もしもエージェントと異世界転移したら

「まさかワタシたちが異世界に転移することになるなんて……」

 さすがのエリートエージェントも生まれて初めての経験に、眉を顰める。

「しかも元の世界へ帰るには、魔王を倒すしかないらしいからな」

 俺はため息をつきながら同じ境遇のパートナーに目を向ける。シャルは女剣闘士として召喚され、露出多めの衣装を身に纏っていた。

「ぞわっとする視線を感じるわね」

 察しの良いエージェントだ。うっかり下がっていた視線をぐっと引き上げる。

「それでキミヅカの職業は盗賊、と。アナタらしいわね」

「ひどい悪口を聞いた」

「それで? これからワタシたちどうするの?」

「とりあえず、二人でしばらく旅をするしかないだろうな」

「はあ、なんで異世界に来てまでアナタとコンビを組まないといけないのかしら」

 大きく肩を落とすシャル。そもそも彼女は、俺に限らず誰かと協力するのが苦手なのだ。それが孤高のエージェントである彼女の生き方だった。

「だったら俺のことは『利用してやる』ぐらいのスタンスでも構わない」

 俺の言葉にシャルが顔を上げる。

「形の見えない繋がりが信用ならないというなら、打算ありきでもいい。ただ互いに利する関係だから一緒にいて、利用する。それでいいだろ、少なくとも俺たちは」

 そんな俺の説得に対してシャルは。

「……そうね。それでいいのかも、ワタシたちの場合は」

 苦笑をもって、ひとまずはこれからの行動について前向きになってくれたのだった。

「じゃあ、とりあえず拠点となる宿を探すか。あとは一緒に暮らしていくにあたってのルールを決めるぞ。まず家事の役割分担についてだが……」

「その年にして女の子と暮らすことに慣れすぎてない?」

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