変わるために
食事!? でも……流石にお礼だと言われたら断れない。
『学校があるので、土日なら大丈夫です』
と返事を返す。
Angelかなと思ったけど、さすがにありえないだろう。
驚きすぎて疲れたので、すぐにベッドに潜り込んで目を閉じた。
今日はがんばったな……。
翌朝、顔を洗っていると髪の毛が思っていたよりも伸びていた事に気づく。
そういえば随分と手入れなんてしてない。
これで補修を受けに行ったのかと、今更ながらに驚いた。
理髪店……いや、前にいじめられたときは髪型も馬鹿にされた。
勇気を出して、お洒落な美容室でも探してみようか。
その時、妹の
「お兄ちゃん、どこか行くの?」
「ああ、来週から学校に行くから生活リズムを戻しておこうとおもって」
「そうなんだ、良かった……。行く時は一緒にいこ?」
「そうだな……ああ、しよう」
僕が学校に行かなくなってから妹は寂しそうだった。
そうだ、妹に聞いてみよう。
「
「え? どうしたの?」
「髪を切ろうと思って。流石に野暮ったいだろ」
「そう? 今も似合ってるよ。でも、お洒落にするのはいいことだよね」
そう言うと、里奈はお勧めの美容室を教えてくれた。
家からも割とちかい。
「里奈のお兄ちゃんっていえば、すぐわかると思うよ」
「ああ、頑張って……い、行ってくるよ」
ちなみに里奈は僕と違ってかなり陽キャだ。
派手な見た目をしているわけじゃないけど、明るくて物怖じしなくて、見た目も可愛い。
どうして、僕はこんな感じなのだろうか。
服を着替えてさっそくスマホで道を調べながら向かった。
美容室は凄く見た目がお洒落で、入るのに戸惑ったけど、勇気を振り絞って扉を叩く。
出てきたのは、明るいギャルのお姉さんだった。
「こんにちはー、初めてですか?」
「あ、はい。ええと、里奈ってわかりますか?」
「え? 里奈……もしかして、水島里奈ちゃんのこと?」
「はい。僕、その里奈の兄なんです」
「ええー!? そうなの!? そういえばお兄ちゃんがいるって聞いたことがあるわ。へえー、意外なお兄さんねえ」
どうやら里奈とはかなり仲が良いらしい。荷物を置いて、席に案内される。
周りは明らかにリア充だらけで、少し居心地が悪い。
「それで、髪型は決まってる?」
「ええと、野暮ったいのでなんとか普通に見えたらいいんですけど」
「普通? そうねえ、ちょっと見てみるわ」
そう言うと、お姉さんは髪の毛を触る。
それから、ふんふんと頷く。
「分かった。じゃあ、普通より格好よくしちゃってもいいかしら?」
「それは嬉しいです。お願いします」
「ふふふ、お姉さんにまっかせなさーい!」
そう言うと、お姉さんはテキパキと髪の毛を切っていく。
大量の毛が落ちていくと同時に、自分の顔がよりはっきり見えるようになる。
恥ずかしいけど、変わりたいと思っていた。
「よし、出来たわよ!」
それから一時間後、シャンプーを終えて髪の毛をセットしてもらった。
かなり格好よくなっている。自分じゃないみたいで恥ずかしい。
「すっごい恰好いいわ。さすが里奈ちゃんのお兄ちゃんね、素材がいいわー」
「そ、そうですか? 素材……?」
「そうよ。自信もってね! もしかしてデート?」
デート、その言葉で思い出した。
そういえばお礼にご飯でもって言われてたのだ。
確かに、一応その約束はある。のか? でも、お礼だから違うか。
「デートじゃないけど、遊ぶ予定はあります」
「ほーう、いいわねえ。楽しんでおいでね」
そう言うと、お姉さんは満面の笑みを浮かべた。
金額もリーズナブルだった、なんと割引券を使ってくれたらしい。
「あ、ちょっと写真だけ撮ってていいかな? SNSとか載せていい?」
「え? ああ、いいですよ」
パシャパシャ、そして撮影を終わると、店を出た。
いつもより涼しく感じる。
帰り道、なんだかいつもより視線を感じる。
なんでだろう、もしかして……何か変? なのかな。
「ねえみた? 今の人、めちゃくちゃ格好よくなかった?」
「みたみた。可愛いし、格好いいって感じだよね。タイプかも」
「えー! 見逃したー……いいなあ」
帰宅後、妹が気になって部屋を訪れてきた。
「え……」
「どうした? 里奈」
「お兄ちゃん? だよね?」
「他に誰ががいるんだ」
「恰好良すぎ……!」
あれ、なんか、いつもより妹の頬が赤い。
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