第31話 死への入り口
東の道を進むユークリウットたちは前方から人の叫び声を耳にする。高原の傾斜に身を隠し、叫び声が上がった現場を観察した。
小さな盆地には二十人程の竜人が、十倍以上の人数差がある連盟の武装集団と戦を繰り広げていた。
光の得物を手に持った竜人たちが、光の粒子を放出する両足で大地を駆け、連盟員たちを次々と殺害していく。連盟側も防御陣形を組み、竜人一人に対して大人数で対応するなど数の多さを生かして応戦していた。
後列の部隊が竜人たちに向けて弓矢を放ち、進攻を妨害する。その機に乗じてマシン・ヒューマンたちが跳躍を行い、体の一部を変形させた得物で竜人たちに攻撃を仕掛ける。竜人を一人仕留めることに成功した。
「あのバカやられてんぞ」
「ざまあねえな」
竜人は仲間の死を悼むどころか侮蔑を浴びせると、意気揚揚と反撃に転じた。
「歩兵部隊、前へ!」
男の指示で、簡素なつくりの武具で身を固めた歩兵部隊が出現する。
その歩兵部隊はみな緊張した面持ちを浮かべていた。
「あの部隊、現地人か?」
戦況を観察していたエスナは不快感を露わにする。
「他の連盟の奴らと比べて挙動が遅いから多分そうだろう」
ユークリウットは吐き捨てるようにそう述べた。
会話する二人の後ろにいたミルファは浮かない顔をしていた。
「どんなに崇高な目標を掲げていても別の側面は存在するものよ」
キュエリはミルファに対して声をかける。
「連盟が清廉潔白でないのは分かっているつもりでしたが、練度の低い人たちをそのまま戦場へ投入するなんて……」
「あなたのやってきた行いが正しいということは私にも分かる。でも今は我慢して。お願い」
「私は……」
「伏せろ」
ユークリウットが小声で指示をして、三人は更に身を低くした。
一人のマシン・ヒューマンが圧縮空気を放出しながら山頂側から降りてきて、連盟の部隊の中へ駆け込んだ。
「内容は聞き取れないが何か喚いているな」
「ユークリウットは聞こえる?」
キュエリはユークリウットに尋ねる。
「山を越えようとした部隊の一部が山頂で壊滅しかけているそうだ」
「スノウドラゴンがいる山に別動隊を向かわせたのね」
「……助けなきゃ!」
「あ、ミルファ!」
ミルファはキュエリの静止を振り切り、一人で山頂の方へ跳躍した。
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