『Anser:???(タイトルすら決まってないよ/BL)』ぬいぐるみ/777練習

 渡されたぬいぐるみを抱いて、自分が子供になったかみたいな不思議なくすぐったさに胸が騒いだ。


 両親を早くに亡くし、僕よりもっと幼い妹と一緒に生き延びるために必死で働いた。恵まれていたことに周囲の大人たちは僕らを気にかけてくれた。

 妹は年ごろになると、住んでいた田舎の外まで名が響く美人に成長した。そして、大都市でも有名な商会の息子の目に留まり、彼の溺愛っぷりに義父母も折れて、貧しい平民であったにも関わらず彼の正妻の座についた。


 妹の結婚のため大都市へ移動する際に魔物に襲われた。もうだめなんだと思った。

 その時、僕は今まで苦労ばかりしてきた妹が幸せになれずに終わることが耐えられなかった。なのに何の力もない。立ち向かう事も、逃げ出すこともできずに、ただ妹を抱きしめて震えているしかない自分が、どうしようもなかった。


「守ってやるから下がってな」


 目の前に飛び出してきた男はそう言って、群れていた恐ろしい魔物をバタバタと屠って行った。

 鋭い眼差しに、不敵に引き締まった口の端。剣と共に舞い散る汗。

 それは、今まで感じたことなんかない程の感動。あまりにも格好よくて、恐怖を忘れた。


 そんな男と一緒に暮らすようになって一年。夢のような一年。

 住み込みで働いていた薬草屋の知識と、家事くらいしか能がない僕なのに、リュシオはとても良くしてくれる。本当は、雲の上の人なのに。

 なんだかんだと一番幸せなのは僕な気がしてる。


 リュシオは僕を色々と甘やかす。


 柔らかいぬいぐるみは大きくて、小さな頃に妹がそうしていたように両手で抱くほど。

 あの頃に、ぬいぐるみが欲しいなんて思ったことはなかった。そんな贅沢をする余裕もなかった。欲しいと願う選択肢すらなかったのだ。


 突然の思いも寄らないプレゼントは、過ぎ去った日々の僕を甘やかすように優しくて。

 やっぱりこの男はどこまでも格好いいと思ってしまうんだ。¥¥

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