登録者数100万人超え、大人気Vtuber『Angel』

 パソコンの前で深呼吸、次の瞬間、私は桜井紫乃さくらいしのから、Vtuber『Angel』 に切り替わる。


「はーい! 皆、こんにちはー!」


 同時に、私の表情とシンクロ、右下の黒髪ロングのアバターが動き出す。


 ありがたいことに、一斉にコメント欄が埋まった。


『こんにちはー! いつもより早い配信! 嬉しー』


『天使ちゃんっ、今日は雑談? ゲーム?』


『Angel! Angel! Angel!』


 ふふふ、と笑みがこぼれる。この瞬間、この時間が、一番幸せだ。


「今日は雑談だよーっ。いいことあったから、機嫌がいいんだよねー」


 アバター上だけ、私はリアルと違って明るく話すことができる。


 皆が一斉に、前回痴漢を助けてくれた男の子と!? と、コメント。


「どうだろー? でも、良いことなんだーっ」


 それにしても驚いた。まさか私の恩人である配信者のyouと雄二ゆうじくんが同一人物だったなんて……。


 明日はお礼の為のご飯だったけど、もの凄く楽しみだ。


 ”二度” も私を助けてくれるなんて、運命に違いない。


「そういえば、皆見た? 昨日おすすめした、youさんっていう配信者さんの動画!」


『見た見た、ちょっと静かな人だったけど面白かった!』


『おすすめされたので見た! 面白かったー!』


『うんうん、面白かったよー』


 ◇◆◇◆◇


 雄二ゆうじ――side。


「え、え、どういうこと!?」


 大好きなVtuber『Angel』 を見ていたら、とんでもないことを言い放った。

 

 慌ててアーカイブを確認してみると、昨晩、僕のことをお勧めしている。


 鳴りやまない通知は、『Angel』 のおかげだったのか。


「凄いことになった……」


 まさか認知されていたなんて思いもよらなかった。


 更にAngelは、僕の配信の動画のことを嬉しそうに語り出す。


 ゲーム配信のあれが面白かったとか、実写恰好よかったねえとか、やきもちコメントもたくさん出てきてしまい、ちょっと怖くなった。


 けれども、Angelのファンは皆いい人ばかりで、荒らすなよーと助け合っている。


 どうしよう、次に配信するときはAngelにお礼を言ったほうがいいのかな? コラボなんて……誘われたり……なんて。


『良かったら、今度youさんにコラボ申請してみようかなー』


 言ってる傍から、Angelからお誘いが来た。流石に冗談だと思うが、心臓が高鳴る。


 ああ、駄目駄目だ。


 それに明日は桜井紫乃さくらいしのとご飯。


 Angelの配信を終えてお風呂に入っていると、ブーブーとスマホが鳴る。桜井さんだ。


『明日、楽しみです! その、お礼だと思ってたんですが、これってよく考えたらデートですよね。その、彼女さんとかいないですか? 大丈夫ですか?』


「え、ええ!? 彼女なんていないですよ! なので……大丈夫です」


 急いで返事を返す。ふう、心臓が爆発しそうだと思ったら、すぐに通知がなる。


『良かったです。楽しみにしていますね。それじゃあ、おやすみなさい!』


 人生初めてのデート……どんな服を着ればいいか、妹に聞いてみるか。











 

 

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