つきがきれい(定期的にやりたくなる)

月を手に

 宵闇の空にくっきり浮かぶ今宵の月は明るく大きい。


「うわあ、今日の月はおおきいね。ほら、掴めそう」


 いつもよりも月が近く見えて手を伸ばせば、その掌からこぼれた月が視界を照らし続けている。まるで掌に収まってしまったようだ。


「掴めないぞ」


「もう、知ってる!」


 すぐ隣から、かすかに笑いが混じった声が風情の欠片もなく淡々と事実を述べた。

 はしゃぎすぎた自分に照れくさくなり、思わず反射的に言ってしまったけれど。

 月のように堂々と夜空を照らし続ける、手の届かないほど遠いと感じていた存在が、夜空に浮かぶのが当たり前であるかのように自分の隣にいることに気付いて、そっとその手を捕まえた。


「やっぱり掴めるかも」


 月を掴むような幸福は、いつだってここにある。


「それは光栄だな」


 握り返された手はあたたかく、空を照らす光のように穏やかで優しかった。

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