待ち合わせの一時間前

「随分早く来ちゃったな……」


 待ち合わせの一時間前、駅に到着。


 服は里奈に選んでもらったので、割と小奇麗になっただろう。


 黒と白でシンプルだが、清潔感があるとのこと。


 それと、今朝の里奈ちょっと様子がおかしかった。


『お兄ちゃん、誰と遊びに行くの?』


『あ、ええと……友達と』


『ふーん、もしかしてだけど……女の子?』


『え、どうしてわかったの?』


『……そうなんだ。ふーん……』


 ……なんだか怒っていたような気がする。一応、服は選んでもらえたけど、帰りに甘い物かってきてねと言われてしまった。


 一体どうしたんだろうか……。


 待ち合わせは犬の銅像の前だ。


 お礼とはいえ緊張してしまい早く着いたので、近くで座って待っていようか。


 ――あれ? あれって……もしかして、桜井紫乃さくらいしのさん?


 待ち合わせは一時間後なはず。それなのに……なんでもういるんだ!?


 ……なんだかご機嫌そうだ、鼻歌? さすがに声をかけないわけには……いかないよな。


「あの、桜井さん」


 今日の桜井さんは、オフショルダーで肩を出していた。

 上下透けのある純白のシャツとスカート、手にはブラウンの鞄を持っている。


 女の子らしく、それでいてお洒落だ。


 何度か声をかけたところで、ようやく僕に気づく。


 表情がぱあっと明るくなったあと、驚いて声をあげた。


「youさん! あ、で、でも……早くないですか? 私はその……楽しみ過ぎて……」


 ここまでハッキリと言われると思っていなかった。耳まで真っ赤にしながら、桜井さんは恥ずかしそうに言った。


「あ、いや……その、僕も女の子と遊ぶのは初めてだったので……早く来てしまいました……」


 ドキドキする二人、傍から見れば何をしているんだろうとなるかもしれない。


 しかし桜井さんは美人だ。それなのにここまで恥ずかしくなったりするのだろうか?


「うふふ、なんだか似た者同士ですね」


「そうかもしれないですね」


 照れくさく笑い合いながら、待ち合わせをするという壮大なミッションを無事終えた。


 今日はご飯の予定だったが、せっかく時間もあるとのことで、近くの水族館に行くことになった。


 お礼と言われているが、もやはデートなのかもしれないと心のどこかで思ってしまっている。


 こんな可愛い女の子と並んで歩いていると、周りの目線も凄まじい。


 絡まれたりなんかしたら……絶対桜井さんを助けないと。


「ねえ、あのカップルすっごくイケメンじゃない?」


「そうだね、女の子も可愛いけど、男の子もしっかり歩幅合わせてる感じで可愛い。それに格好いいし」


 通るたび、誰かが何かを呟いている。やっぱり桜井さん、可愛いもんなあ。




 その後ろを追従するように、小さな背格好、それでいて目鼻立ちがハッキリとした、可愛らしい女性がいた。


 髪型はツインテール、雄二と同じ学年だが、制服は着ていない。


「もしかして……デートなの?」

 

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