学校で話題の男

「それじゃあお兄ちゃん、また――あれ……なんか手を振られてるけど……え、桜井さんと燐火さんだ。それにあの可愛い人は?」


「あ、ええと……新しい友達なんだ。先輩だけどね」


「ふうん、なんか最近のお兄ちゃんってすっごくリア充だね。いいことだけど……ちょっと寂しいな。また夜にね」


 学校の校門近くで、里奈と別れる。

 最近は忙しくてあまり話せてないので、後日二人きりでご飯に行こうと話をした。


 そして驚いたことに、入口で3人の美女が俺を待っていた。


「おはようございます。youさん」


 桜井紫乃――もといAngel。


「おはよう、you様!」


 燐火未海りんかみう――もといMIU。


「おはよ、雄二」


 山城朱音やましろあかね――もとい霧雨アカネ。


 全員がVtuberで、なおかつ登録者数は合計で300万を超える。


「おはよう、皆早いね」


 突然、朱音が俺の腕を掴んだ。先輩ということもあって、胸元のリボンの色がブルーで鮮やかだ。


 それを見た紫乃と未海が、負けじと俺の体に触れようと近づく。


 当然、周りの生徒たちが、何ごとかと騒めく。


「おい、あれってアニメで見るようなハーレムじゃねえか?」

 

「嘘でござるよね!? 学園の天使桜井さんに、小さな妖精燐火さん、隠れ美女の山城さんが、そんなことに!?」


「誰だよお前は……でも、すげえ光景だな」


 よくわからない一人も混じっていたが、とにかくこのままでは危険だ。


 目立ちすぎるのは良くない。なんだったら、わざと見せつけてると思われるかもしれない。


「ちょ、ちょっと皆落ち着いて!? ここ、学校だからね!?」


「そうです、学校です。二人とも離れてください」


「紫乃っちと朱音っちが離れたら、あたしも離れるよ」


「ボクは雄二から離れない」


 何を言っても無駄だったが、朱音は二年生なので途中で別れることになった。


 その際、彼女はとても悲しそうだった。なんだったら涙が流れていた。なんで!?


 VTuberのイベント後、3人は仲良くなったものの、ある意味ではライバル? になっている。


 それもなぜか、僕を取り合って……。そんなことある? なんでだ?

 

 人生に一度は来るっていうけど、これがモテキなのかな?


 ◇


 お昼休み、学食で3人とご飯を食べていたら、またもや喧嘩になる。


「youさんは私があーんするのです!」


「いや、あたしがする! 二人は明日!」


「嫌だ。雄二はボクのもの」


 嬉しいような恥ずかしいような複雑な気持ち。


 とはいえ周りからのヘイト値が限界を超えそうだったので、学校では辞めてほしいと伝える。


「みんな落ち着いて。仲良くしようよ。3人が好きだし……仲良くしたい。喧嘩は嫌なんだ。それにここは学校だから」


 すると3人はしゅんとなって、納得してくれたみたいだった。


 やっぱり、ちゃんと伝えたら気持ちは伝わるんだ。


「わかりました。でしたら、”学校” では、やめておきましょうか」


「そうだね、”学校” では人の目があるしね」


「”学校” ではダメ。雄二、わかった」


 あれ、本当にわかってるのかな……? 僕、言い方間違えたかも。





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