ニドメ(side 敬也)ういういver.
初めて好みだなんて言われて。それも、可愛くて美人で綺麗な人に。
初めてキスとかしちゃったし、それ以上なんて考えた事もなかったのに全部しちゃったし。
なんかもう頭の中も胸の中も幸せいっぱいで。今まで知らなかった世界で生きてるようで。
初めてこんなにも、恋に落ちてしまっている。
あんなにも幸せいっぱいだった時間も。
本当は、ただの遊びなんだってわかってる。
笑いかけてくれたのも、好みだって言ってくれたのも、甘い声で呼んでくれたのも。
ぜんぶぜんぶ、その場限りのことだって、重々承知してる。
あれは、そういう遊びだったって。わかってるけど。それでも。
また会いたいと思う。姿が見たいと思う。声が聴きたいと思う。側に居たいと思う。
こういうの、世の中でよく聞くあれだってわかってる。
つきまといとかストーカーとか、非常に迷惑な勘違い。
俺なんかが特別になれるなんて思ってる訳じゃない。でも、だけど。
想うことも、考えることもやめられなくって、ずっとずっと、あひるちゃんに会いたいって思ってる。
あひるちゃんは、綺麗で可愛くて美人で。ものすごく優しかった。
彼女?の何を知っている訳ではないけど。
女王様みたいに振る舞おうとしてるけど、すごく他人のことを考えてるのがわかる。
夜道で安全に誘導してくれたり、あたりまえのように飲み物を出してくれたり、細やかな気遣いをする人だと思う。
それから、何度も確認してくれた。
「初めてが男で後悔しない?」
それって、完全に俺のことだけ考えてくれた言葉だと思った。
だって、本当に自分のことだけ考えてたなら、遊び終わった相手がどう思ったってどうでもいいはずだから。
すごくすごく優しい。
俺が好きだって言ったら、一瞬、ほんの少しだけ困ったように眉根を寄せたとこなんて。
面倒くさいとか、馬鹿じゃないのとか、自分でもそう言われたって当たり前だと思うのに。
はぐらかした笑顔がどこか寂しそうで胸がぎゅっとした。
あひるちゃんは、綺麗で可愛くて美人でものすごくモテるから。
俺なんかがこんな風に好きでいるの、迷惑かもしれないけど。
会いたいと思う気持ちが止められなかった。
迷惑だって言われたら止めよう。見てるだけなら、少しだけなら、それなら。
そんな思いで萩と週末またヴィヴィに行くことを約束した。
一人で行く勇気がなくって、みこちんのために萩を連れて行くことにかこつけて。ほんの少しだけあひるちゃんに会いに。
想いが、ぐるぐる、ぐるぐる。
単純で大雑把な自分にこんなに考え続けることができたなんて初めて知ったくらいにぐるぐる回り続けて。
都合のいい夢なんて見てた訳じゃないけど、それでもどこかで期待してて、同じかそれ以上に嫌がられたらって不安で。
二度目にピンクの看板の奥、可愛らしい木の扉を潜った時には、緊張で内心はドキドキビクビクだった。
「けぇちゃん、また会いに来てくれたの?うれしー」
あひるちゃんがそう言って笑いかけてくれたとき、もう泣きたくなるくらいほっとした。
夢でも、全部嘘でもなかったって。そう思えたから。
「あひるちゃんが綺麗で可愛くて美人過ぎて会えて光栄すぎて幸せすぎる好き」
「ありがとー。あひるのこと好きな人は好きよー」
「世界一大好き」
「うふふ、うれしい。今日も終わるの待っててくれる?」
にっこり微笑まれて、気持ちが天に駆け巡った。
また一緒にいたいと思ってくれるって。
嫌がられたらとか、疎まれたらとか、そんな不安が消えてなくなって。
この人がどうしようもなく好きだって気持ちだけが残った。
不毛でもいい。叶わなくてもいい。
だけど、出来るところまで頑張ってみようって。
嫌がられたり迷惑かけたりしない範囲で頑張ってみようって。諦めたくないって。
誰かをこんな風に好きだって思うことが初めてでどうしていいかなんてわからないけど。このまま何もしないことなんて無理だって思ったから。
二度目に会ったこの日に、すっかりと決意が固まった。
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