もしもアイドルと異世界転移したら
「まさかわたしたちが異世界に転移してしまうとは、驚きですね……」
さすがのトップアイドルも生まれて初めての経験に「うーん」と唸る。
「魔王を倒さない限り元の世界には帰れないらしいからな、やるしかない」
異世界で剣士にクラスチェンジした俺は、試しに剣を抜いてみる。
「これからどうする? 街を出て草原にでも向かうか?」
俺はそう尋ねながら斎川に目を向ける。ローブ姿で手にはステッキ。彼女のここでの職業は魔法使い。お互い良い職に就けたわけだが、まずは低級の魔物を倒して経験値を貰い、レベルを上げていくのが定石だろう。
「じゃあ君塚さん、まずはそこに立っててもらってもいいですか?」
斎川は俺にそんな指示を出し、持っていたステッキを俺に向ける。
「えーと、確か上級魔法の呪文は……」
「ちょっと待て、俺を魔法の練習台に使うつもりか!」
「え、だって本番で失敗したら嫌じゃないですか?」
「可愛く小首をかしげるな、それで許されるのは現実世界の時だけだ!」
現実世界では許してしまうあたり、ちょっと甘やかしすぎかもしれない。
「違うんですよ、君塚さん」
すると斎川は静かに首を横に振る。
「わたしが君塚さんにこういう接し方をするのは、信頼の表れなんです。君塚さんを信じているからこそ、素の自分が出せている。そしてそういう相手がいるということは、わたしにとっても幸せなことですね」
柔らかく微笑む斎川に対して、俺は「理不尽だな」と言いつつ、やはりこの異世界でも甘くならざるを得なかった。
「よし、さっさと魔王を倒して日常に戻るか」
「はい! というわけで君塚さん、そこに立っててもらってもいいですか?」
「なあ、これは本当に信頼の表れか?」
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