『???(タイトルすら決まってないよ/BL)』おまけ日常(いいかげんにタイトル決めればいいのにVer.微えろ)
ルカは俺が長期のクエストから帰ってくると、必ず身体をチェックする。
幼い頃から薬草屋で住み込みで働いていたルカは、薬草の知識が豊富だった。
そして、今も薬草を扱う店に働きに行っている。
この大都市には大きな冒険者商会があって、薬関連は商会を通して流通する仕組みだ。ルカが働く店も、薬類は商会を通しての売買だから、それ以外の売り上げを上げるためにハーブや珍しい果物や植物なんかを扱って、飲食店に配達販売したりしていた。全く商売上手なことだが、飲食店のオヤジどもの中にはルカを邪な目で見てるやつもいるんだから、面白くない話だ。
だが、ルカは自分の知識を活かせる仕事を楽しんでいる。無粋に禁止する訳にもいかない。そんな狭量な様なぞ見せられるものか。あいつの中で俺は世界一格好いいんだから、それなりにしとかなきゃなんねーだろ。
それに、薬を手にニコニコしてるルカを目の前に見てりゃ、これを取り上げる訳にはいかねーわなって、認めざるを得ない。
「背中側、ちょっと擦れた傷があるね。前はもう塗ったから、うつぶせに寝て。広めに塗るから乾くまでに少し時間がかかるかも」
いつもほわんとした善人顔で、ちょっぴり眉を顰めて、ルカが俺に指示をする。
「大したことねぇ傷だろ、ちっとも痛くなんかねーし、ほっときゃ治るんだがな」
心配すんなと言外に吐き出しながらも、俺はルカの指示に従う。
「悪い傷じゃないと思うけど、でもリュスが痛いのは嫌だよ」
冷たい感触を背中に感じて、肌がびくりと震えた。痛みとも痒みともつかない程度の刺激と、丁寧に塗られていく軟膏の冷たさ。
ベッドに俯せて寝ていれば、背中の向こうの光景なんて見えない。だが、ルカがあの荒事を知らないたおやかな指で、武骨な俺の背中を撫でている光景を思い浮かべて、ぞくりと背骨が甘く痺れた。背中越しに聴く呟きや、吐息までが酷く甘美に耳に響く。
ダメだ。この穢れを知らない純粋培養みたいなこの世の天使に、こんな低俗な欲を抱いては。こいつは本気の善意で俺を心配して薬を塗ってるんだから。その厚意をぶち壊すなんて……そんな卑しい人間と思われるのはゴメンだ。
ありもしないどこかへと視線を向けて、静かに息を吐きだす。これは治療。これは治療。そう、これは、治療。他意はない。うちの嫁が天使すぎて他意なんかあるわけない。
「でも随分張ってるね。身体を使うお仕事だから」
他意がある訳がない天使は、更に善意で強張った俺の腰の筋肉を押した。
う、と息が詰まる。ちょおマテおまえなにしてくれんだって思わなくはないが、天使が天使すぎるから仕方ない。天然だ。
しばらく腰を揉んでから、背中を撫で、肩、肩甲骨、背骨、腰、尻の根元までマッサージして行くルカ。確かにその慣れた手つきは心地いい。気持ち良さに身体が解れそうになる。
だけど、同時にぞくぞくと腹の底に熱が溜まっていく。焦らさせすぎて理性をかなぐり捨てたくなるくらい、じりじりと劣情を擽り続けられている。
吐息が熱くならないように、不用意な声を出さないように、ぐっと喉を潰してただ耐える。拷問かよ。
でもルカの純粋なる好意を汚すわけにはいかない。ルカの前じゃいつだって、俺は格好よくあるべきだからな。
「リュス、きもちいい?」
おまえ、理性殺りにきてるな?
「あーもういい。疲れたろ、ルカ。あんがとな」
平然な素振りを装って、顔だけ上げて応える。………起き上がることは出来そうにない。
「リュシオの方がお疲れさまだよ」
ルカは俺の顔を覗き込んで、ニコニコと純粋無垢な微笑みを浮かべた。
あーもう絶対〇ス。くっそ、泣いても〇〇〇んで〇〇〇せてぐっちゃぐちゃになるまで………。
過った衝動をぎりっと握りつぶす。ダメだ、このド天然にそんなこと出来ない。本気で泣かせたら心が痛い。
だいたいこいつは俺のこと好きなんだから、全然、急がなくても、いつかは……。
「食事の準備してくるね。リュス、できたら呼びにくるからゆっくりして」
くるりと身を翻すルカを、とっ捕まえなかった忍耐力は男前だってことにしといて欲しい。
俺の嫁は今日も残酷なまでに可愛い。……色々鍛えられるほどに。
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