手作りだ。


「美味しそう……いいの?」


「はいっ、元気を出してもらおうと思って作ってきましたから! ――もちろん、未海と朱音さんの分もありますよって、もう食べてる!?」


「むむ……さすがライバル……この卵サンド美味しい……」


「生ハム、最高」


 もぐもぐと食べてから恍惚の表情を浮かべる未海と、無表情でグッとポーズする朱音。


 やっぱり、皆といると自然に笑顔になる。


 ◇


「それじゃあここで」


「はい、また明日です」「またねー」「ばいばい、雄二」


 学校が終わって3人と別れる。家まではそう遠くないけれど、なんだかんだで頭からあの事が離れなかった。


 どうして画像を乗せたのか、頭からこびりついて離れなかった。


 その時、前から見知った女の子が現れる。


 涙を流して、悲しそうにしていた。


「ごめんなさい……今日、伝えようと思ったんだけどずっと言えなくて」


 おそらく一晩中涙を流したのだろう。”家族”だからこそ、それがわかってしまった。


「もしかして……昨日の配信で画像を乗せたのは……里奈?」


「はい……」


 そこに立っていたのは、僕の妹、里奈だった。

 しかし驚いたことに、里奈は僕=youだということを知らなかったはずだ。


 なぜそんなことをしたのか、問いただすことにした。


 



 


 

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