リアル実況

「てか、これお兄ちゃんだよね?」


 里奈が、スマホを向けてきた。


 そこには僕が写っていた。


 美容室のSNSだ。


 そういえば、撮影していいかと聞かれていた。


「ああ、そうだね。それがどうしたの?」


「さっき上がったばっかりなのに、すっごいバズってるよ。ほら、コメントも」


『恰好よすぎ。モデルですか?』


『イケメン! 惚れた!』


 確かにもの凄い数のコメントといいねがあった。


 嬉しかったが、さすがに髪型のおかげだろう。


 恥ずかしかったので、妹にお礼だけ言ってそのまま二階にあがった。


 だけど、嬉しいな。今日は気分もいいし、配信をしよう。


 時間的にもゲーム配信と雑談どっちもできそうだ。


「そうだ……どうせだったら、実写でしてみるか?」


 今まで顔を晒したことなんてない。


 だけど、髪型を格好いいと褒められたのだ。


 長時間悩んだがやってみることにした。


 フォロワーはそこまで多くない。勇気を出してみよう。


 パソコンの電源をつけて、いつものように録画をスタートさせる。


 そして、初めてカメラを電源オンにした。


 画面に、自分の顔が移る。


 うーん、本当に大丈夫かな?


 一人、また一人と、いつもの人たちがログインした。


 コメントでは、え? 誰? と書かれている。


「こんにちは、今日は実写でゲーム配信をしたいと思います」


 ドキドキで返信を待っていると、コメントが増えはじめた。


 それもなんと、好意的だ。


『え!? youくんの声!? 格好いい!』


『やば! モデルかと思った!』


 皆褒めてくれる。お世辞かもしれないが、ありがたい。


 そして、いつもの常連さんの一人がコメントした。


『え……嘘……』


 嘘? 嘘とはなんだろう。もしかして、好みじゃなかったのかもしれない。


 やっぱりやらなきゃよかったかな……。


 携帯が、ブーブーと音を響かせる。


『あの、今いいいですか?』

 

 痴漢から助けた子――桜井紫乃さくらいしのさんだった。なんだろうか。配信している途中なので、流石に今は返信ができない。


 それから一時間ほど雑談して、さっきの返事を返す。


『ごめん。忙しかって返事できなかった。どうしたの?』


『あ、いや……もしかして配信とかしてますか?』


 まさかの言葉にドキッとした。どうしてわかったんだろう。


『え、どうしてですか?』


『私が好きな配信者さんとあなたが凄く似てたんです』


 配信とか見るタイプだとは思えなかったが、意外にも趣味が合いそうだ。僕に似てるなんてすごい偶然だ。


 配信者さんは? と聞こうとしたが、続けてメッセージが来る。


『すいません、よく考えたら髪型も違うし、やっぱり違うと思います。申し訳ない、忘れてください。あ、来週楽しみにしてます!』


 なるほど、やっぱり勘違いか。しかし、ご飯を楽しみにしてくれているらしい。

 お礼を楽しみってのも、なんだか少し変な気もするが。


『ありがとうございます。わかりました』


 少し素っ気ないかな? でも、お礼に対して楽しみです! っていうのも、変な気がする。


 ああ、どんな服着て行こうかな。




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