鳴りやまない通知
携帯がピコンピコンと鳴り響き、目を覚ます。
うるさいなあと思いながら、スマホに目をやると、登録者が増えました、という文言が通知されていた。
いや、ずっと通知が止まらない。
「え? どういうことだ?」
昨日まで数十人しかいなかったはずの登録者数が、今は千人を超えていた。
なぜだ? なぜこんなことに?
不思議に思いアーカイブの動画をチェックしてみると、昨日の実写動画がどうやらバズっているらしい。
コメントは、凄まじく僕のことを褒めてくれている。
『恰好よすぎます』
『ゲーム配信も見ました。丁寧な話し方が好感持てます。実写もまた楽しみです』
『かっこいいー!』
髪型だけでこんなに変わるのか……?
とはいえ、嬉しいことには変わりがない。
不安な気持ちもありつつ、ギリギリで喜ぶが勝つ。
夜にでももう一度配信しよかな。特に、今まで見てくれていた人にお礼を言いたい。
「これがバズるってやつなのか」
ふと時計に視線を向けると、七時を回っていた。
今日は学校へ行く日だ。階段を下りると、家族が朝食を並べていた。
「お兄ちゃんおはよー! 早いね?」
「ああ、おはよう。父さんも母さんもおはよう」
「おはよう、今日は大丈夫なの?」
「無理するなよ」
どうやら気遣ってくれているらしい。ありがたいなと思いつつ、申し訳なさも出る。
卵焼きにウインナーご飯に味噌汁。母さんは料理が得意なので、かなり美味しかった。
家を出ようとしたら、妹の里奈が急いで玄関までやって来る。
「待って! 私も一緒に行くっていったのにー!」
「ああ、ごめん。忘れてた……」
実は覚えていたが、恥ずかしかった。里奈は中学三年生で、僕の高校のすぐ近くの学校に通っている。
「じゃあ、行ってきまーす!」
玄関に出ると、朝日がいつもより眩しかった。
まともに登校するのは久しぶりだ。いじめっ子たちは……大丈夫だろうか。
里奈は嬉しいのか、僕の腕をぎゅっと掴む。
「ちょ、ちょっと!」
「なあに?」
「近いよ……その、変に思われるだろ?」
「兄弟だもーん」
確かにそうだが、周りになんて思われるか……。
「それにお兄ちゃん、今すっごい恰好いいから、変に思われないよ」
そんなわけないだろう。学校が近くなると、高校の制服を着た男女が増えてきた。
「ねえ、あんな恰好いい人いた?」
「カップル……かな? 中学生となんてあり? でも、イケメンだな」
どうやら僕と里奈をみてヒソヒソと話している。気になるが、気にしないでおこう……。
「それじゃあまたね!」
里奈は嬉しそうに手を振り、僕と別れた。
学校の校門で深呼吸、はあ……大丈夫だ。あの電車のときも勇気を出して変わったんだ。絶対、大丈夫。
すると、驚くべき光景を目にした。
黒髪ロングで、華奢で、目を奪われるほど綺麗な女子生徒が歩いてくる。
電車で――僕が助けた女の子、
彼女はなんと、僕と同じ高校一年生の制服を着ていた。
「え……あなたは……」
どうやら僕に気づいたらしい。驚いて、声を漏らす。
「あ、え……」
「もしかして、配信者のyouさんですよね!?」
へ? あれ、どういうことだ……?
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